『合格への近道は出題例のある基本知識をより確実にすること』 杵渕 栄治さん

『合格への近道は出題例のある基本知識をより確実にすること』

 杵渕 栄治さん

司法書士を目指した理由

法学部出身ながら大学時代は全く勉強などしていなかったので法律学の知識は無いに等しかったのですが、当時続々リリースされていた長谷部恭男先生の本から法律学に関心を持ち「どうせだから」と軽い気持ちで司法書士試験の勉強を始めました。

合格までの道のり

結果として四回も受けることになってしまいましたが、司法書士試験の結果を点数と学習方法で振り返ってみたいと思います。

  • (初回)平成21年度午前、午後とも基準点未満、
  • (2回目)平成22年度 基準点オールクリアながら総合点で1.5点足らず、
  • (3回目)平成23年度午前基準点未満、
  • (4回目)平成24年度 最終合格(232点)。

初回

他校の基礎講座をとっていたものの途中でDVD見るのも飽きてしまい、答練もとってなかったから、テキストを複数回読み書式を一通り覚えた程度の準備不足で挑戦。実質的にお試し受験でした。ただこの年に繰り返しテキストを読んだことは正解でした。その後、制度趣旨等の基本で迷うことはありませんでした。

2回目

前年実戦経験が明らかに不足していましたから、答練を通じて初めて自分が受けている資格試験がどういうものか実感しました。

この年は、クレアールで配布された肢別問題集(現1,000問ノックチェックテスト)と直前チェック講座を何度となく繰り返して最低限の知識を頭に入れ、構成用紙の書き方(我流)も大体修得して本試験に臨みました。結果として択一1問分足りず不合格になりましたが、本人の実感としては明らかに力不足と考えていたのでむしろ意外な健闘でした。後から考えれば、知識の「量」はこの程度で十分、記憶の「精度」がわずかに足りなかったのでしょう。

3回目

クレアール配布の過去問集と、過去問+αの知識が必要と思って答練の問題分析に力を入れました。答練の点数は上がり、ある程度事前の手応えは感じていましたが、午前が1問足らずのまさかの足切り(午後は30、書式はかなりの出来。午前はこの年の答練・模試を通じて最低点)。結果が届いた直後は「魔が差した」予想外の結果としか言いようがなく、情けない思いもしました。ですが、今考えれば、この年は過去問以上の知識にも貪欲に手を伸ばした一方で、非効率だからと理論的な勉強のレベルは低いままだったため「知っている」けど「使えない」無駄知識に引きずられて、簡単な問題も難しく考える良くない癖が付いてしまっていたのでした。この悪癖には最後まで苦しめられることになります。

4回目

まだ悪癖に気付いておらず、前半は、去年以上に答練を中心に勉強し、ますます無駄知識が増えるため、答練では「簡単なのに難しく考えて間違える」問題が続出。成績の数字は前年並みでしたが、年々累積の勉強量が増えていることを考えると不満でした。そこで四月頃試しに答練の復習を止め、原点に立ち返って肢別中心のメニューに切り替えました。
とはいえ、ようやく自覚し始めた悪癖を抜け出すのも難しく、折しも第二回の模試で最低点をとってしまい、直前期は(大袈裟に言って)パニック状態。本試験で結果として合格したのは、この年の答練全体の成績からみればまずまず順当でしたが、直前期の混乱ぶりから考えればラッキーだったとしか言えません。

合格のポイント

1つ目

過去問の蓄積が十分な科目、主として民法・不動産登記法は、過去問を主な教材としてひたすらその知識の定着のみに専念すれば基準点くらいは十分に越えられるということ。毎年本試験に未出の知識も出てくるのは確かですが、そうした問題も既出知識の肢を確実に潰せれば、未出の知識の正誤を判断する必要すら無い場合が殆どです。目新しい知識、論点に飛びつくよりも出題例のある知識をより確実にする、それが合格への近道だと思います。私はその点無自覚であったため、かなりの遠回りをしました。

2つ目

法律学の基礎は当然ながら条文であり、不明点があったら面倒でも常に六法へ立ち帰るべきこと。予備校の答練はマイナーな判例・先例、学者見解や実務書といった本試験の範囲外から出題されることが多く、それに釣られると学習効率が著しく低下します。

知らない知識と遭遇したとき、条文に書いてあるか否か、判例・先例であれば自分が使ってる六法・先例集に収録されているか否かを基準に要・不要を切り分けるのが効率的です。不要と判断したら(受験生時代の自分にはできませんでしたが)見向きもせず、綺麗サッパリ忘れるのが正しい判断です。なお私の場合、引いた条文・判例には全て付箋を張って、同じ条文・判例を引いた場合にそれと分かるようにしていました。例えば民法545条など何度確認したか分かりません。

