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「退職して勉強専念、二度目での合格」昆 裕之さん

司法書士合格体験記

退職して勉強専念、二度目での合格

昆 裕之さん

 

1 最初に

 この合格体験記は、私が書きたいテーマごとに内容が独立しており、それぞれのテーマの並び順等はほとんど考慮していません。まずはテーマに目を通し、気になったところをお読みください。

 

2 司法書士試験と実務経験

司法書士試験は実務家登用試験と言われます。確かに不動産登記法などの手続法の問題においては、現場で日常使われている知識が直接問われることもあります。しかし、結局は、「司法書士試験の問題を解答する技術を試す試験」であって、実務とは別物、と考えた方が良いと思います。決められた時間内に、正解の選択肢を選び、記述の解答用紙を埋めて、合格点を取る、という能力は、実際の問題を解いて磨くしかないと思います。実務の現場での経験は役に立ちますが、合格する上での最短ルートではありません。

 

3 受験に至る経緯及びこれまでの受験結果

私はもともと公務員でしたが、父が司法書士事務所を経営していることもあり、「お客さんのハッピーに直接貢献できる」「自分の資格で収入を得られる」「父の手伝いができる」ということから、公務員を退職して司法書士を目指すことにしました。受験の結果は次の表のとおりです。勉強を始めたのは平成27年10月で、平成28年3月に仕事を辞めて専業受験生になりました。一度目の受験は午後択一で足切り不合格、二度目の受験で合格することが出来ました。二度目の受験の今年は、午後択一でミスが相次いだものの何とか合格出来ました。商業登記記述を解くための戦略がはまり(9参照)高得点を取ることができたのが合格の要因だと思います。

  午前択一 午後択一 不動産登記記述 商業登記記述
H28 84/105 69/105
H29 81/105 78/105 20/35 29/35

4 二度目の受験に向けて意識したこと

一度目の受験を振り返り、二度目に向かう上で意識を大きく変えたのは①「本番を意識すること」、②「復習を徹底的にやること」及び③「あきらめること」の三点です。その結果、試験勉強の方法が次のとおり変わりました。上段が一度目の受験をする際の考え方、下段が二度目の受験をする際の考え方になります。

①関連 ②関連 ③関連
模試や答練を一生懸命解き、結果を見て一喜一憂する。 試験範囲を一生懸命勉強し、できる限り復習する(復習のタイミングや回数についてはよく考えない)。

・本試験直前まであきらめずになるべく多くの知識を覚えられるよう勉強する。

・記述の問題ですべての欄を埋められるようにあきらめない。
本試験を見据えて、時間配分(9参照)や択一の意思決定方法(10参照)を事前に決めたうえで受験する。終了後は振り返りをし、戦略を練り直す。 「この知識を覚える」と決めたら、翌日、3日後、1週間後、1か月後、3か月後に復習することにし、決めたとおりに復習する。

・本番1か月前になったらこれ以上新たな知識を覚えることを「あきらめ」て復習に集中する。

・不動産登記記述で時間内にすべての欄を埋めるのを「あきらめ」て添付情報欄は後回しにする(結果的に間に合わず、添付情報欄は白紙提出しました。)。

 

5 予備校について

基礎講座に関してはずっとクレアールを利用しました(模試や単発の講義については他校も利用しました。)。クレアールは、最初は費用の安さから選びましたが、実体法と手続法を一体として学んでいく方式が分かりやすく、私に合っていたと思います。特に、会社法・商業登記法のテキストは、情報を集約するツールとして試験日までずっと使いました。また、メールでの質問にも迅速丁寧に答えていただきました。通信での受験生にとっては、大変ありがたかったです。

 

6 教材の使い方、情報の集約

科目ごとにメインとなる教材を一つ決めて、情報を集約しました。同じテーマに関する情報が複数の資料に分散されていてどの教材をメインとするかが定まっていないと、問題を解く際に思い出すのが難しいからです。私の場合は、民法及び不動産登記法はそれぞれの択一六法に、その他の科目はクレアールのテキストに情報を集約していました。

 

