Y.Hさん
司法書士を目指したきっかけ
私は、長年勤めてきた職場を66歳10か月で退職し、その後は、家事などで家庭に貢献できるよう頑張ろうと考えていました。しかし、実際に、料理、掃除、孫(他県在住の長女、次女の子供)の世話などを行うと、それらがいかに大変な仕事であるかということに改めて気づき、甘い考えであったことを反省しました。
本来であれば一層努力すべきですが、数か月しても一向にスキル向上が見込めず、自分の性格から何か社会の役に立てる仕事に従事した方が良いのではないかと思い始めました(妻も賛成)。
そんなとき、叔父の死亡に伴う相続放棄の手続を行う中で、叔父の妻の成年後見人を務めていた司法書士との接点があり、このような仕事があるのなら、私もまだ社会貢献ができそうだと、資格試験に挑戦することにしたのです。
なお、現在70歳の高齢者ですが、試験合格前提で大手司法書士法人の内定をいただき、司法書士を目指して良かったと思っているところです(2024年10月下旬に原稿執筆)。
予備校選びのポイント
当時は新型コロナの渦中であり、WEB専門の予備校の中で価格がある程度リーズナブルな予備校を3社ほど選び、その中で、「質問ができる」、「教材が充実(特に、択一六法、択一式の過去問題集など)」という観点から、クレアールを選択しました。その選択は、後から振り返ってもよかったと思っていますが、後述する理由により、合格まで3年を要してしまいました。
クレアールで学習してよかった点
私は、この3年間クレアールにお世話になり、その結果、合格できました。各場面で、クレアールの教材との関わりが異なりますので、以下、年度ごとに簡記します(なお、筆記試験合格後、クレアールから口述試験対策の手厚いご支援をいただき、安心して口述試験に臨めました)。
1年目
午前93(+12)、午後72(-3)、と午後択一式の基準点未達で不合格
※カッコ内は基準点との差(以下同じ)
⇒ 振り返れば、講義は一通り学習したものの、私の学習方針が問題で、興味のある民法などに偏った学習をしていたことに加え、学習時間も1800時間程度と絶対量が不足していました。
2年目
午前90(+12)、午後99(+24)、と択一式は基準点をクリアしたが、記述式が基準点未達(時間不足による)
⇒ 試験時間が長ければ合格点に達することが可能なレベルまで到達(記述式の代表的な引っ掛けも一通りは習得)しましたが、確実な知識の不足、解答時間短縮テクニックの不足などにより、記述式の時間が不足し(午後択一式で90分使用)、不合格となりました。
なお、この段階では、クレアールの1000本ノックWebテスト(現:CROSS STUDY)、答練などにより、相当程度まで実力を高めることができましたが、短時間で解答する(特に記述式)という観点での学習ができていませんでした。
3年目
午前102(+24)、午後96(+21)、記述92(+9)
記述式不動産登記が時間不足で半分程度の分量しか解答できませんでしたが、商業登記がほぼ満点だったこともあり、何とか合格できました(午後の部の時間配分⇒択一式70分、商業登記75分、不動産登記35分)。
⇒ 2年目の反省を踏まえ、学習方法を変更し、確実な知識の養成、解答時間短縮テクニックを意識した学習に重点を置きました。
振り返れば、ちょうどいいタイミングでクレアールにCROSS STUDYが導入され、それを徹底的に活用することにより、択一式の知識が整理され、択一式だけでなく、結果的には記述式についてもスピードアップが図られました。
また、記述式については、改めて合格書式マニュアル対応問題集を徹底的に繰り返すことにより、不動産登記の目的・原因、商業登記の登記事項・添付書類などの記載について解答に迷うことがほとんどなくなり、時間短縮に大いに貢献しました。
CROSS STUDYを中心とした学習の進め方
CROSS STUDYは、私の学習の中で3年目から導入された学習機能(択一式過去問の1肢ごとのWEB上の学習機能)です。それには、「重要度」、「ユーザータグ」、「キーワード検索」といった機能があり、これを効果的に使いました。これにより、択一式の(結果的に記述式も)知識の確実性が相当程度上昇しました。
① 重要度(★印)の活用
まず、重要度ですが、★1~5までの塗りつぶしで重要度を分類でき、私は、[★1]正解(確実に解答でき、復習の必要なし)、[★2]確実に解答できるが復習すべき、[★3]迷ったが正解、[★4]不正解、[★5]不正解後に正解、と重要度のルールを決めました。
最初に全問問題演習を行い、その後は、★3以上を一度、更にその後は★4以上と問題演習を進めました。そして、時々は★2及び★3だけを行うなどもしながら学習を進めました。★4以上は問題数がかなり絞られるので、私の場合は、記述式の学習と並行で行いながら、月に2周(ほぼ毎日50問以上)程度できるようになり、★4以上は合計10回程度行いました(ミスした問題は翌日に再確認を行ったがカウントせず)。これらにより、確実な知識の養成ができました。
② 解答・解説の図表の活用
CROSS STUDYの解答・解説には、類似ケースごとに解答が異なるなどの問題について、ケースごとの比較表(多くが択一六法に掲載されているものと同じもの)が引用されていることがあります。私は、それらを使い、「この場合はOKだったが、少し違うケースではダメだった」という頭の整理に役立てました。該当の図表をスクリーンショットし、ある程度たまったら印刷して繰り返し見るなどしていました。
なお、これだけでは不足だったので、独自に、民法の虚偽表示、心裡留保、錯誤、詐欺、強迫の比較表、会社法の各種組織再編の比較表(特に、債権者保護手続の要否、株主の株式買取請求権の有無)なども作成し、頭の整理を行いました。
③ キーワード検索の活用
