民法 第533条【同時履行の抗弁】

第533条【同時履行の抗弁】

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

目次

【超訳】

双務契約から生じる両債務は対価的意味を有するので、公平の見地から、履行上の牽連関係が認められ、相手方が債務の履行の提供をするまで自己の債務の履行を拒絶できる。ただし、相手方の債務の履行期も到来していなければ、この主張はできない。

【解釈・判例】

1.同時履行の抗弁権の成立要件

(1) 双務契約から生じた相対立する債務の存在

(2) 相手方が自己の債務の履行を提供しないで履行を請求すること

(3) 相手方の債務が弁済期にあること

2.同時履行の抗弁権の効果

(1) 同時履行の抗弁権が存在すれば、履行遅滞にならず、相手方は解除や損害賠償の請求をすることができない。

(2) 同時履行の抗弁権が付着している債権であっても、履行期から消滅時効が進行する。

(3) 裁判上で同時履行の抗弁権が主張された場合、裁判所は引換給付判決を出す(大判明44.12.11)。

3.双務契約の一方当事者が、一度自己の債務の履行を提供して相手方に債務の履行を請求したところ、相手方がこれに応じなかったため、後に再度履行を請求する場合、相手方の同時履行の抗弁権は一度履行の提供があっても消滅せず、抗弁権を失わせるためには反対債務の履行の提供を継続する必要がある(最判昭34.5.14)。

→ 契約を解除する場合は、再度弁済を提供する必要はない。

4.同時履行の関係が認められる場合と認められない場合

認められる場合 認められない場合
(1) 契約の取消しや解除の場合における双方の原状回復義務(2) 弁済と受取証書の交付 (1) 賃貸借終了時における建物の明渡しと敷金の返還(最判昭49.9.2)(2) 債権の弁済と抵当権の抹消登記

(3) 弁済と債権証書の返還

【問題】

建物の賃貸借終了に伴う賃貸人の敷金返還債務と賃借人の建物明渡債務とは、同時履行の関係に立つ”]【平21-18-ア:×】。

【問題】

売主が買主に対して目的物引渡債務についての弁済の提供をした後に代金の支払請求をした場合には、その提供が継続されていないときであっても、買主は、同時履行の抗弁を主張することができない”]【平21-18-ウ:×】。

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