S.Tさん
なぜ司法書士資格を目指したか、なぜクレアールを選んだか
私はもともと地方公務員でした。新人の頃、「この事例についてはこの手順で作業を進めるように。」といった感じで、割と定型的に仕事を教わってきましたが、仕事に慣れていくにつれて、なぜその手続きなのか、なぜその内容が必要なのか、といったことが気になるようになりました。そして、関連法規を調べる中で、身の回りには法律で決められている事項が多々あることに気が付き、その頃から法律に興味を持ち始めました。また、関連法規を調べていく中で、法律を読むこと自体もそこまで苦ではなく、面白いと感じることにも気が付きました。
そのように仕事をしていく中で、いつか自分の責任で、自分の名前と裁量で仕事をしたいという独立願望が出てきたことから、独立について調べた際、興味のある法律に関する業種、かつ独立しやすい業種として、司法書士という働き方が目に入りました。とはいえ、この頃はまだ、どうしても司法書士になりたいとまでは考えていませんでした。簡単な試験ではないこともありましたし、一筋縄ではいかないと感じたからです。ですが、最悪資格を取得できなくとも、知識を増やすことは地方公務員の仕事や考え方にも役に立つだろうと思い、ほぼ趣味の一環として、講座を受講してみようと決意しました。始まりがこのような消極的な考え方であったため、とりあえず安価に始めたいと考えながら予備校を比較していきました。その中で、費用面や講座の内容が納得できるクレアールを見つけ、受講を決定しました。
クレアールで学習して良かった点
私は、公務員試験で多少法律を勉強したものの、もとは工学部出身の理系人間です。当時の公務員試験対策においても、しっかり法律の勉強を出来たわけではないので、ほぼ一からの学習となります。
そんな法律初心者の私としては、クレアールの教材の中でも特に択一六法が非常に便利でした。司法書士試験においては、正直なところ、市販の六法を用いずとも、これだけでも十分だと思います。実際、私はほぼ択一六法しか使いませんでした。法律特有の複雑な書かれ方をした条文が「超訳」によって理解しやすくなり、調べる度に関連判例等に目を通すことで知識の幅が広がっていくのが少しずつわかりました。
1年目から4年目までの受験生活について
ここからは実際の受験生活の話をしていきたいと思います。
1年目 2020年7月~2021年試験まで
私は2020年の夏に受講を開始しました。当時はまだ地方公務員の仕事をしていました。前述のとおり、この頃はまだ本格的に勉強に取り組むつもりはありませんでした。仕事をしながら余暇の時間に学習を進めていき、何年後になるかはわからないけれど、合格にたどり着いてから独立に舵を切ればいい。そのくらいに考えていました。しかし、民法・不動産登記法の学習を進めているうちに、もっと本腰を入れて学習したい、本気で取り組みたいという気持ちに変わっていきました。この気持ちを尊重することに決めて、この年度の3月に退職しました。なお、この時点では、まだ民法と不動産登記法の講座を視聴し終えたかどうか程度にしか学習は進んでいませんでした。
退職後は、短時間のアルバイトをしながら勉強に専念しました。新しい環境に変わったタイミングで商法(会社法)・商業登記法一体講義の視聴を始めたのですが、これが壁になりました。民法や不動産登記法は、何となくイメージ出来る部分がありましたが、会社法は正直全然理解できませんでした。条文も読みにくく、覚えることも多く、なのにうまく想像できない。仕事を辞めた直後の時期でもあったため、受験生活の中でも1、2を争う不安な時期だったと思います。ゆっくり学習して、しっかり一歩一歩進んでいこうという気持ちと、ただでさえ学習が遅れているのだからとにかく先に進もうという気持ちがせめぎあい、結果として、とりあえず講義を進めていく判断をしました。どちらが正しかったかは今なおわかりませんが、少なくともアウトプットがほぼ出来ず、インプット一辺倒になってしまったことは反省点だと思いました。
また、この年はお試し受験の年だったのですが、結局講義の視聴が全然進んでいないことを理由にお試し受験すらしないという、これまた反省すべきことをしてしまいました。お試し受験の重要性は2年目で後述したいと思います。
2年目 2021年7月~2022年試験まで
