「択一六法の読み込みと午後の部の解く順番の工夫で掴んだ司法書士試験合格」佐藤 桂子さん

佐藤 桂子さん

目次

1.司法書士を目指した理由

私は前職では大手システム会社でネットワークエンジニアをしておりました。結婚後、家庭の事情で仕事を続けることが困難になり、退職しました。その後は父親の療養看護と家事に専念しました。その間に自分自身も命に関わるものではありませんでしたが、身体を壊してしまい、2度手術を経験しました。2度目の手術が終わった4年前に、「さあ、これからもう一度仕事をするにあたって何ができるだろう?」と真剣に考えました。IT系の職業は技術も日進月歩で会社を離れて10年近く経過していること、残念ながら特に女性は一度会社を離職して年齢を重ねるとなかなか元通りに復職することができないという社会的な問題、会社勤めは安定しているけれどもいくら大きな会社でもあくまでも会社の看板であり、辞めてしまえばただの人になってしまうことなどを考えて、これからは自分自身に揺るぎない看板をつけたいと思いました。

もう一つは個人的に離婚や相続、親の介護などで法的な問題をいくつか経験し、その事で弁護士に依頼するということもありました。そうした経験から、依頼する側の気持ちもよくわかるようになりました。これまでの自分自身の経験を最大限活かすことができる法律系の資格に興味を持ち、司法書士試験を目指しました。

2.なぜクレアールを選んだか

私は法律系の資格は何も持っておらず、全くの初学者でしたので何の予備知識もありませんでした。家事などもありましたので、通信教育で価格のバランスを考慮してクレアールを選びました。

3.クレアールで学習して良かった点

清水先生の講義はゆっくり丁寧で初学者の私にはわかりやすかったです。講義の後には〇×テストがあり、理解度を確認することもできました。 古川先生の講義は面白くて楽しみながら勉強することができました。

クレアールの教材では、何と言ってもやはり択一六法が一番活用できました。合格までの3年間で択一六法は2回通読し、特に民法は何度も読み返しました。会社法の条文は量が多く、構造的に凄くわかりにくいのですが、択一六法は横書きで見やすく、また各条文のポイントや必須論点が記載されており、比較の表も随所にまとめられているので助かりました。合格した3年目の直前期も憲法の勉強では択一六法を読み込みました。私には択一六法がテキスト代わりになっていたと思います。

答練と公開模試は未出の論点も盛り込まれていて難しい問題も多く、今年の直前期の演習に再度過去の2年分(平成28年と29年分)を解き直しました。

4.私の勉強方法と心構え

<1年目>

私は約3年前の平成27年4月からクレアールの初学者コースの受講を始めました。宅建、その他の法律資格も持っておらず、全くの法律初学者でしたので、初めて過去問を解いたときは独自の法律的な言い回しに馴染めず「これは日本語か?」と正直思いました。そのため学習の初期段階は、講義を聞いてから過去問を解いていたのですが、1問解くのに物凄く時間がかかりました。特に抵当権の分野の計算問題などは、1問解くのに30分かかってしまったくらいでした。 そのくらいのレベルの私でしたが、インプットとアウトプットを何回か繰り返すうちに理解が深まっていき、計算問題は逆に得意になりました。

1年目の成績は午前23問、午後択一19問でした。

1年目の1月から家庭の事情(実母の介護など)で殆ど勉強の時間が取れない状況になりました。5月には夫の父親が事故で亡くなり大変な状況になりました。夫の相続問題で弁護士の事務所に通う日々が始まりました。まさに1年目の直前期の出来事でした。遺言の検認、遺言執行者選任、遺留分減殺請求等、実際に相続法の頻出論点を目の当たりにして具体的なイメージができるようになりましたが、同時に当事者の計り知れない辛さや悲しさというものも知りました。そんな中、半年後の11月に私の最愛の母が亡くなりました。長く病気療養をしていましたのである程度覚悟はしていたものの、急激に容態が悪くなったのでやはりショックが大きく何も考えられないような状態になっていました。母の遺品を整理していて、日記に私の司法書士試験合格を祈る内容が書いてありました。勉強の邪魔をして申し訳ないと…。私も相続などの問題で家族関係が良くなかったこともあり、本当に精神的に参っていましたが、母のその日記を見て四十九日の法要が終わった1月半ば、私は気持ちを切り替えて勉強に打ち込むことにしました。その時は「多分勉強している間は悲しみを忘れられる」という思いが強かったと思います。

こうして約1年殆ど勉強できない期間がありましたが、その間も週に2日くらいは何とか勉強の時間も取れましたので安心保証プランに付いていた2年目の講義を聴くようにして択一六法の通読(特に民法と会社法)と過去問の学習をするようにしました。それが3年目の合格につながったと思っています。

