第611条【退社に伴う持分の払戻し】
① 退社した社員は、その出資の種類を問わず、その持分の払戻しを受けることができる。ただし、第608条第1項及び第2項の規定により当該社員の一般承継人が社員となった場合は、この限りでない。
② 退社した社員と持分会社との間の計算は、退社の時における持分会社の財産の状況に従ってしなければならない。
③ 退社した社員の持分は、その出資の種類を問わず、金銭で払い戻すことができる。
④ 退社の時にまだ完了していない事項については、その完了後に計算をすることができる。
⑤ 社員が除名により退社した場合における第2項及び前項の規定の適用については、これらの規定中「退社の時」とあるのは、「除名の訴えを提起した時」とする。
⑥ 前項に規定する場合には、持分会社は、除名の訴えを提起した日後の法定利率による利息をも支払わなければならない。
⑦ 社員の持分の差押えは、持分の払戻しを請求する権利に対しても、その効力を有する。
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解釈
持分の払戻しは退社に伴う効果であって、いわゆる社員たる地位の払戻しといえ、出資の払戻し(624条)とは異なる。持分の払戻しは会社の現財産に対する持分であるので、退社の時点の会社の財産の状況によって変化する。一方、出資の払戻しはすでに出資した金銭等が交付されるのである。
判例
無限責任社員が合資会社を退社したことにより、退社の時における当該会社の財産の状況に従って当該社員と当該会社との間の計算がされた結果、当該社員が負担すべき損失の額が当該社員の出資の価額を超える場合には、定款に別段の定めがあるなどの特段の事情のない限り、当該社員は、当該会社に対してその超過額を支払わなければならない(最判令12.24)。