『失敗の原因を分析し、きちんと対策を立てたことが合格の秘訣』 森川 英太さん

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将来独立するために目指した司法書士試験

前年の本試験直後はどん底でした。あんなに勉強してきたのに、結果を出すことができなかったというやり切れない思い。もう1年やっても合格できる気が全くしませんでした。これに対し合格した年の本試験直後は、大失敗をしたものの(結果的には紙一重で合格でしたが)、もう1年同じように頑張ることができれば、来年こそは合格できるような気がしました。この変化が、この1年間やってきたことの成果だったように思います。
大学の在学中から、将来的には独立したいと考えていた私は、一般企業に就職後、予定通り退職しました。当時はITバブルの最中でしたが、もともとコンピュータに興味があったこともあり、大学院で情報科学の基礎を学んだ後、インターネット関連の仕事を始めました。また同じ頃、高等学校に新設された情報科の教員免許を取って高校の教壇にも立ちました。私の場合、ちょっと特殊なケースでの教員免許取得でしたので、教育委員会に取り扱いを問い合わせたところ、前例もなく、法律にも規定がないとの理由で、文部科学省の指示を仰ぐということになりました。結局こちらの主張は全く認めていただけませんでしたが、法律の存在を強烈に意識すると同時に、法律に興味を持つきっかけとなりました。それから将来の事をいろいろ考えながら2年程経った頃には、「司法書士になる」という目標は現実的なものになっていました。

私の勉強方法

初めて受験した年の本試験では、基礎力不足を痛感し、試験が終わって2〜3週間後から翌年に向けて、勉強を再開しました。私は単純な暗記は苦手でしたので、結論だけでなく、どうしてそうなるのか、その理由を常に考えるようにしていました。しかしテキスト等には結論しか書かれていないことも多く、理由にたどり着くまで時間がかかってしまいます。また、理由を考える過程で出てきた疑問点や関連事項も確認し、後で同じ疑問にぶつかったときのためにメモを残したりしていましたので、過去問1問(5肢)に30分位かかることもよくありました。かなり効率は悪いですが、若くもなく、能力も高くない自分は、こうやって我慢強く1つ1つきっちりやっていくしかないと信じ、時間がかかる分は、可処分時間をすべて勉強に充てることでカバーしようと思いました。
勉強時間は1日を4時間×6ブロックに分けて管理しました。2ブロックは睡眠時間、残り4ブロックを勉強時間と決め、勉強時間の1ブロック4時間のうち3時間は勉強し、残りの1時間で休憩のほか、入浴・食事等の身の回りのことを済ませるよう心掛けました。また、机の上には常にストップウォッチを2つ置いていました。連続勉強時間の確認用と1日の累計勉強時間の記録用です。勉強を始めたらストップウォッチを押します。机に向かっていても、集中力が切れたらストップウォッチを止めます。ちゃんと集中している時間だけを勉強時間として毎日記録をとり、客観的に自分の集中度や勉強時間の推移をチェックできるようにしていました。このやり方に従えば1日12時間(3時間×4ブロック)は勉強できることになりますが、実際には年内は6〜10時間、1〜3月は9〜11時間、4〜6月は10〜12時間程度でした。

不安との戦いだった本試験

本試験が近づくにつれ、もともと緊張しやすいタイプの私は、本試験の前日に眠れるだろうかと不安が募ってきました。「一晩くらい眠れなくても大丈夫」という話は聞いていたものの、ある事情で徹夜をして答練を受けたときの点数が思わしくなかったからです。残念ながら不安は的中し、本試験の4日前の水曜日からおかしくなりました。水曜日の夜はなんとか明け方から数時間眠れたものの、木曜日と金曜日は一睡もできず、たまりかねて土曜日は朝から病院に行き、睡眠導入剤をもらってきました。しかしその夜も、薬を飲んでも一向に眠れる気配はなく、布団の中で焦るばかり。それでも明け方の2時間ほどの記憶が無いので、少しはウトウトしたのだと思います。

