第178条【動産に関する物権の譲渡の対抗要件】
動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。
目次
【超訳】
動産についての物権の得喪変更を、引渡しの欠缺を主張するに正当な利益を有する第三者に対抗するには、引渡しを受けることを要する。
【解釈・判例】
1.引渡しを対抗要件とする物権変動
(1) 引渡しを対抗要件とする物権変動とは動産所有権の譲渡と、これと同視すべき取消し又は解除などによる所有権の復帰のみである。
(2) 動産であっても、以下の場合には引渡しが対抗要件となっていない。
① 船舶・自動車・航空機は、登記・登録が対抗要件となる(未登録自動車は引渡しが対抗要件となる)。
② 金銭は所有と占有が一致するので本条の適用はない(最判昭39.1.24)。
2.「引渡し」の意義
現実の引渡し(182条1項)だけでなく、観念的な引渡しである簡易の引渡し(182条2項)、占有改定(183条)、指図による占有移転(184条)も含まれる。
【暗記】
賃借人・受寄者と対抗要件の要否
① 賃借人は本条の「第三者」に当たる(大判大8.10.16)。
② 受寄者は本条の「第三者」に当たらない(最判昭29.8.31)。
【問題】
Aが甲をBに寄託している場合において、Aが甲をCに譲渡した。Bは、民法第178条にいう「第三者」に当たらないから、Cは、指図による占有移転により甲の引渡しを受けていなくても、Bに対し、甲の引渡しを請求することができる
【平23-8-ア:○】