齊藤 賢一さん
受講コース:中級パーフェクトコース
この度はおかげさまで令和7年度の司法書士試験筆記試験に合格することができました。4回目の挑戦でした。この合格体験記では、これまでの学習や本試験を振り返って感じたことや私が考える「合格することができた理由」について述べたいと思います。皆様の学習の一助になれば幸いです。
クレアール受講まで 3回の不合格
前述のとおり、私は4回目の受験で合格しました。まずはクレアール受講前の3回の不合格について振り返ります。
初めての受験は令和2年度。前年の令和元年9月、私は当時従事していた業界の将来性に不安を感じ「一生ものの資格」が欲しいと考えました。そこで不動産業を営む親戚の薦めもあり、司法書士資格への挑戦を決意し、学習を開始。
学習方法は他校の参考書と過去問題集を用いての独学を選びました。購入した参考書は全15冊、総ページは数千ページにも及び、幅30センチ程の私の本棚の一列を占領しました。当時の私はそれを見て、「この参考書の内容を全部覚えれば、合格できるだろう」などと考え、ひたすら参考書を読み始め、学習した単元から過去問にも取り掛かりました。
参考書のすべてのページに目を通し、過去問を一周できたのは7か月後、令和2年の4月になっていました。そこから私は受けられる模試は全部受けるという学習方針のもと、他校の模試を計11回受けました。しかし、「これだけの参考書を読んだのだから、いいところまではいくだろう」という私の目論見は完全に外れ、午前の択一式の基準点にも届かない結果ばかりでした。結局、コロナで延期となった令和2年9月の本試験でも択一式基準点には達せず不合格となりました。私は「この学習量で基準点もとれないなら自分には無理だろう」と考え、司法書士試験から距離を置くこととしました。
2年後の令和4年、将来への不安は消えない中、ふと目にした本棚にはいまだ片付けられていない参考書が置かれていました。私はそれを見て「2年前は何とか目を通すだけで終わってしまった。数年かけて取り組めば、いけるかもしれない」と思い直して、一念発起。司法書士事務所に転職し、補助者として働きながら、資格取得を目指すことにしました。
しかし、補助者としての勤務は想像以上に忙しく、毎日の残業に追われました。通勤時間も往復約1時間半と長くなり、まとまった学習時間を確保することが困難となりました。隙間時間での学習を続けながら、令和5年度、令和6年度と受験してみましたが、どちらも午前の部・午後の部いずれも、択一式の基準点に届くことができませんでした。
クレアールを受講した理由
不合格を繰り返す中でも私は「まだ参考書の内容が完璧になっていないだけ。時間をかければいつかは合格できる」と楽観的に考えていました。しかし、そんな私の考えを改めさせる出来事が起こりました。とある問題集に載っていた問題を自信満々で解答したところ間違えていたのです。具体的には不動産登記記述式の胎児名義で登記する際のひな形の記載についての問題でした。ご存じの方も多いとは思いますが、現在胎児の名義は「●●胎児(●●は母の名)」となっています。しかし、令和2年度の参考書で学習していた私は「亡〇〇妻●●胎児(〇〇は被相続人の名)」で覚えていました。法改正に対応できていなかったのです。
「このままでは一生合格出来ないかもしれない。」
とてつもない焦りを感じたことを今でも覚えています。そこで最新の情報を手に入れるべく、司法書士講座の受講を決意しました。令和6年度の本試験の数週間後、7月下旬のことでした。様々な予備校の講座を検討するにあたり、私は次の2点を重視しました。
- 令和7年度の本試験までにこなせる内容であること
- 通勤時間などの隙間時間をフルに活用できること
これらの条件で検討していくなか、クレアールの『択一六法』は①に、「CROSS STUDY」は②にまさに合致すると強く感じました。そして、当時の自分の本試験の成績(午前の部の択一式は20問前半、午後の部の択一式は10問後半の正答数)も考慮し、クレアールの「中級パーフェクトコース」に申し込みました。
学習初期・中期 教材を絞った学習
私はまず択一式対策として、毎日の通勤時間を利用して、CROSS STUDYでの学習を始めました。
このCROSS STUDYを通して、自分の理解状況を詳細かつ明確に把握できたと感じました。例えば民法や不動産登記法、等の基本4法は学習経験もあったため、7割~8割は正解していました。ただ、正解できた中にも「完全に理解して答えていたもの」もあれば、「曖昧な知識で答えていたもの」もあり、反対に間違えた問題にも、「真逆で覚えていたもの」「法改正に対応できていなかったもの」「問題を読み違えていたもの」など、様々な理解状況があることに気づきました。
そこで私は、CROSS STUDYの問題に星を付けられる機能(重要度)を利用して、一つ一つの問いに対して正誤のみではない分類を行うことにしました。具体的には、完全に理解していて何度出されても間違えないだろうものは★なし、間違えた問題は★4、正答したものの正誤の判断をした根拠があいまいなものであった場合は★3としました。なお、計算が必要なものや相続関係図を書く必要があるなど、通勤時間で解答するのが困難な問題は★2とし、帰宅後や週末に着手しました。
復習は基本的には「物権法」や「債権法総論」をいった単元が完了した際にまとめて行いました。復習方法は★3と★4の問題について、『択一六法』を使って見直すというものでした。ただし、「譲渡担保」などの細かい単元の中で、他より正答率の低い単元があれば、そこだけはその場で優先して復習するなどの対応を行いました。
