「仕事は辞めずに継続し、上手に両立させることがお勧め」 三橋 智樹さん

はじめに

 おそらく、私以外にも他の方の合格体験記がたくさん載っていることと思います。そして、受験生の皆さんは、その中で取り入れられるものを取り入れて、勉強されているかと思います。ただ、私は他人の失敗談から学ぶことも重要かと思います。そこで私は、「不合格体験記」を書きたいと思います。

司法書士を目指した理由

 私は、大学時代に現在の日弁連会長の宇都宮先生が、多重債務者の生活再建に尽力されている話に感銘をうけ、司法試験を受験していました。しかし、司法試験に受からないままに制度が変わってしまったこともあり、断念して数年の就職活動の末、ようやく就職しました。ところが、ようやく就職した職場での人間関係が(最初のうちは)どうもうまくいかなかったのです。ただ、転職しようにもその時の状況では転職できる自信が全くなく、どうしようと途方に暮れていました。

 その時に、司法書士でも受けてみようか、司法書士なら認定を受ければ簡裁代理権も取得でき、当初の目標も達成できるではないかと思ったのです。

私の学習方法

【1年目】

 こうして、とりあえず受けてみることは決めて、実際に下見がてら1回受験してみました。その結果感じたことは、「今は勉強していないので、特に登記法などは解けないけれども、まじめに勉強すれば働きながらかつ独学でも、2年あれば合格できるのではないか」ということです。もちろんこの感覚は、合格した今ならはっきり「甘すぎた」と断言できます。

 こうして勉強を開始したのですが、働きながらの勉強はとてもしんどいものでした。何よりも、職場の人間関係がつらかったです。ただ、このつらい状況をもう一年経験したくない、ということを励みとして必死に勉強しました。この年の勉強に対する熱意は、自分自身でもとてもすごいものだったと思います。
 
この年の受験結果は、午前84点、午後72点でした。(基準点は84点、78点)

【2年目】

 不合格ではありましたが、1年間しっかりやった結果、かなり惜しいところまで行けたと思ったため、今年も必死に勉強して去年の1.5倍の問題を解けば合格できるのではないかと思い、それを実践しました。

 また、若干慣れはしたのですが、職場の人間関係がやはりつらかったこともあり、この状況をもう一年経験するなどということは絶対にしたくない、と必死に勉強しました。

 そして受験したのですが、この年は多くの問題で2択までは絞れたのに、その2択をことごとく外してしまいました。その結果、午前84点、午後75点でした。(基準点は87点、75点)

【3年目】

 当初の司法書士受験計画では、およそ勉強しているはずのない年です。それだけに、やる気や熱意が低下していました。そのため、この年はモチベーションを失い、完全に勉強をやめてしまうことを防止するため、直前期を除き1カ月の中に1日は勉強しない日を設け、リフレッシュすることにしました。また、前年はあんなに裏目裏目となってしまったが、それを2年続けてやることは絶対にない、と自分に言い聞かせて、本当に自分をだましだましするような感じで何とか本試験を迎えました。

 本試験では、商業登記の記述で一度も書式のひな型を見たことのない新設分割が出たため、「うーんどうだろう・・・」という感じではありましたが、必死に枠は埋めたし、他人も絶対に勉強していないはずなので、ここでは差がつかないはずだ、とその時は思いました。

 自己採点の結果、午前96点、午後87点となり、この年の本試験の夜は、ようやく努力が報われたと小躍りしました。

 そして、当然に合格しているものだと確信(誤信)して、合格した自分へのご褒美は何にしようかと考えながら、法務局に合格発表を見に行きました。そして、不合格だったことを知りました。その後の通知で、総合点では合格点に達していたものの、商業登記の記述が壊滅状態で、記述で足切にあってしまったことがわかりました。

【4年目】

 あまりのショックで、不合格発表を見た後で自殺しなかったのは偶然としか言いようがなかったくらいです。それくらい受験はおろか、もはや生きる気力すら失ってしまった状態だったのです。

