嶋田 隼人さん
なぜ司法書士を志したか
大学を卒業して地方公務員として22年間勤務し、その間、固定資産税や空き家対策、所有者不明土地対策など不動産にまつわる職務を長く担当してきた。仕事上、自分が所有している、または相続することになった不動産に関する悩みを抱えた市民の相談を受けることが多くあったが、基本的に公務員である自分が直接解決できることはなく、たいていは専門家、すなわち司法書士に相談するようご案内していた。逆に、司法書士の先生方から悩みを解決に導く現場の話を聞くこともあった。そんな経験を重ねるうちに、自分の中で司法書士という職業に対する憧れが大きくなっていった。
また、30代後半ごろから、サラリーマンという安定した生活よりも、自分の力で勝負ができる仕事がしたいと漠然と考えるようになっていた。一度きりの人生、誰かに指示されるのではなく自分の仕事は自分で決めるという働き方に魅力を感じていたことも、司法書士を目指す決心を後押しした。
クレアールを選んだ理由
まずは他社と比べて受講料が安価だったことが一番である。とは言え、決して“安かろう悪かろう”ではないことをクレアールが提唱する「非常識合格法」で知り、必要最小限の努力で合格を目指すスタンスに共感を覚えた。大手予備校を選択する受験生が多い中、あの時クレアールを選んだことが今年の司法書士試験合格という未来につながったと確信している。
クレアールで学習して良かった点
① 教材等に関して
とにかく択一六法が秀逸である。「クレアールを選ぶ人は、すなわち択一六法を選ぶ人である」と断言できる。
択一六法は条文ごとに解説や判例などが掲載されており、過去問の条文知識問題について出題の意図を理解しながら学習できる。条文を丸暗記する学習ではないため、切り口を変えた問題や初見の論点にも対応できる力がつく。私の知る限り、世に出回っているテキストの多くは、最初に解説があり、付随して根拠となる条文を掲載する形をとっているが、なるほど、これは理解するのが難しい条文を分かりやすくインプットするための工夫なのだと思う。
ただ、司法書士試験の問題は、条文そのものが命といっても過言ではない。条文をどれだけ正しく理解しているか、条文に関連する知識をどれだけ身につけているかで答えに辿り着けるかが決まる(と自分は考えている)。条文を突き詰める学習方法は、合格というゴールに到達するための最短ルートだと思う。クレアールは、初学者向け講座は基本テキストで全体を理解し、それに続く2年目の中上級講座は択一六法で条文中心に学習する構成であり、その意味では「(非常識ではない)常識的合格法」だと思う。
② 講義等について
講師の教え方はそれぞれ好みが分かれると思うが、私にはクレアールの講師陣の解説に非常に好感が持てた。
特に中上級講座のインプット講義すべてを担当された古川先生の、択一六法のすべての条文を完璧な法令知識に基づいて解説される講義は、自分もこんな風に法律を語れるようになりたいと思わせるものでありつつ、たまに入るエピソードトークに自分で笑っちゃう姿がツボだった。
いつの間にか先生の「こんにちは」から始まる講義にiPad越しに「こんにちは」と返すのがルーティンになっていたが、たまにそれを目撃した家族に気持ち悪がられた。
③ 答練・模試等について
クレアールから提供される答練や模試は、すべて指定された期限までに答案を提出できるようにした。通学型の予備校と違い、自分で講義の進捗を管理しなければならないのが通信講座特有の厳しさだが、これをクリアするために答練を勉強のペースメーカーにして、いつまでにどの講義の視聴を終わらせるという目標を自分に課した。
答練の得点目標を8割に設定し、そのためには講義と過去問学習をどれだけ重ねる必要があるかを全科目で計算して取り組んだことが、科目数の多い司法書士試験の勉強を着実に進める秘訣だったように思う。
また、自宅や図書館で模試を受験する際は、試験本番と同じ時間に実施するようにした。できるだけ本番と環境を合わせることで、本番の緊張感を味わおうと考えてのことだが、やはり自宅での模試だけでは限界があるので大手予備校の会場受験の模試も活用した。
受講した答練や模試は、クレアールから解答が送付されてきたその日に復習をした。正解不正解にかかわらず、確信をもって解答できなかった肢すべての論点を択一六法で確認し、周辺知識と合わせて学習することで、知識の幅を広げることを意識した。