CROSS STUDYには、キーワードにより問題(肢)を検索できる機能があり、これにより問題の比較をして学習できます。前記②の図表により類似ケースの比較ができますが、それでも、断片的な記憶により、「この問題の解答はこうだが、似たケースで異なる解答があったはず。それがどこにあるか分からない。」というようなことがあります。そのときには、キーワードにより類似問題を検索して比較することにより、断片的な記憶を再確認して頭の整理をしました。
④質問による頭の整理
クレアールには、何度でも質問できるサービス(ただし、漠然とした質問は不可で、テキスト・教材の不明個所を特定して、その不明理由まで添える必要あり)が提供されています。
私は、前記②、③やテキストその他で調べても不明な箇所については、メールでの質問をかなり熱心に行いました(9月から3月までの間、概ね週1回くらいのペース)。
1、2年目には殆ど質問しなかったので、もっと早い段階から活用しておけばと反省しています(もっとも、ある程度のレベルにならないと質問しにくいですが…)。
⑤ユーザータグの活用
私は、ユーザータグに「〇年〇月前半」「★6個」などのタグをつけていました。
問題演習の解答後に見る年月タグで、最近行った問題であることが分かれば「要復習〇年〇月」とタグをつけ、復習に役立てました。
また、★5を再度間違えた場合、重要度は「★4」に変更しますが、タグで「★6」の表示を付け、「★6」タグを検索して絞り込まれた問題を復習することなども行いました。
3年目(弱点克服期間)の年間学習スケジュール
① 7~3月初旬までの時期
択一式
正確な知識、類似問題の違いの把握を目的に、過去問の知識を問題肢ごとに徹底的に繰り返すことを目標に置きました。ちょうど、CROSS STUDYの導入時期と重なり、CROSS STUDY中心の学習(★4以上の場合毎日50問以上、★3以下も入る場合毎日80問以上の目標を立てた)を行いました。
記述式
記述式ハイパートレーニングを商業登記、不動産登記について毎週1問ずつ以上のペースで実施。その結果、3月初旬までにほぼ一巡(不動産登記は週2~3問やることもあり、商業登記は飛ばすこともあり)しました。
それに加えて、合格書式マニュアル対応問題集を不動産登記について毎日5問以上、商業登記について毎日2問以上を目標に繰り返しました。2回目以降は、ミスが出た問題(小さなミスが出たものでも)について、同じ問題を繰り返しました。その結果、ミスが多い問題は、10回以上実施し、ほぼノーミスで、迷いなく基礎事項を記載できるレベルにまで到達しました。
② 3月中旬以降試験までの時期
3月中旬以降は、実力診断模擬試験、実力完成総合答練、全国公開模擬試験、更に独自の本番練習(本試験の過去問による独自模試)により、本番に慣れる練習を強化しました。
模試(2回)、答練(8回(注:現在は6回)のうち4回)、独自本番練習(2回)
私は、本番となるべく同じ環境で模試等を実施することにより、時間短縮、場慣れ、などの力を徐々に高めていこうと考え、近くの図書館(机スペースも本試験とほぼ同じ)で、同じ時間帯(昼食時間などもほぼ同じ)に毎月2回のペースで模擬試験を実施しました(⇒答練は、午後の部の択一式がある回に、前年答練の午前の部の択一式を加えて実施。独自本番練習は、本試験前年分・一昨年分を実施)。
これにより、本番の際の午後択一式は、予定通り70分で行うことができました。ただし、本番の記述式は、商業登記から行った結果、思いのほか解答が順調に書け、気がつくとほぼ全部(ほぼ満点)記載できましたが、予定を20分も超過し、不動産登記にしわ寄せがいきました。
択一式
CROSS STUDYは、この時期には8日に一度の確認テストだけにし、もっぱら紙の過去問題集(5肢択一)で演習を行いました。分量的には、1日目民法20問(1年度分)、2日目不動産登記法16問(1年度分)、3日目商法・商業登記法17問(1年度分)、4日目民事訴訟法等21問(3年度分)(又は憲法など18問(6年度分))のサイクルで概ね過去15年分を実施しました。それを繰り返し、2巡目からは、間違えた問題、疑問があった問題だけに絞り込み、毎日10問ずつくらいのペース(科目ごと)で繰り返しました(答練等の日は除く)。
この結果、午後の部は2肢で解答を出すといった時間短縮のテクニックや、不明点がある場合の解答テクニックなども一定程度習得できました。
記述式
この段階からは、もっぱら実戦形式にしていくことに特化した学習に変更しました。毎日、記述式ハイパートレーニングで過去にミスをした問題を、不動産登記・商業登記各1問ずつ以上を目標に実施しました(答練等の日は除く)。
これらにより、問題文(特に不動産の登記事項証明書や会社の登記記録)の読み飛ばしをしない習慣、答案構成用紙へのメモ記入テクニックなどを一定レベル向上させました。
モチベーションの維持方法
学習が3年目に入ると、もう受験はやめようかという気になるときがありました。特に、以前よりも力が落ちたのではないかと不安になるときにそれを強く感じました。
私は、もう受験をやめようかと思うときには、過去の模試・答練の成績などと現状を比較し、長い目で見れば着実に成績が向上しているということを確認しながら、モチベーションを維持してきました。
見るのが嫌になるかもしれませんが、過去の司法書士試験の結果、模試、答練の成績は残しておき、学力が着実に伸びていることを確認する(成績が低下している場合はその原因を自分なりに考える)ことは、モチベーション維持に有効です。
地道にコツコツ学習していけば、必ず合格は見えてきます。
一日中学習に使える時間がある一方で(とはいっても家事を一定程度行っていますが)、高齢者というハンディもある者の学習方法で、皆さんとは異なる面もあると思いますが、ご参考になれば幸いです。