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「ノルマをこなす勉強ではなく、質を高める勉強が大切」 西浦 詩織さん

司法書士を目指した理由

建築士になりたいと思って入った大学でしたが、その熱も早々に冷めてしまった私は、没頭できる「何か」を見つけられずにいました。大学二年の時、とあるきっかけから司法書士という資格の存在を知り、その時はどんな仕事をするのかなど全く分かっていませんでしたが、とりあえず難関の国家試験かつ高収入が期待できる仕事ということで、単純に魅力を感じました。 

そして大学三年の冬、周りが就職活動に励む中、今ひとつ自分はその流れに乗る気になれずにいたところ、ふと司法書士試験のことを思い出した私は、「就職活動で慣れない面接をしたりすることを思えば、まだこっちの方が頑張れるような気がする」と思い、新卒で就職をするのではなく、司法書士を目指してみることに決めました。なので、スタートから強い決意や志があったというわけではありませんでした。

1~2年目の敗因を分析

私は合格までに3年と3カ月かかったわけですが、不合格だった2年の敗因は、おおよそ自
分の中で分析できています。

まず1年目。1年目は、上級者に追いつけ追い越せの意識も高かったので、勉強方法などまだまだ分からないことも多い中でしたが、その当時の自分なりに必死でやっていたように思います。ですが、テキストや『択一六法』への書き込みやマーカー引きなどをかなり雑に行っていたため、整理されておらず、どこが理解できていてどこが理解できていないのか分からない散乱状態になっていました。さらに、横断整理をしてルーズリーフにまとめたりはしたものの、きちんと整頓しておかなかったため、しょっちゅう無くしたりもしていました。

そんな1年目は、結果として総合点で2.5点足りなかったために落ちました。今思えば、ちっとも惜しくなどなかったと思うのに、それを無用に引きずって、2年目は、勉強をするやる気が起きないという悪循環に陥りました。それは直前期まで続き、2年目の本試験は十中八九落ちると分っていながら受けました。

3年目の学習方法

そして3年目。この時点で、私にとって司法書士になることは夢ではなく「使命」だと考えるようにしました。私は、これまでの失敗を徹底的に反省して挑むことにしました。
勉強の基本的な方向性として、「ノルマをこなす勉強」ではなく、「質を高める勉強」をすることに転換しました。釈然としないことは、理解するまでとにかく時間をかけました。そこでまず、散乱していた知識を整頓するため、2年目は受講せずにいた中上級者対象講座を全科目申し込み、知識を一から整理し直すことにしました。受講した講義は、重要な視点に気付かせてくれたり、自分の曖昧な解釈を補強してくれただけでなく、生活全体にリズムと喝を与えてくれました。自分の本気を強く後押ししてもらったと思います。

教材に関しては、新たに配布された『択一六法』に、それまで使っていた『択一六法』に書き込んでいた内容などを丁寧に書き写し、マーカーも分かりやすく色分けして綺麗に引きました。『択一六法』は1年目からよく活用していたのですが、新しい『択一六法』は情報量が増えたのに加え条文の目次や判例索引などがついていて、より一層充実した内容になっていました。

【民法、不動産登記法】

民法や不動産登記法は、過去問や過去の答練を解いてから『択一六法』で関連条文や判例を確認する、という作業を最後まで続けました。何度やっても忘れるところは、何度でもやりました。70問中20問を占める民法については、最後の方まで答練の点数があまり安定しなかったこともあり、このままだと民法の結果次第では合否をも分けかねないと思ったので、試験直前も、民法に1日3時間以上の時間を割きました。

【商法・会社法】

 商法・会社法は、『択一六法』を使って、とにかく条文を読み込みました。解釈に時間がかかり、日によっては数ページしか進まない日もありましたが、「時間はどれだけかかってもいい」という気持ちで徹底的に理解することに努めました。また、組織再編分野と商法分野については、とっつきにくいと思ってそれまで避けていたのですが、毎年必ず出題されているのだから、確実に点数を取りに行くという気持ちでやることにしました。いずれも、ひたすら条文を読み込み、『択一六法』に載っている表などを活用して知識を整理して定着させました。