CROSS STUDYという救世主
結論から言えば、令和6年度司法書士試験合格に向けて導入されたCROSS STUDYは、私にとって合格の救世主となった。
司法書士試験は、過去問対策が試験勉強のど真ん中に位置することは明白で、これをいかに効率よくいかに回数を重ねられるか、苦手とする論点を見つけてどれだけ集中して取り組めるかが合否を決することに異論はないだろう。
その点、昨年まで自分がやっていた紙の過去問学習は効率が悪いと感じていた。1問の中にある5肢すべてをまとめて検討するため、どの論点が弱点なのかを可視化することが難しく、苦手な論点に特化した勉強ができないからである。
ところが、CROSS STUDYの登場によってこの課題はすべて解決した。最初から論点ごとに問題が整理されているため、問題単位ではなく論点単位で過去問学習ができるようになった。
任意で5つまで星マークを付ける重要度設定機能を使って間違えるたびに星マークを増やしていき、弱点の見える化もできた。自分は活用しなかったが、問題(肢)ごとに任意のワードを登録できるユーザータグ機能も使い方次第で勉強効率を上げるのに役立つと思う。
何よりiPadとWiFi環境さえあればどこでも過去問学習ができるようになったのが良かった。結果、CROSS STUDYを使い始めてからは紙の過去問題集は一度も使うことがなかった。
直前期は全科目の過去問を8回転(苦手論点はそれ以上)やったことが合格につながったと感じているが、それもこれもすべてCROSS STUDYのおかげである。
過去問と弱点ノート
過去問に取り組んでいると、1回目は間違えなかった問題に2回目や3回目で間違えることがある。頭の中で出てきたり出てこなかったりする論点は、自分の中で記憶しきれていない知識であり、これは繰り返し目に触れさせて定着させるしかないと考えた。
そこで、科目ごとに「弱点ノート」を作り、間違えた問題の論点をA5二つ折りの小さなノートに鉛筆で書き込んでいった。これをコピーしたものをホッチキスでとめて、常に持ち歩いて復習した。
鉛筆で書いたのは、知識が正確ではない学習初期などに書いた内容が間違っていることがよくあって、それを後で修正するためである。また、コピーしたものを使ったのは文字が消えずボールペンで追記もでき、ボロボロになったらまたコピーし直して使えるからだ。
よく間違える論点は何度も弱点ノートに登場し、そのたびに自己嫌悪になりつつも弱点を自覚する装置となった。小さなノートゆえに携行しやすく、食事中や移動中、図書館開館前の席取りのために並ぶ時間などありとあらゆる隙間時間を弱点ノートの復習時間に充てた。毎日自宅から図書館まで徒歩で通う往復30分間、リュックを背負って弱点ノートを読みながらとぼとぼ歩く自分の姿に「二宮金次郎みたいで良いじゃないか」なんて思えたのは、孤独な受験生の貴重な自己満足の時間だったと思う。
苦手科目の克服方法
私は、とにかく会社法と商業登記法が苦手だった。民間企業の経験がないというのもあり、実体としてイメージが持てず、これは覚えるしかないと割り切ろうとしても理屈で覚えたい性分な自分にはなかなか定着しなかった。
そこで、網羅的に勉強するのではなく、論点ごとに細分化して過去問と択一六法を行ったり来たりして焦らず一つずつ覚えていくことにしたのだが、ここでもCROSS STUDYが非常に役に立った。直前期は特にこの2科目の過去問を回しまくり、解けない過去問はないくらいの状態にした。
また、組織再編など択一六法の解説が難しいと感じていた分野で、クレアールの総合情報マガジンサイトであるPaletteの司法書士コラムの記事で知識横断整理の解説があったのも参考になった。
今年の問題がやや簡単だったとはいえ、本試験でこの2科目ともに満点が取れたのは大きかった。
記述式対策はクレアール+αが必要か
クレアールの記述式対策は、学習未経験者が勉強をスムーズに進めることができる構成になっていると思う。最終的には本試験で出題された問題を再編成した記述式ハイパートレーニングで過去問レベルの力をつけることができる。