2年目開始時の状況は、主要4科目の講義視聴が完了し、マイナー科目に少しだけ手を付け始めた程度だったかと思います。講義を視聴しきれていないという焦りから、マイナー科目の講義視聴を開始してインプットを開始しました。この時もアウトプットをおざなりにしてしまっていました。アウトプットをしなければせっかく蓄えた知識もどんどん忘れてしまいます。資格試験において、知識の習得と忘却のサイクルは、誰もが必ず経験することです。とはいえ、やはり学習した内容を失念していることに直面すると、学習意欲も徐々に低下していきました。ただ、そこで立ち止まってしまえば、仕事を辞めてまで決意した覚悟を無視してしまうことになると思い、根気よく学習を進めていきました。
ようやく択一式の講義を視聴し終わった後、再度民法の講義から視聴し直すことにしました。2周目ということで、失念している内容が多いものの、視聴中に思い出せるものもあることに胸をなでおろしていました。2周目の学習では、講義内で指摘された参考過去問を必ず解く、関連条文を択一六法で調べる、市販の基本書で別の切り口からも調べてみるといったことを徹底していきました。本来は初めからやるべきことだったとは思いますが、このような学習を続けていくことで、徐々に各科目の全体像をつかみ始め、自分の得意分野と苦手分野が明確になり始めました(ただ、この頃には既に年が明けていました)。
しかし、ここで新たな問題が出てきました。記述式対策に手を付けられていなかったのです。択一式と記述式は相互に関連があるため、相互に学習すべきと聞いていたにもかかわらず、択一式が全然出来ていない状態で、記述式の学習に入ることに尻込みしてしまったのです。本来は当初のスケジュールに倣って、講義が配信された順に視聴すれば問題なかったのですが、私は前述のとおり未視聴の講義が溜まっていたため、とにかく択一式の学習を先に、という考えになってしまっていました。大きな反省点です。
試験まで数か月になったところで慌てて記述式のひな形を覚え始めましたが、当然間に合うはずもありません。ひな形を全然覚えていない状態で答練を解いても、という気持ちが先行してしまい、この年の答練は手付かずになってしまいました。これも反省点です。
この年の試験を迎えた際の状況としては、午前択一式の過去問はある程度回すことができましたが、午後択一式は間に合わず、記述式は不動産登記だけ少し勉強した、といった感じでした。1年目にお試し受験を受けていなかったことから、本年が初受験となりました。
午後択一式と商業登記の記述式対策が出来ていないことから、合格はもちろん、商業登記の記述式の解答も諦めた状態での試験になりました。結果、午前択一式はぎりぎり基準点を越えましたが、午後択一式で20点以上基準点を下回りました。
3年目 2022年7月~2023年試験まで
午前択一式の基準点を超えたことから、とりあえず択一式の対策はこの方針で問題ないと判断しました。よってこの年は記述式の学習を中心に進めることにしました。記述式の対策は、何はともあれひな形を覚えなくてはならないので、浅沼講師が講義を担当する書式ひな形マスターを活用していきました。1日5つ以上覚え、翌日に次の5つ+前日の内容をテスト、正解した問題は2日後に再テスト、それに正解すれば3日後に…といったように反復練習し、間違えた問題は翌日に再テストを行う形で練習していきました。
徐々に学習する内容が多くなり、ひな形の学習だけでも数時間かかる日が出てきて、択一式の学習時間が減ってしまいましたが、その甲斐もあって、基本のひな形のほとんどはすぐに思い出せるようになりました。少しずつ再テストの間隔が広がることで、択一式の学習や、記述式ハイパートレーニング等にも注力できるようになりました。ひな形を覚えてくると、記述式の勉強がとても楽しくなり、パズルを解いているような気持ちになってきました。この頃から記述式への苦手意識はなくなりました。
答練も、始めのうちは提出期限を意識しながら進めていくことができました。しかし後半になるにつれて問題演習で手一杯になり、提出期限を過ぎることが増えていきました。試験当日までには解ききったのですが、答練は忘れている知識や、過去問に出題されていない、本試験で狙われそうな問題も入っているため、提出期限内に解き、しっかりと復習することがとても大切だと意識しました。
この年の試験結果は、午前、午後択一式はどちらもギリギリ基準点越え、初めて記述式が採点されました。記述式は30.5点が基準点だったところ、44.0点。合格点が211点のところ、総合点で203点。択一式をあと3問正解出来ていれば合格出来ていたことがわかりました。
この年の良かった点としては、苦手にしていた商法・会社法、商業登記法と、マイナー科目である程度得点が確保できたこと、悪かった点は、それらの科目に注力しすぎて民法で大幅に失点したことでした。また時間配分についても、きちんと最後まで完答出来てはいたものの、商業登記の記述式の解答を終えたのが試験時間残り1分程度であったことを考えると、まだまだ記述式の問題文の状況判断に時間をかけすぎていることを自覚しました。
