第799条【債権者の異議】
① 次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める債権者は、存続株式会社等に対し、吸収合併等について異議を述べることができる。
一 吸収合併をする場合 吸収合併存続株式会社の債権者
二 吸収分割をする場合 吸収分割承継株式会社の債権者
三 株式交換をする場合において、株式交換完全子会社の株主に対して交付する金銭等が株式交換完全親株式会社の株式その他これに準ずるものとして法務省令で定めるもののみである場合以外の場合又は第768条第1項第4号ハに規定する場合 株式交換完全親株式会社の債権者
② 前項の規定により存続株式会社等の債権者が異議を述べることができる場合には、存続株式会社等は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第4号の期間は、一箇月を下ることができない。
一 吸収合併等をする旨
二 消滅会社等の商号及び住所
三 存続株式会社等及び消滅会社等(株式会社に限る。)の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
四 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
③ 前項の規定にかかわらず、存続株式会社等が同項の規定による公告を、官報のほか、第939条第1項の規定による定款の定めに従い、同項第2号又は第3号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告は、することを要しない。
④ 債権者が第2項第4号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該吸収合併等について承認をしたものとみなす。
⑤ 債権者が第2項第4号の期間内に異議を述べたときは、存続株式会社等は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該吸収合併等をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。
超訳
①一 吸収合併をする場合、吸収合併存続株式会社は、吸収合併存続株式会社の債権者に対して債権者保護手続をとらなければならない。
①二 吸収分割をする場合、吸収分割承継株式会社は、吸収分割承継株式会社の債権者に対して債権者保護手続をとらなければならない。
①三 株式交換をする場合において、株式交換完全子会社の株主に対して交付する金銭等が株式交換完全親株式会社の株式だけではない場合(要するに会社の財産が流出する場合)又は株式交換完全子会社の新株予約権付社債についての社債に係る債務を株式交換完全親会社が承継する場合(会768条1項4号ハ)には、株式交換完全親株式会社の債権者に対して債権者保護手続をとらなければならない。
解釈
② 総会決議の前に公告・催告をすることもできる。
問題
株式交換をする場合において、株式交換完全子会社の株主に対して交付される財産が金銭のみであるときは、株式交換完全子会社の債権者も、株式交換完全親会社の債権者も、当該株式交換について異議を述べることができない
【平19-35-エ:×】
問題
A株式会社とその発行済株式の全部を有するB株式会社とが吸収合併をする場合には、吸収合併存続会社がB株式会社であるときでも、B株式会社の債権者は、B株式会社に対し、当該吸収合併について異議を述べることができる
【平25-33-エ:○】