<2年目>

2年目は年明けの1月半ばから勉強を再開しました。本試験までのこの半年が一番勉強した時期だと思います。勉強時間は1日8〜10時間で主に図書館の自習室と近所のカフェに行って勉強しました。自宅以外を勉強場所にしたのは、家に居ると家事や今する必要のない用事などについ逃げてしまうので、勉強しかすることがない場所に行くことにしました。そして敢えて騒がしいカフェを選んだのは、なるべくうるさい場所でも集中できるように訓練するためでした。そのお陰で本試験では隣の人の状況も全く気にならず、集中することができました。

私は記述が全く歯が立たない状態でしたので、他校の市販書籍と浅沼先生の記述式対策講義を3回繰り返しました。

浅沼先生のアドバイスで特に取り入れさせて頂いたのは午後の部の択一式と記述式を解く順番についてでした。具体的には「午後の部の科目は多くの受験生が択一式から解き始めるため、60分を過ぎた頃からバサバサと記述式に移る音が聞こえてきて気持ちが焦ってしまうこともあるので、記述式から解き始めるのも戦略の一つだ」とのことでした。私はまだ午後の択一式を解くのに80分程かかってしまっていて、周りの状況に振り回されてしまいそうでしたので、「比較的得意でとにかくどんどん書いてしまえ!」という商業登記の記述式から解き始めることにしました。これは私には良かったようで、今年の本試験でも取り入れました。また、2年目は他校の公開模試も受験して精一杯頑張りましたが、やはりマイナー科目まで手が回らず、絶対的な勉強量も足りませんでしたので、2年目の本試験の結果は午前26問、午後択一式24問、記述式38点でした。

択一式、記述式ともに基準点を超える事ができ、結果は総合点落ちでしたが、来年への手応えは感じました。

<3年目>

3年目は他校の中上級講座を受講しました。

基礎の学習はクレアールで終わっていたので苦手克服と弱点を埋めるような1年でした。直前期には夫が身体を壊して病院通いが始まったため、少し勉強時間が減ってしまい、勉強時間は平均で1日5時間くらいでした。

私自身の実感では、理解が不十分なうちに過去問を何回転してもあまり意味がないと思います。これは合格した今年にわかりました。過去問の日付を見ると1年目に何回もやっていた形跡がありますが、過去問を暗記するに留まってしまい、殆ど身に付いていなかったと思います。まずテキストと条文の読み込みなどインプットを徹底的に重視することが重要だと思います。3年目は過去問を直前期までやりませんでした。理解できた後に過去問を解いてみると過去問の見え方が全く違ってくるということに気が付きました。インプットをしっかりすることで、何を聞きたいのか出題の意図がわかるような感覚になってきて、自信と根拠を持って正解肢が判断できるようになりました。

それと午後の択一を解く時間に関してですが、知識が定着しないままに時間ばかり気にしても結局間違ってばかりになってしまいます。私の場合、2年目がそうでした。午後の科目は殆ど暗記ものですので、知識がしっかり定着してくると自ずと問題検討時間は速くなりました。今年の公開模試の時点では大体60分以内、遅くても65分で解き終えることができるようになりました。私は公開模試から本試験まで午後の部の科目の方が午前の部の科目よりも点数が良く、午後択一式は30問以上をキープできるようになっていました。そして、覚えきるということをすると時間は後からついてきます。自信を持って肢を切れるようになると全肢の検討は必要無くなり、多くても3肢くらいしか見なくて済みます。まずはテキストと条文をしっかり読んでインプットを徹底的に行い、知識を定着させてください。
私は今年の本試験では以下の順番と時間配分で解きました。

  • ① 商業登記記述(55分で切り上げる)
  • ②商業登記法択一(15分以内目標で14分)
  • ③民訴等〜司法書士法(15分以内目標で14分)
  • ④不動産登記法(35分ゆっくり時間をかけられました)
  • ⑤最後に不動産登記記述(55分)
  • ⑥7.8分余ったので商業登記記述を見直しして最後まで埋めました。

このように細かい科目毎に目標時間を定めて時間がかかりそうな問題は後回しにしました。
学習を始めた当初は「午後の択一を60分で解くなんて絶対無理!」と思っていましたが、必ずできるようになります。

5.科目別学習方法

私はまず午前の部の科目と午後の部の科目に分けてそれぞれ違った学習方法を取りました。
大きく分けて午前の部の科目は理解して考える問題中心で、午後の部の科目は暗記ものの力技だと思っています。

① 民法

民法は午前の部の柱となります。20問中18問は死守したいと考えました。民法は今年の本試験問題で顕著でしたが、条文の細かい所を突いてきます。民法は条文を読み込むことは不可欠だと思います。私は民法が苦手でしたので、本試験直前まで択一六法を何回も読み込みました。お陰で民法は19問正解できましたが、1問簡単なAランク問題でマークミス(正解肢がわかっていたのに解答番号をマークミス)をしてしまい、18問正解になってしまいました。

