民法 第423条【債権者代位権の要件】

第423条【債権者代位権の要件】

① 債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない。

② 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、被代位権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。

③ 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、被代位権利を行使することができない。

目次

【解釈・判例】

1.債権者代位権の要件

(1) 債権者の債権を保全するために必要であること(債務者の無資力)

① 自動車事故の被害者が損害賠償請求権を保全するため、加害者が保険会社に対して有する任意保険の保険金請求権を代位行使する場合、債務者が無資力であることを要する(最判昭49.11.29)。

② 被相続人が生前に土地を売却したが、相続人の1人であるAが買主Bに対する移転登記に協力しないため、Bが同時履行の抗弁権により代金全額の弁済を拒絶している場合、他の相続人は自己の相続した代金債権保全のため、Bが無資力でなくとも、Bに代位して、Aに対し、Bへの所有権の移転登記の手続を請求できる(最判昭50.3.6)。

(2) 被保全債権の履行期が到来していること

① 債権者の債権の履行期が到来していない間は、代位権の行使は許されない。

② 保存行為の場合は、履行期の到来前でも代位権を行使できる(2項ただし書)。保存行為とは債務者の財産の現状を維持する行為である。時効の完成猶予のための措置、未登記の権利の登記などがこれに当たる。

(3) 被保全債権が強制執行により実現可能なものであること

(4) 債務者が自ら被代位権利を行使していないこと

① 債務者がすでに自らその権利を行使したときは、その行使が債権者にとって不利益なものであっても、債権者は重ねてその権利を行使できない

② 債務者がその権利について訴えを提起した場合、その訴えの方法が不適当であっても、債権者は代位権を行使して別に訴えを提起することはできない(最判昭28.12.14)。

(5) 被代位権利が債務者の一身専属権や差押禁止債権でないこと

① 代位の目的となる権利

ア 詐欺・強迫による取消権、解除権、買戻権、相殺権などの形成権も代位の目的となる

イ 債権者代位権の代位行使も認められる(最判昭39.4.17)。

ウ 債権者は自己の債権を保全するのに必要な限度で、債務者に代位して、他の債権者に対する債務の消滅時効を援用することができる(最判昭43.9.26)。

エ 債権譲渡の通知は、譲渡人から債務者に対してしなければならず、譲受人が代位してすることはできない(大判昭5.10.10)。

オ 借地上の建物賃借人は、自己の賃借権を保全するために建物賃貸人(借地人)の有する借地借家法上の建物買取請求権を代位行使することはできない(最判昭38.4.23)。

② 身分法上の権利

ア 身分法上の権利は一定の親族身分と結合した権利であるから、原則として行使上の一身専属性を有する。親権、婚姻・離婚・縁組の取消権、離縁請求権などは代位の目的とはならない

イ 離婚による財産分与請求権(768条)は、協議、審判等によって具体的内容が決まるまでは、その範囲及び内容が不明確であるから、離婚した配偶者は、自己の財産分与請求権を保全するために、他方配偶者の有する権利を代位行使することはできない(最判昭55.7.11)。

ウ 遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が権利行使の確定的意思を有することを外部に表明したと認められる特段の事情がある場合を除き、債権者代位権の目的とすることはできない(最判平13.11.22参照)。

2.債権者代位権の行使

(1) 債権者は自己の名で債務者の権利を行使する。代理人として債務者の名で行使するのではない。

(2) 裁判上の行使を必要としない。裁判外でも行使可能

3.債権者代位権の効果

(1) 代位行使の法律上の効果は債務者に帰属し、代位行使によって引き渡された財産は総債権者の共同担保となる。代位権を行使した債権者は、他の債権者に対して優先弁済権を持たず、他の債権者と平等の分配を受ける。

(2) 代位債権者が金銭の支払いを受けた場合は、債権者の債務者に対する債権と債務者の債権者に対する当該金銭の返還請求権とを相殺することによって、事実上優先弁済を受けることができる

(3) 債権者が債務者に代位して給付の訴えを提起し、勝訴の確定判決を得た場合、その判決の既判力は債務者にも及び(民訴115条1項2号)、債務者の第三債務者に対する債権を代位行使することによって、その債権の消滅時効の更新が生ずる(大判昭15.3.15)。一方、債権者の債務者に対する債権(被保全債権)の消滅時効の更新は生じない。

4.債権者代位権の転用

(1) 賃貸借の目的物である土地の使用収益を妨害する第三者がいる場合、賃借人は、賃貸人に対する使用収益権を保全するため、賃貸人が妨害者に対して有する所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使できる(最判昭29.9.24)。

(2) Aの有する債権が、AからB、BからCへと譲渡されたが、債務者に対して債権譲渡の通知がなされない場合、Cは、BのAに対する通知請求権を代位行使できる(大判大8.6.26)。

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