 そこに、同僚の女性が声をかけてくれました。延々と泣き言を言い続ける僕に対して、やればできる、そこまで勉強したのにもったいないよ、クレアールで一緒に勉強しよう、とずっと励ましてくれました。女性がとても良い香りをプンプンさせながら、僕のことを励ましてくれるという通常ではおよそありえない状況に、何とかもう1回受験することに決めました。

 そして、これまでは他校に通っていたのですが、これ以降はクレアールに通うことにしました(そうでなければ、もう1年受ける意味がないですからね)。

 そうは言っても、やはりもう1年勉強すると思うと、ものすごく気が滅入りました。例えば、法務省からは不合格通知が来ているのに、予備校からは合格祝賀会の通知が届いたり、「もう勉強することないんだ」と過去問集などを捨てて清々した気分だったのに、また、過去問集などを買いに行くときなどは、本当にうんざりしました。

 そこで、年内は少しでも勉強が嫌だなと思ったら、その日は一切勉強しないことに決めました。こうすることにより、勉強に対するうんざり感を積み増すことを防止しました。
その上で、年末年始はこの総仕上げとして、ブルーレイレコーダーを新たに買い、(1人暮らしなのに)5番組同時録画可能な状態にして、さらにはテレビ情報誌も買い込み、少しでも面白そうかもと思った番組は片っ端から録画、視聴していきました。この結果、ようやく1月以降は「勉強しても大丈夫かな」と思える状況になりました。

 ちなみに同僚の女性はその後、事情があって仕事を休職してしまったため、クレアールで一緒に勉強することは一度もなかったです。そして、迎えた本試験の結果は、午前90点、午後78点、不登記述31.5点、商登記述24.5点でようやく合格できました。

仕事と勉強の両立について

 私は、仕事と両立しながら短期合格するのは、難しいと思います(皆さんもそう思っているかもしれませんが)。私は、司法試験の旧試験を受けていたため、憲法、刑法についてはテキストすら買わず(もちろん司法試験受験時代に使っていたテキストは実家にありますが、司法書士受験に関して一切見ていません)、民法も1年目は全くといっていいほど、勉強していない状況でした。それでも、午前科目は毎年8割を超えている(2年目はそれでも基準点落ちしちゃいましたが)ので、その貯金があればこそ合格できたと思います。その貯金がないとなると相当厳しいのはわかります。

 さらに、私にとって本当につらかったことは、職場でつらい状況のときにストレス解消をすることもなく、休日も延々と勉強していることです。周りの同僚は休みの日は遊んでいるんだ、という思いが孤独感を増すのです。さらに言えば、仕事をしつつ休日に勉強のみしていると、お金もたまるため、遊ぶ金はあるのに、ということでより一層ストレスがたまるのです。

 でも、私は仕事を辞めない方がいいと思います。仕事をしていれば、ちょっといいかもと思った講座や本などを簡単に購入し、自分に合わなければ簡単に破棄できるからです(親の金だとそういう気分にはなれませんよね)。また、私の場合、扶養家族がいないため、都心に住んで通勤時間などを削り、勉強に充てられた点も良かったです。時間をかけて通学するのでは、結局勉強時間もそれほど増やせません。その上、結局アルバイトをしながら勉強するのでは、アルバイト先での人間関係でうんざりすることもあり得ますし、その上に給料が安いので、より嫌なはずです(その意味では遊ぶ金があるのに遊べない方がましです)。さらにこの試験は、もともと難しいうえに毎年のように難しいポイントが変わる(商業の新設分割が出た点、時間不足の点など)ため、どういうことがあっても来年確実に合格レベルに達する、というのは相当難しいと思います。そして、仕事をしないで1年あるいは数年多く勉強するというのは相当つらいはずです。その意味では、やはり仕事を継続した方がよいかと思います。

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