第828条【会社の組織に関する行為の無効の訴え】

第828条【会社の組織に関する行為の無効の訴え】

① 次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる。

一 会社の設立 会社の成立の日から2年以内

二 株式会社の成立後における株式の発行 株式の発行の効力が生じた日から6箇以内(公開会社でない株式会社にあっては、株式の発行の効力が生じた日から1年以内)

三 自己株式の処分 自己株式の処分の効力が生じた日から6箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては、自己株式の処分の効力が生じた日から1年以内)

四 新株予約権(当該新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合にあっては、当該新株予約権付社債についての社債を含む。以下この章において同じ。)の発行 新株予約権の発行の効力が生じた日から6箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては、新株予約権の発行の効力が生じた日から1年以内)

五 株式会社における資本金の額の減少 資本金の額の減少の効力が生じた日から6箇月以内

六 会社の組織変更 組織変更の効力が生じた日から6箇月以内

七 会社の吸収合併 吸収合併の効力が生じた日から6箇月以内

八 会社の新設合併 新設合併の効力が生じた日から6箇月以内

九 会社の吸収分割 吸収分割の効力が生じた日から6箇月以内

十 会社の新設分割 新設分割の効力が生じた日から6箇月以内

十一 株式会社の株式交換 株式交換の効力が生じた日から6箇月以内

十二 株式会社の株式移転 株式移転の効力が生じた日から6箇月以内

十三 株式会社の株式交付 株式交付の効力が生じた日から6箇月以内

② 次の各号に掲げる行為の無効の訴えは、当該各号に定める者に限り、提起することができる。

一 前項第一号に掲げる行為 設立する株式会社の株主等(株主、取締役又は清算人(監査役設置会社にあっては株主、取締役、監査役又は清算人、指名委員会等設置会社にあっては株主、取締役、執行役又は清算人)をいう。以下この節において同じ。)又は設立する持分会社の社員等(社員又は清算人をいう。以下この項において同じ。)

二 前項第二号に掲げる行為 当該株式会社の株主等

三 前項第三号に掲げる行為 当該株式会社の株主等

四 前項第四号に掲げる行為 当該株式会社の株主等又は新株予約権者

五 前項第五号に掲げる行為 当該株式会社の株主等、破産管財人又は資本金の額の減少について承認をしなかった債権者

六 前項第六号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において組織変更をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は組織変更後の会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは組織変更について承認をしなかった債権者

七 前項第七号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において吸収合併をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は吸収合併後存続する会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは吸収合併について承認をしなかった債権者

八 前項第八号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において新設合併をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は新設合併により設立する会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは新設合併について承認をしなかった債権者

九 前項第九号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において吸収分割契約をした会社の株主等若しくは社員等であった者又は吸収分割契約をした会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは吸収分割について承認をしなかった債権者

十 前項第十号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において新設分割をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は新設分割をする会社若しくは新設分割により設立する会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは新設分割について承認をしなかった債権者

十一 前項第十一号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において株式交換契約をした会社の株主等若しくは社員等であった者又は株式交換契約をした会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは株式交換について承認をしなかった債権者

十二 前項第十二号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において株式移転をする株式会社の株主等であった者又は株式移転により設立する株式会社の株主等、破産管財人若しくは株式移転について承認をしなかった債権者

十三 前項第十三号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において株式交付親会社の株主等であった者、株式交付に際して株式交付親会社に株式交付子会社の株式若しくは新株予約権等を譲り渡した者又は株式交付親会社の株主等、破産管財人若しくは株式交付について承認をしなかった債権者

目次

解釈・判例

1.本条2項7号の「株主等…であった者」には、金銭を対価とする合併が行われた場合に、存続会社の株式の交付を受けなかった消滅会社の株主が含まれる。

2.会社の設立があったと認められる行為がなく、会社が不存在である場合は、設立無効の訴えを提起するまでもなく、何人であっても会社の不存在を主張することができる(大判昭12.9.2)。

3.株式発行の無効原因に関する判例

(1) 無効原因とならないもの

① 新株発行は株式会社の組織に関する行為であるとはいえ、会社の業務執行に準じて取り扱われるものであるから、当該会社を代表する権限のある取締役が新株を発行した以上、新株発行に関する有効な取締役会の決議がなかったとしても、当該新株の発行は有効である(最判昭36.3.31)。

② 新株発行に関する取締役会の決議により、著しく不公正な方法で新株が発行された場合であっても、当該新株の発行は有効である(最判平6.7.14)。発行された新株を当該会社の取締役である者が引き受けたことや、当該新株を発行した会社が小規模かつ閉鎖的な会社であることは、この結論に影響を及ぼすものではない。

③ 公開会社の代表取締役が、株主総会の特別決議を経ることなく、株主以外の者に対して、特に有利な発行価額をもって新株を発行した場合であっても、その瑕疵は新株発行の無効原因とはならない(最判昭46.7.16)。

(2) 無効原因となるもの

① 公開会社が募集株式の発行をする際の新株発行に関する事項の通知又は公告(会201条3項、4項)は、当該新株発行について株主が差止請求権を行使する機会を保障するためのものであるから、これらの手続を欠くことは、新株発行の差止請求をしたとしても差止めの事由がないために当該請求が許容されないと認められる場合でない限り、新株発行の無効原因となる(最判平9.1.28)。

② 新株発行差止めの仮処分命令に違反して新株発行がされたことは、新株発行の無効原因となる(最判平5.12.16)。

③ 非公開会社において、株主総会の特別決議を経ないまま株主割当て以外の方法による募集株式の発行がされた場合、当該特別決議を欠く瑕疵は、当該株式発行の無効原因となる(最判平24.4.24)。

④ 非公開会社が株主割当て以外の方法により発行した新株予約権に株主総会によって行使条件が付された場合に、当該行使条件が当該新株予約権を発行した趣旨に照らして当該新株予約権の重要な内容を構成しているときは、当該行使条件に反した新株予約権の行使による株式の発行には無効原因がある(最判平24.4.24)。

比較

会社の組織に関する訴え

訴えの種類

設立の無効

新株発行の無効

新株予約権発行の無効

資本金の額の無効

組織変更の無効

組織再編行為の無効

提訴期間

2年

6か月

非公開会社は1年

6か月

提訴権者

株主等

社員等

※1

株主等

株主等、新株予約権者

株主等、破産管財人、不承認債権者

株主等・社員等(であった者)、破産管財人、不承認債権者

被 告

設立する会社

株式(新株予約権)を発行した会社

当事会社

組織変更後の会社

当事会社

※2

認容判決の効力

対世効:あり(会838条)

遡及効:なし(会839条)

※1 株主等とは、株主、取締役、清算人を指す。監査役設置会社では監査役、指名委員会等設置会社では執行役も含まれる。社員等とは、社員と清算人を指す。

※2 合併の場合、消滅会社は被告とならない。株式交付の場合、被告となるのは株式交付親会社のみ。

問題

株主は、募集に係る株式の発行がそれを差し止める旨の仮処分命令に違反してされた場合には、当該仮処分命令に違反することを無効原因として、新株発行の無効の訴えを提起することはできない

【平22-34-ア:×】

問題

監査役設置会社の設立の無効の訴えについては、株主、取締役、監査役又は清算人は原告適格を有するが、発起人は原告適格を有しない

【平27-27-オ:○】

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