7 会社法の攻略について

一番とっつきにくかった科目です。攻略するために重要なのは、表の活用とイメージだと思います。

(1)表の活用

試験では、決議内容によって決議機関がどう変わるか、会社の種類によって設置可能な機関がどう変わるか、ということを答えられるようにしなければならないので、テキストや択一六法に掲載されている比較表を使ってまとめて覚えてしまうのが効率的です。そのような比較表が掲載されていない場合は、自作します。私は、エクセルでいろいろな表を作りました。エクセルだと、後々の項目追加、内容修正がすぐ行えるので便利です。

(2)イメージしやすい覚え方

会計監査人まで含めたフルコースの会社を想定し、各機関にイメージしやすい知人や有名人を当てはめて、記憶をしていました。と言ってもわかりづらいので、以下に実際の覚え方を記載します。ケースは、「株式会社(取締役会設置会社)が株式併合をするにあたり、決議機関は株主総会と取締役会のいずれか」という問題(答えは株主総会)が判断できず間違えてしまった時、です。

①第一段階

自らを代表取締役とする会社をイメージしておく(その他の役員には顔や動作をイメージしやすい友人、有名人等を当てはめる。例えば、アサヒ取締役、ミタムラ取締役、株主カミムラ、株主ハマヤ(すべて仮名))

②第二段階

株式併合を取締役が行っているイメージを作る(つまり、株主カミムラ(株主総会)が野菜のカブ(株式)をPPAPのリズムで「ん!」(併合)としているイメージを思い浮かべる。
このようなイメージを作っておけば、次に株式併合の決議機関に関する問題が出た時に、上記イメージを思い出すことで判断することができます(PPAPをやっていたのは誰だっけか、あ、株主カミムラだ!つまり株主総会決議だ!という思考)。

 

8 記述式対策について

私が意識して取り組んだのは、合格書式マニュアルへの情報集約、書式練習は略語でスピードアップ、本番形式の問題の解き方を体で覚える、の3点です。

(1)合格書式マニュアルへの情報集約

まずは書式を覚えなければならないので、合格書式マニュアルは何度も読み返しました。問題を解いていて間違えたところは、すべて合格書式マニュアルにメモしました。合格書式マニュアルに載っていない申請書記載例にも手を出しそうになったこともありますが、クレアールに相談した結果、合格書式マニュアルに載っているひな形だけ覚えればよいということを言っていただけたので、その一冊に集中することができました。平成29年度の不動産登記記述では賃借権設定の申請情報を書く必要があり、合格書式マニュアルの範囲外ではありましたが、択一の勉強で覚えていた登記事項を可能な範囲で書くことで、合格点を取ることができました。

(2)書式練習は略語でスピードアップ

つまり、「資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面」を書式練習の時にいちいち書かないということです。本番同様の時間配分が試される時でなければ、なるべく演習の回転を速くしたほうが良いので、略語をどんどん使いましょう。略語は他人に伝えるためのものではありません。自分が分かりやすければOKです。次の表は、私が使用していた略語の一例です。

登記原因証明情報
住所証明情報
登記識別情報
印鑑証明書
一般承継証明情報
会社法人等番号
変更証明情報
抵当権
根抵当権
1番抵当権抹消 1テ抹
所有権移転 所イ
平成29年11月1日売買 29111バ
権利者 株式会社A 代表取締役a 権 株A 代a
相続人(被相続人A)B 相(ヒソA)B

 

(3)本番形式の問題の解き方を体で覚える

ご存知のとおり、記述の問題の情報量はとても多いです。平成29年度の不動産登記法で言えば、前文、事実関係、事実関係に関する補足、問題文、答案作成に当たっての注意事項、添付情報一覧、別紙1~6とあり、必要な情報がいろいろなところに散らばっていました。ただ、どの項目がどこに書かれるかは、ほぼ例年通りでした。このような傾向は分かっていたので、私は、記述の過去問を見て、どの情報をどの順序で処理していくかを最初に決めておき、本番ではそのとおり処理するという作戦を採り、ほぼスケジュール通り(9参照)解くことが出来ました。

 

