民法 第398条の8【根抵当権者又は債務者の相続】

第398条の8【根抵当権者又は債務者の相続】

① 元本の確定前に根抵当権者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債権のほか、相続人と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に取得する債権を担保する。

② 元本の確定前にその債務者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債務のほか、根抵当権者と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に負担する債務を担保する。

③ 第398条の4第2項の規定は、前2項の合意をする場合について準用する。

④ 第1項及び第2項の合意について相続の開始後6箇月以内に登記をしないときは、担保すべき元本は、相続開始の時に確定したものとみなす。

目次

【超訳】

① 元本の確定前に根抵当権者が死亡して相続が開始したときは、根抵当権は、既存の債権と、相続人・根抵当権設定者間の合意により定めた相続人(指定根抵当権者)が相続開始後に取得する債権とを担保する。

② 元本の確定前に債務者が死亡して相続が開始したときは、根抵当権は、既存の債務と、根抵当権者・根抵当権設定者間の合意により定めた相続人(指定債務者)が相続の開始後に負担する債務とを担保する。

③ ①②の合意をするに際して、後順位抵当権者その他の第三者の承諾は不要である。

④ 指定根抵当権者(指定債務者)の合意、及びその旨の登記は、相続開始後6か月以内に行う必要がある。登記をしないと合意の効力は発生せず、相続開始時に元本が確定したものとみなされる。

【解釈・判例】

1.根抵当権設定者が物上保証人である場合、設定者が死亡し、相続が開始しても、根抵当権の元本は確定しない。

2.根抵当権者や債務者が自然人の場合、相続があったときは、原則として元本が確定する。そして、根抵当取引の存続を当事者の意思に委ねる。

3.根抵当権者の相続の場合の根抵当関係

(1) 「相続開始の時」に存在する債権が根抵当権によって担保される。根抵当権者の相続人が、当該債権を根抵当権付で承継する。

(2) 根抵当権者の相続人が、債務者に対して債権を取得しても、当然には根抵当権によって担保されない。相続人が取得する債権を根抵当権によって担保するには、相続人全員と根抵当権設定者との合意で相続人の中から「指定根抵当権者」を定めなければならない。指定根抵当権者が定められると、「相続開始後」に指定根抵当権者が取得した債権も根抵当権によって担保されることになる。

(3) 相続開始後6か月以内に指定根抵当権者の合意の登記をしなかった場合、「相続開始の時」に元本は確定したものとみなされる

4.債務者の相続の場合の根抵当関係

(1) 「相続開始の時」に存在する債務が根抵当権によって担保される。債務者の相続人が、債務を当然に承継する。

(2) 根抵当権者が債務者の相続人に対して債権を取得しても、当然には根抵当権によって担保されない。根抵当権者が債務者の相続人に対して取得する債権を根抵当権によって担保するには、根抵当権者と根抵当権設定者との合意で債務者の相続人の中から「指定債務者」を定めなければならない。指定債務者が定められると、「相続開始後」に根抵当権者が指定債務者に対して取得した債権も根抵当権によって担保されることになる。

(3) 相続開始後6か月以内に指定債務者の合意の登記をしなかった場合、「相続開始の時」に元本は確定したものとみなされる

【問題】

元本の確定前に、根抵当権者が死亡し、相続が開始した場合、根抵当権は、相続開始の時に存する債権のほか、相続人と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続開始の後に取得する債権を担保することになり、当該合意について相続の開始後6か月以内に登記をしないときは、担保すべき元本は、相続開始の時に確定したものとみなされる

【平25-15-エ改:○】

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