第676条【募集社債に関する事項の決定】
会社は、その発行する社債を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集社債(当該募集に応じて当該社債の引受けの申込みをした者に対して割り当てる社債をいう。以下この編において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。
一 募集社債の総額
二 各募集社債の金額
三 募集社債の利率
四 募集社債の償還の方法及び期限
五 利息支払の方法及び期限
六 社債券を発行するときは、その旨
七 社債権者が第698条の規定による請求の全部又は一部をすることができないこととするときは、その旨
七の二 社債管理者を定めないこととするときは、その旨
八 社債管理者が社債権者集会の決議によらずに第706条第1項第2号に掲げる行為をすることができることとするときは、その旨
八の二 社債管理補助者を定めることとするときは、その旨
九 各募集社債の払込金額(各募集社債と引換えに払い込む金銭の額をいう。以下この章において同じ。)若しくはその最低金額又はこれらの算定方法
十 募集社債と引換えにする金銭の払込みの期日
十一 一定の日までに募集社債の総額について割当てを受ける者を定めていない場合において、募集社債の全部を発行しないこととするときは、その旨及びその一定の日
十二 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
解釈
1.柱書の冒頭で「会社は、…」とされていることから、持分会社も社債を発行できる(会2条1号、23号)。外国会社は発行不可(会2条2号)。特例有限会社は発行可。
2.取締役会設置会社では、676条及び会社法施行規則162条に列挙された募集事項のうち、676条1号に掲げる事項及び重要な事項として法務省令が定める事項を除いて、代表取締役や業務執行取締役に決定を委任できる(会362条4項5号)。これにより株式会社は、市場の状況に応じて機動的に社債を発行し、資金調達ができる。
3.会社が社債管理補助者を定める場合は、社債管理者を定めないとする旨及び社債管理補助者を定める旨を募集事項として定めなければならない(714条の2参照)。
比較
社債と株式の差異
社債 |
株式 |
|
会社に対する地位 |
会社に対する債権 |
株式会社の社員としての地位 |
発行手続 |
取締役会を設置していない会社では、取締役(348条)が、取締役会設置会社では、取締役会(362条4項5号)が決定。 |
原則として株主総会(199条2項)が、公開会社では取締役会が決定(201条1項)。 |
権利の内容 |
社債の内容は社債発行契約で定められ、発行ごとに内容が異なる(676条)。 |
種類株式を除き、その内容は同一(株主平等の原則、109条1項)。 |
経営参加権 |
会社経営への参加権なし。 |
株主総会の議決権(308条1項)、各種の監督是正権(297条、360条、847条、854条等)を通じ、会社経営の参加権を有する。 |
剰余金の配当・利息 |
会社の分配可能額に関わらず、一定額の利息の支払を受けることができる(676条3号)。 |
会社に分配可能額がある場合に限り、剰余金の配当を受けることができる(453条、458条、461条)。 |
払戻し(投下資本の回収方法) |
償還期限が到来すれば、元本の償還を受けることができる(676条4号)。 |
会社の存立中は、原則として株主は出資の払戻しを受けて退社することはできない。投下資本の回収は専ら株式の譲渡による(127条)。 |
会社解散の場合 |
債権者として、株主に優先して他の一般債権者と同順位で会社財産から弁済を受けられる。 |
債権者に対する弁済がされた後に、残余財産の分配を受けることができるにすぎない(502条)。 |