辰野 温仁さん
はじめに
自己紹介
地方の中堅国立大学に通い、法律、経済など広く学ぶ学科に所属しておりました。大学2年次に行政書士試験、3年次に宅地建物取引士試験に合格し、4年次に司法書士試験に2回目の受験で合格できました。
受験を決意したきっかけ
司法書士を目指す理由
私は、先行きが不透明な現代において生き残るためにはどうすればよいかを考えていました。その結果、資格を取得して専門的なスキルを身につけることが生き残る手段であると気づきました。
資格を探している中で、司法書士や行政書士の資格を見つけました。いわゆる業務独占資格には、公認会計士や税理士、社会保険労務士などもありますが、それぞれの資格の業務を調べていく中で、企業法務や相続業務に興味を持ち、また自分自身、計算は苦手という自覚もあったため、司法書士と行政書士を目指しました。
予備校について
予備校選びのポイント
受験勉強をする際、独学か予備校を使用するかは人によって分かれる所だと思います。科目数の多い司法書士試験を独学でやろうとすると、多くある市販教材の中から自分に合うものを探さなければなりません。また、法改正についても自分で調べなければならず、かなりの労力を要します。自分は、文字を目で追うだけの独学では頭に入らないと思い予備校を使うことにしました。
予備校にも通学と通信という選択肢があります。私は地方に住んでいるため、周りに通学できる予備校が無く、通信しか選択肢がありませんでした。予備校選びで特に重視していたことは、価格と教材の質でした。まだ学生であるため、高額な予備校には通うことができませんでした。とはいえ安価な予備校でも教材や講義が不十分であれば意味がありません。クレアールは基本テキスト、ひな形集(合格書式マニュアル)に加え、択一六法や答練、模試など価格に対して教材が充実していると感じたため、クレアールに決めました。
クレアールにして良かった点
クレアールの教材の特徴としては、基本テキストがコンパクトな所だと思います。本当に必要な部分を繰り返し学習するというコンセプトは、覚える量がとにかく多い司法書士試験において真価を発揮したと思います。あやふやな知識が多くあっても試験には何の役にも立ちません。繰り返しやすさは重要だと考えます。
私が講義動画で見たクレアールの講師の方は3人いらっしゃいますが、お三方とも違うタイプの講師で飽きずに講義を視聴することができました。
試験に合格できた要因の一つには答練や模試などで多くの演習ができたことが挙げられます。令和6年度の試験から記述式問題の配点が倍になり、より記述式の演習経験値がものを言う試験になったと思います。クレアールの答練でさまざまな問題を解いたため自信につながりました。
学習を進めていく上で
全体的な勉強期間の見通し
司法書士試験は言うまでもなく最難関試験の分類に入るでしょう。私は3~5年の受験勉強を覚悟していました。実際にはそれよりも短い期間で合格できましたが、出題された問題が違えばどうなっていたかわかりません。いずれにしろ長期間の勉強を覚悟した方が良いと思います。
学習を進めていく上でのポイント、心構え
法律の学習は慣れるまでに一定の時間を要します。司法書士試験においては、特に不動産登記法や商業登記法、民事訴訟法等は日常生活にあまり馴染みがない方が大半だと思います。また、試験で出題される民法や商法・会社法はかなり深い知識まで要求されるため、理解するのに苦労することでしょう。
心構えとして大事なのは「最初は分からなくて当然、難しくて当然」ということです。一回講義を聞いただけで理解できる人は滅多にいません。分からないから落ち込むのではなく、前向きに根気強く学習しましょう。いつか点と点が繋がり一気に理解できる時が来ます。
合格率5%の試験なのですから難しくて当然です。自分では受かるわけがないと思ってしまうこともあるでしょう。そんなふうに考えていた時期が私にもありましたから大丈夫です。
日々の勉強ルーティン
私は、決まった時間に勉強をするのではなく、やる気が出た時にしか勉強しないようにしていました。嫌々机に向かっても頭に入らず無駄な時間を過ごすと思ったからです。中々やる気が出なかった時は1日の勉強時間が30分だけなんて日もありました。
スケジュール管理のポイント
1日○時間やるというふうには決めておらず、「講義を○単元見る」「過去問を○問解く」というように最低限のノルマを決めていました。それさえ終わればその日の勉強を終わっていました。さらに余裕があれば、翌日のノルマにも手をつけていました。量と質をどのような割合で重視するかが大事なポイントです。私は長時間の勉強はできないタイプだったので、質を意識しました。その時間で確実に覚えきるという意識で取り組んでいました。
学生の方で、大学の授業や課題との両立に悩まれる方がいるかもしれません。私が合格した年は大学4年次だったため、授業がなく、試験勉強に集中できましたが、1回目の受験の時(大学3年次)が大変でした。司法書士試験は7月に実施されますが、大学においても中間試験や中間課題の時期でもあります。私は、司法書士試験のノルマを優先し、それが終わってから大学の課題や試験勉強に取り組んでいました。23時半ぐらいまでノルマをこなし、そこから大学の課題に取り組むという日が続きました。学生の方は、合格したい年を決めたら、その年度に授業数を減らしても卒業できるように戦略を立てる必要があります。
モチベーションの維持方法
1年に1回の試験ですからモチベーションの維持は難しいと思います。受験生である期間はつい勉強以外のことを蔑ろにしがちですが、勉強生活にもメリハリをつけることが大事だと思います。睡眠、食事、運動を疎かにせず、自分の趣味の時間もしっかり取ることがモチベーションの維持につながったと思います。
それでも勉強が嫌になる時期が来るかと思います。その時は、ノルマを少なめにしたり、思い切って勉強をしない日を設け、全力で自分を甘やかしました。何日か繰り返すと、再びやる気と焦りが湧き上がってきます。
