民法 第175条【物権の創設】

第175条【物権の創設】

物権は、この法律その他の法律に定めるもののほか、創設することができない。

目次

【超訳】

 契約等によって、民法その他の法律の定めたものとは異なる種類の物権を作り出すことはできない。また、物権の内容を民法その他の法律に定められているのとは違ったものとすることもできない。

【解釈・判例】

1.一物一権主義

(1) 内容

① 物権の客体は一つの独立した物でなければならない(独立性・単一性)。

② 一個の物の上には同一内容の物権は一つしか成立しない(排他性)。

(2) 一物一権主義の例外

① その範囲を客観的に確定し得る限り、一筆の土地の一部に所有権が成立する(最判昭40.2.23)。

② 一筆の土地の一部に地役権が成立する(282条2項ただし書)。

③ 一筆の土地の一部を時効取得することができる(大判大13.10.7)。

④ 物の集合体については、それを構成する個々の物の上に各別の所有権が成立し、集合物が全体として一個の物権の客体となることはない。しかし、構成部分の変動する集合動産について、その種類、所在場所及び量的範囲を指定するなど何らかの方法で目的物の範囲が特定される場合には、これを一個の集合体として譲渡担保の目的物とすることができる(最判昭54.2.15)。

2.物権的請求権

(1) 物権は絶対的・排他的支配権であるから、その円満な支配状態が妨げられたり、妨げられるおそれがあるときは、その侵害の除去又は予防を請求することができる。これを物権的請求権という。

(2) 物権的請求権の種類

① 物権的返還請求権

② 物権的妨害排除請求権

③ 物権的妨害予防請求権

(3) 物権的請求権の法的性質

判例は、物権的請求権の内容は行為請求権(相手方の費用で妨害の除去又は予防に必要な行為をするように請求できる)であるとしつつ、侵害状態又はその危険が人為によらないものであったり、不可抗力によるものである場合には、相手方に積極的な行為義務はないものとする(大判昭7.11.9、大判昭12.11.19)。

(4) 行使の相手方

① 原則

現に物権的支配を侵害している者(現在の占有者など)に対して行使する。

② 例外

他人の土地上に自らの意思で建物所有権取得の登記を経由した者は、その建物を他人に譲渡しても、登記名義を有する限り、土地所有者に対し、自己の建物所有権の喪失を主張して建物収去土地明渡しの義務を免れることはできない(最判平6.2.8)。

(5) 関連判例

① 物権的請求権が認められるためには、侵害者の故意や過失を必要としない。妨害が不可抗力によって生じた場合であっても認められる(大判昭12.11.19)。

② 債権には原則として妨害排除請求権は認められないが、対抗力を備えた不動産賃借権については物権的請求権が認められる(最判昭28.12.18、昭30.4.5)。

【問題】

A所有の甲土地上にある乙建物について、Bが所有権を取得して自らの意思に基づいて所有権の移転の登記をした後、乙建物をCに譲渡したものの、引き続き登記名義を保有しているときは、Bは、Aからの乙建物の収去及び甲土地の明渡しの請求に対し、乙建物の所有権の喪失を主張して、これを拒むことができない

【平24-8-4:○】

【問題】

A所有の甲土地に隣接する乙土地がその所有者Bにより掘り下げられたため、甲土地の一部が乙土地に崩落する危険が生じた場合において、当該危険が生じたことについてBに故意又は過失がないときは、Aは、Bに対し、甲土地の所有権に基づき、甲土地の崩落を予防するための設備の設置を請求することができない

【平26-7-ウ:×】

【問題】

Aの所有する甲土地から、Bの所有する乙土地に土砂が流れ込むおそれがある場合には、Aが自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にあっても、Bは、Aに対し、乙土地の所有権に基づき、予防措置を請求することができる

【平30-7-エ:〇】

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