3つ目

書式は、私の場合2年目以降常に得点源にしていましたが、この科目で重要なのは雛型を暗記することではなく、与えられた情報を手際良く集約すること。そして手際良く情報集約するためには構成用紙の使い方を早くから意識してルーチン化することが肝要です。

同じ書式問題を2度、3度と繰り返し解くのは無意味だと仰る方もいるのですが、それは書式問題を、暗記した雛型に吐き出す作業と認識しているからだと思います。しかし書式は情報集約をよりスピードで行う熟練性を競うものであり、雛型は集約した情報を定型化させる手段に過ぎません。ですから同じ問題の、同じ情報内容をより明解に1枚の紙に書き出すノウハウを身に付けるためには、同じ問題を繰り返し解いて見直す作業はむしろ不可欠であると思います。

4つ目

同じ書式問題でも、不動産登記と商業登記では重要性に差があります。
13.0、9.5、11.5、10.0、これは過去4年の書式問題の基準点から28を引いた数字です。28は35点満点の8割、そして先輩の合格者に伺うと大抵の方が不動産登記でクリアしてる数字。逆に言えば本試験の書式で足切りを避けるため商業登記で取らなければいけない点数はほんの10点ちょっとということになります。

一緒に受験した方にも商業登記が間に合わないから不動産登記の添付書面を飛ばしたり、あるいは商業登記に優先的に時間配分をするため不動産登記を書ききれなかった話をよく聞きます。ですが、書式の基準点はせいぜい40点前後、そして(平成20年を除き)商業登記より不動産登記の方が得点しやすいのですから、不動産登記を優先して限りなくノーミスで仕上げ、商業登記は分かりやすい論点から最低限必要な点数を稼ぐ戦略で臨むのが最も効率的。不動産登記は35点満点からの減点法、商業登記は10点を目指す加点法で組み立てれば、多くの受験生が抱えてる、毎年予想が付かない商業登記の無理難題へのプレッシャーが軽減されると思います。商業登記を初めに解くことを推奨されることが多いでしょうが、これは商業登記でも不動産登記でも高得点を取る前提とした話で、例えば25点ずつ50点を取った受験生は200人もいません。上位10%に入らなければ合格できない試験ではないのです。どちらか一方、それなら、より簡単な不動産登記をまず万全にしましょう。

今年の不動産登記法が休眠担保権の抹消と農地法の許可という典型論点で、一方商業登記は雛型を丸暗記するしかなく受験生が苦手とする組織再編。不動産登記は8割以上出来た手応えがあり、また商業登記が難しいから基準点が前年以下になるのが容易に想像できましたので、私の場合、商業登記は商業変更による設立と吸収合併による変更の基本的な雛型と登記できない事項だけ間違いないように記入して打ち切り、残りの30分程を択一の見直しに注ぎ込みました。書式より択一に不安があったからですが、書式の基準点の傾向を考えれば、現場でこんな応用もできます。

5つ目

過去問の絶対数が少ないマイナー科目について。憲法は平成23年の第1問は明らかに出題者の勇み足だから無視して構いませんが、平成22年までのように目新しい論点が出題される可能性を想定しなければいけません。そのため過去問や答練では網羅されていない論点を補うのには公務員試験の過去問が最適です。刑法は過去問を繰り返し、主要論点の判例を丁寧に暗記すれば足りるでしょう。【商法総則は条文数が限られますから、1問だからと軽視するより、1問確実に稼げると思って丁寧に条文を拾うべきだと思います。】

午後の民訴等、供託及び書士法は、出題例が不足しているため過去問だけでは足りない不安がつきまとい、一方、答練や模試等で細かな条文知識が問われてさらに混乱させられることが多いです。しかし実績をみれば本試験の問題が年々細かな論点に引きずられているわけではなく、読んだこともない条文だけで問題が構成されることもありません。ですから、過去問を解くときに周辺の条文を丁寧に拾い、またテキストを直前になるまで繰り返し読んで、それ以上手を広げないことが大事だと思います。

これから合格を目指すみなさんへ

クレアールでは択一・書式とも教材一式が配布されますから、それを信じて繰り返すことで十分な知識は得られますし、特に総合答練や模擬試験は本試験に近い感覚の問題が出題されますから早くに自らの実力を的確に掴むことができます。必要な情報は既に受け取っていますから、後は「やるだけ」。合格に向けて頑張ってください。

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