受験生期間に挫折を感じたことはありませんでした。「難しくて当然」というマインドのおかげで、そこまで落ち込むことなく勉強を続けることができました。
学習方法とコツ
効果的な学習方法
まず試験勉強全体に言えるのは、勉強した内容を忘れない工夫をすることが大切です。記憶定着に良い勉強法などはネットでいくらでも出てくるので調べてみましょう。
私は、アクティブ・リコールを行っていました。「思い出す」という行為により記憶の定着を図るのです。湯船に浸かっている時間、電車に乗っている時間など、思考がフリーになる時は勉強内容を思い出すようにしていました。私は、自分が予備校講師になったつもりで自分に解説をするということを行なっていました。
また、問題演習をしている時でも、問題では直接聞かれていなくとも似ている論点や今後問われそうな論点については演習から離れて確認する時間をとっていました。インプットよりもアウトプットに時間を使いましょう。
択一式の学習方法
択一式の学習方法についてですが、特段科目ごとに勉強方法を変えてはおりません。過去問を解いて分からない部分はテキストに戻ることをしていました。また、間違えた問題や試験本番で自分が混同しそうな知識は自分なりにまとめを作っていました。手書きのノートでも良いですが、私はパソコンでWordにまとめて印刷していました。模試や答練でも同じようにまとめを作っていました。
直前期になると、自分で作った大量のまとめが蓄積されていました。そのまとめられたものこそ自分の弱点が詰め込まれている最強の教材なので、そのまとめを繰り返し読んでいました。過去問をただ繰り返すよりも、時間が短縮でき、効率的に弱点の強化ができました。結果的に過去問演習や模試は2周し、自作のまとめ集を5、6周しました。
記述式の学習方法
記述式の対策については、とにかく問題を解くのが良いと思います。私自身、解いたことがないパターンの出題は書けないと考えていため、とにかく多くの出題パターンに触れることを意識していました。クレアールの教材だけでなく、市販の記述式の教材も使用しました。
模試や過去問の活用法
模試の効果的な使い方
直前期になると、模試が始まります。私はクレアールに加え、他社の予備校の模試、市販の模試を受け、合計で本試験10回分の問題を解きました。模試は本試験の予想問題としての意味合いもあるため、多く解いて損はありません。問題を解いて復習し、まとめを作ることを繰り返していました。模試は本試験を想定して作られているため、1、2問はいわゆる捨て問もありますが、深追いしないことが大切です。それよりも、できなかった問題を徹底的に復習し、二度と間違えないようにする意識が大切です。
過去問を解くタイミングと方法
過去問はいつから解くべきか悩むところかと思いますが、私としては、インプット講義と同時にやっていくことをお勧めします。講義を聴いた後、すぐに解いてテキストに戻れば、本番での問われ方も分かります。間違えた問題や理解が足りていないと感じた論点は、まとめていました。
最初は解けないと思いますが、気にしなくて良いです。試験当日に問題が解ければ良いのですから。
本試験当日の心構えと実際
試験当日の流れと注意点
試験会場には何が何でも辿り着けるように準備をしておきましょう。会場の下見や、試験前日に移動する場合はホテルの予約、交通ルートの確認をしっかり行いましょう。
試験は7月に実施されます。暑さ対策もしっかり行いましょう。試験会場に行くまでに体力を削られないようにすることが大切です。私は、4月から外を散歩したり、あまり冷房を使わないようにしたりするなど、暑熱順化(暑さに慣れること)を意識していました。
また、会場内の温度に対応できるように上着を持っていきました。昼食は、血糖値が上がって眠くならないように糖分優先で量は少なめにしていました。試験中にトイレに行くことも時間のロスになるので、カフェインを取らないようにし、スポーツドリンクを飲んで脱水対策をしていました。
試験のタイムマネジメント
本試験の午後の部は時間との勝負です。とにかく解ききらないことには合格はありません。私は、択一式→不動産登記記述式→商業登記記述式というオーソドックスな順番で解きました。試験開始直後は、予想論点が出題されているか確認するため、商業登記記述式の問題だけ先に見ました。予想通りの論点が出題されていたため、登記できない事項を確定するまでの問題の整理のみを行い、択一式から解きました。択一式は、速く読んで速く思い出すことが大切です。逆に思い出せない問題は、長考せずに次の問題に進みました。時間は厳しかったですが、記述式の答案用紙は全て埋め、択一式の見直し、マークミスの確認もできました。
合格後の展望とこれから
合格後の進路選択(司法書士としてのキャリア、他資格への挑戦)
私は新卒採用で士業グループ内にある行政書士事務所に内定を頂きました。グループ内に司法書士事務所もあるため、司法書士と行政書士の実務経験を積んでいきたいです。また、空き家対策にも興味があるため、土地家屋調査士の勉強もしたいと思っています。
実務に向けた準備と今後の計画
今後は司法書士登録に必要な研修、認定考査のための特別研修など、もうしばらく勉強の日々が続きますが、頑張っていきたいと思います。
後進の受験生へのメッセージ
令和6年度司法書士試験に合格することができた一番の秘訣
司法書士試験合格に必要なのはポジティブなことだと思います。勉強をしていると、分からない問題に出会ったり、何度も同じ問題を間違えることがあると思います。その事象を、「自分はダメなやつだ」と捉えるか、「自分の弱点を発見できた、ラッキー」と捉えるか。どちらが試験勉強を楽しめるでしょうか。わざわざ自分の大切な人生の時間を試験勉強に費やすと決めたわけですから、せっかくなら楽しんでやりましょう。