本試験当日の朝、重い頭とだるい体を引きずりながら駅に向かう途中、嘔吐。気分が悪くてとても電車には乗っておられず、タクシーで試験会場へ。試験開始まで教室の2人掛けの席で横になっていました。昼休みは何も喉を通らず、少し水を飲むのがやっと。午後の試験が始まった頃、ようやく吐き気が少しおさまってきました。こうして試験が終わってしまったその夜も、極度の睡眠不足のはずなのに、一睡もできませんでした。

自己採点したところ、択一の基準点に届いていませんでした。原因を分析したところ、体調不良のせいではなく、明らかに実力不足でした。きちんと知識が整理できている問題は、ちゃんと正解できていましたし、落とした問題は理由があって落としていたのです。多少は集中力不足で落としたものもありましたが、それは心のどこかに「今年はダメだ」という諦めの気持ちがあったせいだと思います。よく合格体験記に「一晩くらい眠れなくても関係ない」と書いてありますが、その通りだと確信しました。

試験結果を冷静に分析して再スタート

合格することとなる翌年の本試験に向けてまず初めにやったのは、敗因の分析です。講師の方がよく「バランスが大事」、「弱点があったらダメ」と仰っていましたが、本試験ではものの見事に自分の弱点にやられ、ただただ闇雲に勉強していただけだったことにようやく気付きました。

私の場合、民法の判例知識・推論問題、不動産登記法の総論、憲法の推論問題が苦手でした。民法については、判例付六法を買ってこまめに判例を引くと同時に、平成10年以降の重要判例については、その結論だけでなく内容も繰り返し読みました。不動産登記法は総論の条文を読み込み、知識が混乱している部分は、関連する新しい先例などと一緒にノートに整理して覚えました。憲法はクレアールの2年分の答練を何度も繰り返して解きました。今年は午前の基準点が高くなると予想していたので、苦手な憲法での失点は許されないと思い、直前期も憲法は毎日必ずやるようにしていました。逆に苦手意識のなかった科目については、過去問を1回解いて、曖昧なところを1〜2回見直す程度しかやりませんでした。

択一は基本的に弱点を補強するだけにして、浮いた時間は書式の対策にまわしました。昨年は択一の勉強に追われ、書式は答練の問題を解いて、翌週にもう一度解き直すのが精一杯でしたが、今年はその3〜4倍はやったと思います。

「この試験は難しいことを知っている人ではなく、ミスをしない人が受かる」と講師の方に言われ、答練が始まってからはミスをしないための対策に最も注力しました。択一も書式も、どんな些細なことでも何かミスをしたら、同じミスを二度としないための工夫をし、それをノートにまとめ、徐々に自分のミス対策のスタイルを作っていきました。また、書式は時間が足りないと焦りからミスにつながるので、午後の択一は60分で解けるように、科目ごとに何分で解くという時間設定をして、答練・模試では毎回その時間配分で解くように繰り返し練習しました。午前の択一も時間が気になって焦らないように、110分の時間配分で同様に練習しました。

昨年の失敗を乗り越えて、手にした平成21年度司法書士試験合格

そして迎えた本試験、昨年の経験に基づく睡眠対策が功を奏し、前日も数時間ですが眠れました。しかし本試験当日は緊張でガチガチ、いつものようにミス対策の手順をノートで確認してから試験に臨みましたが、午前はストップウォッチを押し忘れるなど、予期しないトラブルもいくつかありました。それでも昨年の失敗からしっかりと反省し、対策を立て、それを実践してきたことは概ね全てうまく行きました。逆に、昨年失敗したにもかかわらず、反省が不十分でちゃんと対策をしていなかったことは、はやり今年も失敗しました。
失敗の原因をしっかり分析して、きちんと対策を立て、それを実践し、次に臨めば結果は出るということを実感できたことは大きな収穫でした。私は幸いにも何とか今年合格することができましたが、もし不合格だった場合には、今年の失敗を踏まえた対策をしっかりとることができるかどうかで、来年の合否が決まることになったのだろうと思います。
振り返ってみれば私はとても恵まれた環境のなかで勉強することができました。これも出会った皆さんのおかげです。自分一人の力ではとても合格することはできませんでした。本当にありがとうございました。感謝の気持ちを胸に、新たなステージに向けて引き続き頑張っていきたいと思います。

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