第398条の3【根抵当権の被担保債権の範囲】
① 根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができる。
② 債務者との取引によらないで取得する手形上若しくは小切手上の請求権又は電子記録債権を根抵当権の担保すべき債権とした場合において、次に掲げる事由があったときは、その前に取得したものについてのみ、その根抵当権を行使することができる。ただし、その後に取得したものであっても、その事由を知らないで取得したものについては、これを行使することを妨げない。
一 債務者の支払の停止
二 債務者についての破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は特別清算開始の申立て
三 抵当不動産に対する競売の申立て又は滞納処分による差押え
【超訳】
① 根抵当権者は、元本、利息、遅延損害金の全部について極度額の範囲内で無制限に優先弁済が受けられる。
② 回り手形・回り小切手上の請求権、回り電子記録債権を根抵当権の被担保債権とした場合において、債務者の信用状態が悪化したとき(債務者が支払不能になったことを自ら表明したときや、債務者について破産手続開始等の申立があったとき)と、抵当不動産に対する競売の申立て、滞納処分による差押えがあったときは、これらの事実の発生前に取得した手形・小切手、電子記録債権のみが担保される。ただし、その事実を知らないで取得した手形・小切手、電子記録債権は担保される。
【解釈・判例】
1.根抵当権について民法375条は適用されない。根抵当権者は、極度額までは無制限に優先弁済を受けることができるが、極度額を超えて弁済を受けることはできない(1項)。
2.被担保債権があれば、極度額まで無制限に優先弁済が受けられるのが原則であるが、回り手形・小切手については制限される。いわゆる回り手形・小切手は、被担保債権としての資格を有しているが、債務者の信用状態が悪化した後のものまで認めると、根抵当権者がこれを好条件で買い集め、極度額の限度内に入れて優先弁済を受けることにより不当な利益を得る可能性があるため、第三者保護の観点から制限した。
【比較】
優先弁済の効力が認められる範囲 | |
根抵当権 | ① 確定した元本
② 利息その他の定期金 ③ 債務の不履行によって生じた損害の全部 |
抵当権 | ① 元本
② 満期となった最後の2年分の利息 ③ 満期後に特別登記をした2年分以前の利息 ④ 満期となった最後の2年分の遅延損害金 → ただし、利息その他の定期金と通算して2年分まで |
【問題】
根抵当権の被担保債権の利息や損害金であって元本確定前に発生したものは、極度額の範囲内であっても、最後の2年分を超える部分については、当該根抵当権によって担保されない
【平22-15-オ:×】