② 会社法

会社法は午前の部の2本目の柱です。私は学習開始当初、会社法が物凄く苦手で嫌いでしたが、1、2年目から択一六法を読んでいたので3年目には得意な科目になっていました。特に頻出論点の設立・株式・機関・持分会社・組織再編をテーマ毎に潰す感じで覚えていきました。民法、会社法で最後まで覚えきれない社外取締役の要件などの横断整理の表を自分で作成して机のマットに挟んだり、台所の壁に貼り付けたりして何回も見るようにしました。

③ 憲法

憲法も人権と統治に分けて考えました。統治は条文からの出題が多いので、条文の読み込みは必須です。人権は判例中心に出題されるので、どちらも択一六法を最後までしっかり読み込みました。

④ 刑法

刑法は財産犯の箇所を中心に、大体が過去問から出題されるので、過去問と答練を中心に学習しました。

⑤ 不動産登記法

午後の部の柱となる科目です。合格するには不動産登記法が鍵になると思います。私は2年目まで不動産登記法はイマイチ伸び悩んで苦手でした。苦手な方も多いかと思いますが、こちらもテーマ毎に潰す感じで学習しました。まずは申請情報・添付情報などの総論部分をしっかりと覚えこみました。次に難しい論点である区分建物、仮登記、事業用定期借地権などをテーマ毎に完璧にしていくように心掛けました。今年の公開模試の時期には不動産登記法は得意科目になって安定しており、得点源にすることができました。

⑥ 商業登記法

商業登記法はやはり会社法と密接にかかわっているので、会社法とリンクさせて覚えるようにしました。
取締役会設置会社か否かで役員選任の添付書面が変わるところが一番覚えにくかったのですが、こちらも自分で表を作成してデスクマットに貼り付けて何回も見るようにしました。

⑦民事訴訟法等

過去問を中心に勉強しました。特に民訴系は古い昭和の過去問からも出題される傾向があるので、昭和の問題も載っている過去問を買って一通りやりました。

⑧ 供託法・司法書士法

供託法も過去問中心に勉強しました。特に頻出論点である供託申請と払渡しの手続き、弁済供託、執行供託を中心に学習しました。司法書士法も同じく頻出論点である司法書士の業務と司法書士法人を中心に学習して、懲戒の箇所を直前に目を通すようにしました。
あまり時間をかけられない科目なので、よく出る論点に絞り込むことも大切だと思います。

⑨ 不動産登記記述式

私はあまり出ないような珍しい申請書のひな形を覚える必要はないと思います。それよりも必要なのは相続による所有権移転登記、抵当権や根抵当権の設定や移転登記、そして名変登記といった基本的な個所をしっかり時系列で整理して、何の登記を何番目に申請するのかという大枠をずらさないように心掛けました。

また、午後の部の試験が始まってすぐにいつも自分がうっかり見落としがちで注意しなければいけないチェックポイントを以下のように答案構成用紙に書き込みました。

  • 名変
  • 混同
  • 他人の権利
  • 一括申請
  • 共有者

(名変は無いか?きちんと処理できているか?混同は起こっていないか?他人の権利が設定されていないか?一括申請できる登記はないか?共有になっていないか?)と言った具合です。残念ながら今年の本試験は素直な問題で検討の必要がありませんでしたが、これまでの過去の出題から考えると検討が必須の項目だと思います。

⑩ 商業登記記述式

役員の就任退任をまずは完璧に処理できるように練習しました。任期や事業年度の変更は苦手でしたが、何度も練習すると慣れてきてすぐにわかるようになりました。答案構成の際に作成した表にマークを入れてみるとわかりやすくなります。

6.来年合格を目指す方へ

この試験はコツコツ積み上げていくと必ず合格できる試験だと思います。一つの科目だけを深堀りして追求して得意になっても他の科目ができなければ意味がないので、科目毎に勉強法を変えてバランスよく得点できるようにして頂きたいと思います。私は午後の部の科目を得点源にする方が以外と近道で安定して得点できるようになると思いますので、暗記で攻略できる科目はしっかり覚えこんでください。そして直前期は当日最高のコンディションで臨めるよう無理をせず健康管理をしっかりしてください。モチベーションと集中力をキープするために好きな音楽を聴きながら会場へ向かうのも良いと思います。私は今年の本試験はギリギリまでB”zの曲を聴いてテンションMAXにして臨みました。

日々の勉強の結果を最大限出せるように健康に気をつけて毎日1つずつ石を積み上げるようなイメージで頑張ってください。結果はきっとついてくると思います。

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