民法 第185条【占有の性質の変更】

第185条【占有の性質の変更】

権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。

目次

【超訳】

 他主占有(所有の意思のない占有)から、自主占有(所有の意思を伴う占有)への転換には、次のどちらかの要件を満たすことを要する。①自己に占有させた者に対して所有の意思を表示すること、又は、②「新権原」に基づいてさらに所有の意思を持って占有を始めること。

【解釈・判例】

1.「所有の意思」の存否の判断

占有を生じさせた原因たる事実の性質によって客観的に定まる(最判昭45.6.18)。

→ 買主、窃盗犯人、相続開始の事実(被相続人の自主占有の包括承継)を知らない相続人も自主占有者であるが、賃借人・質権者は他主占有者である。

2.「新権原」

(1) 賃借人(他主占有者)が賃借物を買い取った場合、売買契約を締結し代金を支払った時から自主占有者になる(最判昭52.3.3)。

(2) 相続が「新権原」に当たるかにつき、判例は、相続人が占有を相続により承継したばかりでなく、新たに土地建物を事実上支配することで占有を開始し、相続人の占有に所有の意思があると認められるときは、被相続人の死亡後、新権原により自主占有をするに至ったものと解されるとした(最判昭46.11.30)。

(3) 解除条件付の売買契約に基づく買主の占有は自主占有となり、解除条件が成就し、当該売買契約が失効しても、当然に自主占有でなくなるものではない(最判昭60.3.28)。

→ 他主占有と解される客観的・外形的事実がない限り、自主占有を喪失することはない(最判昭58.3.24)。

【問題】

AがB所有の甲土地を借りて乙建物を建て、甲土地を15年間占有していたところ、Aが死亡し、Aの単独相続人であるCが甲土地及び乙建物がAの遺産であり自己がこれらを取得したと信じて5年間甲土地を占有した場合、Cは甲土地の所有権を取得する

【平21-7-オ:×】

【問題】

Aは、Bが所有しAに寄託している動産甲をBから買い受け、その代金を支払った。この場合には、Aの動産甲に対する占有の性質は、所有の意思をもってする占有に変更される

【平28-9-ウ:○】

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