第831条【株主総会等の決議の取消しの訴え】
① 次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより株主(当該決議が創立総会の決議である場合にあっては、設立時株主)又は取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。以下この項において同じ。)、監査役若しくは清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第346条第1項(第479条第4項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役)又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。
一 株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。
二 株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。
三 株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。
② 前項の訴えの提起があった場合において、株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令又は定款に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、同項の規定による請求を棄却することができる。
超訳
① 次に掲げる場合には、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役は、株主総会若しくは種類株主総会又は創立総会若しくは種類創立総会(株主総会等)の決議の日から3か月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより取締役、監査役又は清算人(取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者及び、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合は、設立時取締役又は設立時監査役を含む。)となる者も同様に請求することができる。
一 招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。
二 決議の内容が定款に違反するとき。
三 決議につき特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。
解釈
①三 特別の利害関係を有する株主でも議決権を行使することは可能である。また、当該株主が議決権を行使しただけでは取消事由に当たらない。
判例
1.株主は、株主総会の決議の取消しの訴えを提起した場合において、当該株主総会の決議の日から3か月が経過したときは、新たな取消事由を追加主張することはできない(最判昭51.12.24)。
2.株主は、自己に対する株主総会招集手続に瑕疵がなくとも、他の株主に対する株主総会の招集手続の瑕疵を理由として、株主総会の決議の取消しの訴えを提起することができる(最判昭42.9.28)。
比較
決議取消しの訴えと決議不存在又は無効確認の訴え
決議取消しの訴え (831条) |
決議不存在・無効確認の訴え (830条) |
|
主張方法 |
訴えに限る |
訴訟で確認されなくても、無効・不存在を主張できる。 |
提訴理由 |
一 招集手続又は決議方法が法令・定款違反、又は著しく不公正なとき。 二 決議内容が定款に違反するとき。 三 決議につき特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。 |
・決議の不存在(830条1項) ・決議内容の法令違反(830条2項) |
訴え提起権者 |
株主等に限定 |
訴えの利益あれば誰でも |
訴え提起期間 |
決議の日より3か月以内 |
いつでも |
判決の遡及効 |
あり(839条) |
|
判決の対世効 |
あり(838条) |
|
裁判所の裁量棄却 |
あり(831条2項) |
なし |
問題
株主総会の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使した場合には、株主は、株主総会の決議の方法が著しく不公正であることを理由として、訴えをもって株主総会の決議の取消しを請求することができる
【平18-34-エ:×】
問題
株主は、他の株主に対する株主総会の招集手続の瑕疵を理由として、株主総会の決議の取消しの訴えを提起することはできない
【平22-34-オ:×】