基本4法については比較的順調でしたが、マイナー科目である民事訴訟法や供託法の学習に入ると正答率は一気に低下、6割を切るようになりました。そこでCROSS STUDYは一旦ストップし、『択一六法』でインプットのやり直しを行った後にCROSS STUDYを解くやり方に切り替え、これらの科目の正答率も7割~8割に仕上げていきました。
記述対式策については、『合格書式マニュアル』に載っているひな形の記載例をノートに書いていく→一通り覚えたら『合格書式マニュアル対応問題集』を解く→覚えていないところや注意すべきところを復習するといったものでした。
このように、択一式対策のインプットは『択一六法』、アウトプットはそれに準拠したCROSS STUDY。記述式対策のインプットは『合格書式マニュアル』、アウトプットは『合格書式マニュアル対応問題集』を使って(というよりそれしか使わずに)学習を進めていきました。今にして思えば、教材を絞ることにより、迷うことなくやるべきことを明確にできたのではないかと思います。
直前期 実力完成総合答練と模試
学習を進めていくうちに令和7年の4月、いわゆる直前期へ突入していきました。実力完成総合答練が届き始め「いよいよだな」と感じました。私はこのタイミングで問題に対する考え方を変えようと決めていました。それまではCROSS STUDYや問題集、「科目別ベーシック答練」での間違いについて「これからやるべきことが見つかった」とむしろ歓迎して、見直しに励んでいました。しかし、直前期からは「間違いは減点の元であり、無くすべきもの」を考えるようにしました。この考え方の変化により、学習は一気につらいものとなりました。自分の出来ないところと真正面から向かい合うのは精神的なきつさがあります。学習していたはずのものが答えられないときには自分を何度も責めたくなり、その反動で学習を辞めたくもなりました。しかし、「今までの自分にはこれが足りなかった。これは合格するためには必要なことなのだ」と自分に言い聞かせ、なんとか学習を進めていきました。
模試に関しては、クレアールの2回(実力診断模擬試験・全国公開模擬試験)と他校の模試4回の計6回を受験しました。私はある目標を定め、模試に挑みました。それは「本番に向けたマイルールを決めていく」ことでした。午後の部の時間配分をどのようにしていくか、マークシートは都度記載するかそれとも最後に一気にマークするか、肢はどのくらい検討して解答するか、誤った肢を選ぶ問題で正しい肢を選ぶケアレスミスをどう防ぐか。このようなことを模試で試行錯誤しながら決めていきました。
本試験まで1か月を切った6月は、今までの答練や模試の見直しとCROSS STUDYの完成にあてました。令和2年度の試験では、受験した模試は全部で11回分もあり、しかも全てが基準点未満だったので見直すところが多すぎて、時間がいくらあっても足らず消化不良となりましたが、今回は見直したいところは全て見直すことができ、CROSS STUDYも★なし(すべてを理解)の状態で本試験に臨むことができました。
本試験
令和7年7月6日。ついに本試験の日となりました。模試の結果は択一式・記述式の基準点は越えているものの、総合点は合格圏には届かないC判定であったため、不安を残しながらの受験となりました(たとえ、A判定だったとしても不安だったとは思いますが)。
午前の部の択一式では、第4問目(民法の第1問目)が今までの傾向と全く違うものが出るなど、面を食らうものもありましたが、CROSS STUDYでの学習の成果をしっかりと反映できたと思います(特に第35問目においては匿名組合という商法の中でもマイナーな論点が出題されましたが、CROSS STUDYで得た2つの知識のみで解くことができました)。
午後の部の試験は、ご存じのとおり時間との闘いです。私は「時間配分は考えず、択一式をなるべく早く終わらせる(マークシートを埋める)」というマイルールに従い、択一式を50分、不動産登記記述式も50分と答練や模試よりも速いペースで解いていきました。この時、私は「これで商業登記記述式に60~65分くらいは使えるな。残りの15分で見直しもできる」などと考えていました。まさか、残りの80分を全て商業登記記述式に使っても終わらず、見直しもできなくなるとは知らずに。
受験票が届くまで、自分の受験番号が消えてないか、合格発表のホームページを何度も確認したほどでした。こんな私がなぜ合格することができたのか。この合格体験記を執筆するにあたり、自分の今までの学習を振り返っていくうちに一つの結論に達しました。それは「自分は試験に不合格にならなかったから合格できた」ということです。
「当たり前だろ?」と思われるかもしれません。しかし、司法書士試験というものを考えれば、「落ちないことこそが合格の秘訣」であると考えられるのです。司法書士試験の筆記試験の合格率は約5パーセント、つまり100人中約95人は不合格となります。不合格になる理由は、大きく分ければ択一式での基準点未達、記述式での基準点未達、総合落ちの3つですが、さらに細分化することができます。具体的には曖昧な知識や読み間違えによる誤答、マークズレなどのケアレスミス、午後の部の試験の時間切れ、記述式での枠ズレなどが挙げられます。私は答練や模試でこれらのミスを全てやらかし、その都度対策を講じていきました。その時は自分の不甲斐なさに情けない気分になっていましたが、今となってはそれが一番の合格の秘訣だったのではないかと感じています。勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなしとは司法書士試験においても言い得て妙なのではないでしょうか。
私の合格体験記は以上です。最後まで御覧いただきありがとうございました。