ただ、本試験では過去問と同じ問題が出るはずはなく、また未出論点の対策という点でもクレアールの記述式対策教材だけでは不足していると感じ、本試験1カ月前に市販の記述式問題集の応用編を購入した。
クレアールの教材で基本はしっかり身につけることができるが、今年から記述式の配点が2倍となったこともありより十分な対策をとりたいと考えた。クレアールの教材以外に浮気をしたのは択一式・記述式含めてこの1冊のみだったが、個人的には来年以降のクレアールの記述式対策がもっと充実されれば良いと思っている。
本試験の午後の部で書き切るために
本試験、特に午後の部の試験は、本当に時間との勝負である。そのため、私は答練と模試で時間管理を体に覚えさせる対策をした。
時間配分は択一式と記述式2問を各1時間とし、正答を導くことと同じくらい時間を守ることを意識した。択一式・記述式の解く順番は自分の好みや問題を見て決めるのも悪くないと思うが、時間管理はあらかじめ練習しておかないと、ただでさえ緊張感マックスの本番でできるはずがない。また、誰かに教えてもらってできるようになる類のものでもなく、書くスピードを含めて自分でペースをつかむしかない。
記述式の配点が倍増した以上、時間内にしっかり最後まで書き切れるかどうかは確実に合否を左右する。若干のパニックがありながらも今年の本試験で終了2秒前にすべて書き切れたのは、この対策の賜物だった。
私の個人的な感覚としては、時間管理がうまくいくだけで試験の半分、いや8割は成功と言えると考えている。
口述試験に至る後悔
7月の試験を終えて真っ白に燃え尽きた私は、しばらく勉強をしない日々を送った。不合格だった場合のことを考えて勉強しなければと思いつつ、8月の択一式の基準点発表で目標としていた上乗せ点が取れたことがわかるとますます勉強モードになれず、10月の筆記試験合格発表まで一切勉強をせずに過ごしたのだが、これが大失敗だった。クレアールから送られてきた口述試験対策の教材(司法書士口述試験過去問題集)を見て、ことごとく記憶が消えてしまっていることに驚愕した。特に苦手だった会社法・商業登記法は惨憺たるもので、勉強をストップしていたことを後悔した。何よりせっかく身につけた知識が消えてしまったことが無念だった。なんとか口述試験当日を乗り切れたものの、少しでもいいから勉強は続けるべきだったと反省している。
資格取得に向けた決意~受講生へのエール~
私は2021年の夏から本格的に司法書士試験の勉強を始めた。平日3時間、休日6時間、月100時間を目標としていたが、これがなかなか達成できず、合格した姿を思い浮かべられずにいた。また、たまに達成できたときは、すなわち家族や友人との時間を犠牲にしていることに他ならず、果たしてこれが自分が選ぶべき人生の歩み方なのかと自問自答を繰り返す日々が続いた。
あるとき、自分は本当に本気で司法書士になりたいのかと、立ち止まって考えてみた。結論はイエス。ならば、いつか辞めると決めている仕事を今辞めて、勉強に専念しようと決心し、家族に人生設計をプレゼンした上で了解を取りつけ、2023年5月に退職、背水の陣を引いた。
その年の本試験はとても合格水準の勉強はできておらず、択一式の基準点未達で不合格。ただ、この試験は合格できない試験ではないという手応えを得ることもできた。せっかく民法を勉強しているからと小休止を兼ねて宅建士の資格を取り、10月からは司法書士事務所で補助者として実務を経験しつつ(勉強は月150時間目標)、4月からの直前期は事務所の後押しもあって再び専業受験生となった。
欠かすことのなかった晩酌を止め、家族以外との交流を完全に絶ち、最低1日10時間の勉強ノルマを課した。無職の自分に向けられる近所の目と、妻に扶養されているという危機感も相まって、人生で一番勉強した3カ月を送ったおかげで、目標より1年早く合格することができた。
人には様々な事情があり、合格に向けて辿る道は何通りもある。上記の私が取った選択はその一例にすぎないが、要は、合格をつかむ覚悟をどれだけ強く持つか、覚悟を決めたらいかに実行するか、これが合格するか否かを決めるカギだと思う。
勉強を始めた当初、司法書士試験は勉強すれば誰でも合格できる試験だという話に半信半疑だった私だが、今は身をもって間違いないと断言できる。ただし、強い覚悟と実行力が必要だと付け加えて。
皆様の健闘を祈っている。