9 午後の問題の攻略について

8と関連しますが、午後の問題は時間的にとてもハードです。私は、模試に臨むにあたりその都度タイムスケジュールを立てており、受験後に振り返りをしていました。結果的に試験本番は次のようなスケジュールで臨みました。

 13:00~13:05 記述問題全体像把握
 13:05~14:00 択一検討
 14:00~14:25 商業登記問題読む
 14:25~14:30 商業登記答案構成
 14:30~14:55 商業登記答案記載
 14:55~15:20 不動産登記問題読む
 15:20~15:25 不動産登記答案構成
 15:25~15:40 不動産登記答案記載
 15:40~15:50 択一の後回し問題解答
 15:50~15:55 択一マーク
 15:55~16:00 記述の誤字脱字チェック

一番最初の「記述問題全体像把握」は、記述の問題をすべてサラッと見て、記載すべき項目やひっかけポイントなど、気づいたことをメモするという意味です。これをやった結果、平成29年度の商業登記の登記記録に「存続期間の定め」があることが分かったので、あせらず解くことができ、商業登記記述の高得点につながりました。タイムスケジュールは人それぞれであり、模試等を通して、記述の解答欄を埋めるのにどの程度の時間を要するか、自分自身で把握する必要があります。

次に、不動産登記と商業登記の解く順序についてです。当初は不動産登記を先に解いていましたが、クレアールの公開模試の際に戸谷講師に相談し、様々なアドバイスをいただいた結果、もともと比較的得意であった商業登記を原則先に解くことに変更しました(例外的に、最初の全体像把握で商業登記の問題がさっぱりわからなかった場合のみ、不動産登記が先)。あの場で相談していなかったら、このタイムスケジュールにはなりませんでした。特に通信の受験生の方には、少しのことでも、気になったら講師や予備校に質問してみることをお勧めします。

 

10 択一の判断基準(どこで決断するか)

午前択一の場合は全肢を検討し解答しましたが、午後択一は全肢検討していると時間的に間に合わないことが分かっていました(時間配分は9のとおり)。ですので、全肢を読み終える前であっても、決まった時間が経過した時点で(例えば一問2分)、又は心証が一定の水準に達した時点で、解答を決めるという決断が必要になります。今回、私が採った作戦は、「2肢を読み、確実に判断できると思える肢があれば、それを前提に選択肢を絞る」というものです。これは、時間短縮には都合がよいのですが、リスクも大きいです。案の定、得意としていた不動産登記の択一で失点が多くなってしまいました。やはりどれだけ模試を受けていても、本番で普段通り意思決定することは難しいということだと思います。

 

11 記憶力アップについて

記憶はとても大事です。理解と記憶とどっちが大事なのか、という話はここではしませんが、斬新な発想ではなく確かな知識が問われる試験である以上、記憶が大事なことに間違いありません。その記憶力アップのため私が取り組んだのは、効果が出なかった順にセサミン、禁酒、定期的な復習です。

(1)セサミンについて

記憶力が良くなると聞いたので、セサミンが入っているサプリメントを服用しました。効果は良く分かりません

→効果△

(2)禁酒について

私はお酒が好きで飲み会にも良く行っていましたが、2017年1月1日から試験日まで、禁酒することにしました。それは、飲酒が記憶の保持という観点から害悪であったからです(あくまで記憶の保持という観点から害悪なのであって、酒自体は良いものです。)。期間中はノンアルコールビールを飲んで耐えました。

→効果〇

(3)定期的な復習について

4②の表下段のとおりに復習しました。

→効果◎

 

12 次の試験に挑戦するかどうか迷っている皆様へ

私は、公務員を辞めて専業受験生となりました。これは私自身にとって大変困難な決断でした。突然の退職で、職場の方々にはご迷惑をおかけしてしまいました。受験勉強中は、ほとんど外出しない日々を送っていたため、気が滅入ることもあり、勉強期間が長くなればそれだけ不安な気持ちも増しました。このような期間を通して、私の心の支えとなってくれた、とあるアイドルグループの楽曲があります。最後に、その楽曲の一節を紹介して締めます。

 「やらぬ後悔より、やっちまった後悔がしたい!!」

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