4年目 2023年7月~2024年試験まで
受講していた2022・23年合格目標合格ルート1.5年スタンダードコース安心保証プランが満了し、今後のことを考える時期になりました。とはいえ、成績も順調に上昇しており、ここで学習環境を変えるのも不安であったため、クレアールでの受講継続を決意しました。基準点は超えていたため、上級パーフェクトコースの受講を決定しました。講座内容が各科目の重点箇所に焦点を当てているため、1年目のようにインプットのみに手一杯になるようなこともなく、アウトプットの時間をしっかり確保することができました。
択一式の対策としては、確実に正誤判断可能な選択肢を増やすため、問題全体で解くのではなく、肢別に正解出来るか否かを注視して問題演習を進めていきました。記述式に関しては、この年から配点が大きく変わることになりましたが、特に方針を変えずに、記述式ハイパートレーニングを周回していきました。
また、この頃には択一式の過去問については概ね内容を覚えてきたこともあり、前年の答練や模試の問題の復習にも手を付けました。肢別に学習する都合上、問題用紙と解答用紙が別紙になっていると学習しにくいと感じたため、問題とその解答をすぐ確認できるように、自分なりの問題集を作成して活用しました。作成のための作業量が多く、学習時間を一部割くことになりましたが、個人的にはこれがとても役に立ちました。
演習時間の確保が出来るようになり、スケジュールに余裕が出てきたことから、例年の反省を生かし、模試や答練については徹底して提出期限を管理することにしました。届いたら1週間以内を目安に提出するよう意識していきました。解いた答練の問題については、引き続き自分用の問題集に編製し復習を徹底しました。
試験直前期の学習は特にやることを意識して進めました。択一式の場合、基本的に苦手問題を中心に、時折全体的に過去問や答練の問題を演習する、記述式は、毎日答練で出題された問題を1日2題(不動産登記、商業登記1題ずつ)解くことにしました。記述式の枠ずれ等の大きなミスがあった場合は、試験会場に持っていけるように書き留めていきました。
そして試験当日、不動産登記の記述式で思いのほか問題文の状況整理に時間がかかってしまったものの、直前期に解いた答練と同じような内容も出てきたため、遅れを取り戻すことができました(とはいえ結局、記述式を解き終わった際の残りの試験時間は5分程度しかありませんでしたが)。
結果的には、午前択一式96点、午後択一式84点、記述式115点で無事に筆記試験を通過することができました。
受験生活の反省点について
今回この合格体験記を書き連ねることで明確になった、自分の反省点として挙げられることとしては、「初期のインプットとアウトプットのバランスが悪いこと」、「初期の学習で、クレアールが予定してくれていたスケジュールから逸脱したこと」、「学習が進んでいないことを理由に、模試や答練に消極的であったこと」、「お試し受験をしなかったこと」だと思います。
インプットとアウトプットのバランスをうまく整えれば、より効率よく学習でき、また計画通りに学習を進めることができれば、より反復練習を行う余裕が生まれ、そして模試や答練に積極的になることで時間配分や解答の練習をしつつ、過去問以上に幅広い知識を習得することができ、更にはお試し受験で実際の時間配分と必要な解答スピードを体感することで、自分の現在地を確認できます。これらは特に重要だと思います。
モチベーションの維持について
私は計4年間を学習に費やしましたが、モチベーションの維持は受験生共通の課題になってくるかと思います。私の場合、2年目の後半から3年目前半は特に気が緩んでしまい、他にも時折モチベーションが下がってしまい、自宅で学習ができない時期が多々ありました。そういった時には、近くのカフェを回りながら学習したり、図書館まで足を運んでみたりと、とにかく環境を変えることを意識しました。外に出ることで身の回りの誘惑を強制的に断ち切り、集中して勉強に取り組むことができます。
後進のクレアール司法書士講座受講生へのメッセージ
司法書士試験は、全受験者の中で上位4パーセント前後に入る必要がある相対的な試験です。他の受験者の動向や出来が自身の合格にも影響を及ぼすことになりますが、あまり周りを気にする必要はないと思っています。極論、満点を取れば絶対に受かる、と言うと流石に言い過ぎですが、自身がしっかり得点を伸ばすことができれば、合格を手にすることができる試験だからです。これから試験に挑戦する方は、あくまで自分自身との闘いであることを念頭に置いて、一歩ずつ確実に前進してください。