【マイナー科目】

 マイナー科目については、苦手だった憲法と民事訴訟法にはやや時間を費やしました。
憲法は、国語力を問われるような難しい言い回しと長い文章に苦手意識もあって、それまでは平均して3問中1問しか正解できていませんでした。しかし、午前の部の第一問に配置されている憲法を苦手だからといって片付けるのは、一問で合否を分けかねない本試験においては危険過ぎると思い、とりあえず苦手意識を失くすため、習慣的に学説や条文を読むことにしました。そして、頻出の学説は暗記してしまうことにしました。直前期も、憲法に毎日1時間は割くようにして1日3問を目安に解きました。

民事訴訟法は、早いうちから点数自体は安定してとれていたものの、自分の理解度にどこか見えない不安を感じていたので、直前期にも関わらず、三枝先生の講義を再受講しました。民事訴訟法はマイナー科目と捉えるのをやめ、弁論主義の三テーゼや定義など、分かっているようできちんと理解できていない部分を補強しました。

【書式について】

書式は、3回に1回ほど実体判断を誤って、情けない点数を取ることが常習化していたので、これまでの神頼みのような次元で解くのは卒業しようと思い、もっとシビアに取り組むことにしました。商業登記は、「書式ブラッシュアップ講座」で藤井先生から伝授を受けた答案構成用紙の作成術にならって解くようにしたところ、点数が格段に安定しました。また不動産登記は、時系列と権利関係の図を書いてミスを失くすようにしました。いずれも答案構成用紙をフルに活用し、自分で決めたルールに則って「作業的」に解くことに努めました。

【答練について】

定期的に実施される答練については、「本試験は結果を出すもの、答練は成果を試すもの」と位置付けて、答練や公開模試があるからといって、学習のペースを変えることはせずに臨みました。そして、答練はとにかく一喜一憂しないことを心がけました。見直しは、1日潰してでも抜け目なくやりました。正解していてもその答えを導いた過程を検証し、点数による評価ではない自己評価を毎回行いました。それを元に、常に自分の進捗状況を確認しながら計画を立てました。

直前期の頃にやっていたのですが、翌日学習する内容を前日に決めるというのもかなり有効でした。また、時間配分と解答順序もその時々によって変えるのではなく、決めた順序を徹底しました。

本試験当日

そして本試験。午前科目はいくつか難問がありましたが、緊張しながらもいつも通り解きました。ところが最後、答えがどうしても二択から絞り切れない問題があり、試験終了の指示があった1分後に間違いに気付いてしまう、という災難に見舞われました。とてつもなく落ち込みましたが、受験仲間に「その一問で合否が分けられることは絶対ない。大丈夫だから、午後科目に気持ちを切り替えて頑張ろう」と励まされ、どうにか気持ちを立て直して午後科目を受けました。

午後科目では、1時間10分で終わる予定にしていた択一が終わりきらず、数問残した状態で書式に入りました。しかし、2年目まで時間が足りなくなることなどなかった書式も予想以上に時間がかかり、結局不動産登記の欄を埋めきれないまま択一の解答に戻りました。

試験中は、何度も時計を見て、正直何度も諦めそうになりました。時間はないし手は痛いし、本当に逃げ出したかったです。3年間受験して、こんなことは初めてでした。手応えも3年間受験した中で一番微妙でした。ですが、結果は午前93点、午後90点、書式53.5点と、合格基準点を大幅に上回って合格しました。今思えば、試験中の不安や焦りは、試験の本当の厳しさを知っていた故のものだったのかもしれません。

与えられた状況を楽しむ工夫

私は、2年目に精神面で負けてしまった経験があるゆえ、モチベーションの維持にも全力を注ぎました。生活面では、生活のあらゆる行動のベクトルを本試験に向けました。人と会うこと、出かけること、衣食住の全ての行動に対して、「それは今本当に必要か?」を常に問いかけました。この1年で確実に決めるためには、それくらいの覚悟と自分への厳しさが必要でした。金銭的に余裕がない状況と社会的身分がない状況が続くことに、精神的に辛くなることも多々ありました。ですが、与えられた状況を楽しむ工夫はたくさんしました。例えば、友人と会う時間が減った代わりに、それまでしなかった読書で気分転換をするようになったし、度々髪を染めなくていいように、受験モードだと言って髪を真っ黒にしたりもしました。おかげで、受験生活はしんどいことも多かったけれど、充実した時間だったと心から思っています。

最後に

漠然と目指し始めた司法書士でしたが、周りからの励ましや応援を通して、目標が具体化されていった部分も大きかったように思います。色々と回り道をした受験生活でしたが、いつも近くで支えてくれた家族、友人、クレアールのスタッフ、先生方に感謝するとともに、別の形で恩返しをしていけたらと思います。

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