第144条【時効の効力】
時効の効力は、その起算日にさかのぼる。
目次
【解釈・判例】
1.時効完成の効力は、起算日に遡及する。永続した事実を尊重し、その間の複雑な権利関係の争いを避けるためである。
2.時効の起算日
(1) 取得時効の場合
目的物につき現実の占有を開始した時(最判昭35.7.27)。
(2) 消滅時効の場合
① 債権者が権利を行使できることを知った時(166条1項1号)。
② 権利行使につき法律上の障害がなくなった時(166条1項2号)。
3.取得時効完成の時期を定めるに当たっては、取得時効の基礎たる事実が法律に定めた時効期間以上に継続した場合であっても、時効の基礎たる事実の開始した時を起算点として時効完成の時期を決定すべきものであり、時効を援用する者が任意にその起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない(最判昭35.7.27)。
【問題】
A所有の甲土地の所有権についてBの取得時効が完成したところ、当該取得時効が完成した後にCがAから甲土地を買い受け、その旨の所有権の移転の登記がされた場合には、Bは、Cに対し、甲土地の占有を開始した時点より後の時点を時効期間の起算点として選択し、時効完成の時期を遅らせることにより、甲土地の所有権を取得したことを主張することはできない
【平26-8-ア改:○】