司法書士試験<過去問題肢別チェック ■供託法「弁済供託」>
問題1 弁済供託は、被供託者が確定していない場合には、することができない。○か×か?
誤り。債権者不確知に基づく弁済供託(民494条2項)においては、後に確定されるべき債権者が被供託者となるが、供託の申請時には具体的に被供託者が確定していない。したがって、弁済供託は、被供託者が確定していなくても、することができる場合がある。【平21-9-オ】
問題2 不法行為による損害賠償金について債務者が自己の相当と認める賠償額に不法行為の日から提供の日までの遅延損害金を付して債権者に提供したがその受領を拒絶された場合には、債務者は、これを供託することができる。○か×か?
正しい。不法行為に基づく損害賠償債務について、供託すべき債務額は、客観的に確定しているものと考えられるので、民法494条の他の要件を充たす限り、賠償額に争いがある場合においても、弁済供託をすることができる(昭32.4.15-710号)。この場合、損害額に対し不法行為時から提供時までの遅延損害金を付して提供することを要する(昭55.6.9-3273号)。【平2-13-5】
問題3 土地の賃借人が弁済期に地代を支払うために賃貸人の住所に赴いたところ、賃貸人が不在であった場合には、賃借人は、再度弁済の提供をしない限り、受領不能を供託原因とする供託をすることができない。○か×か?
誤り。土地の賃借人が弁済期に地代を支払うために賃貸人の住所に赴いたところ、賃貸人が不在であった場合は、たとえそれが一時的であっても受領不能に該当するので、受領不能を原因として供託することができる。再度の弁済の提供は必要ない。【平3-12-1】
問題4 家屋の貸主の死亡により数人の相続人が相続によりその地位を承継した場合において、借主が相続人の1人に賃料を提供し、受領を拒否されたときは、借主は、賃料全額の供託をすることができる。○か×か?
誤り。家屋の貸主の死亡により数人の相続人が相続によりその地位を承継した場合、共同相続人中の1人に弁済の提供をし、受領を拒否されたことを理由に、賃料全額の弁済供託をすることはできない(昭36.4.4-808号)。この場合、借主は各相続人に対して持分に応じた賃料額をそれぞれ提供し、受領を拒否した者がいるときに、拒否した者を被供託者として相続分に応じた割合額につき弁済供託をすることができる。【平5-10-2】
問題5 借主が期限の利益を放棄して借受金の弁済をするにあたり、借受金と弁済期までの利息を提供したにもかかわらず貸主が受領を拒否したときは、借主は受領拒否を原因として供託をすることができる。○か×か?
正しい。金銭消費貸借の借主が期限の利益を放棄して弁済をする場合に、借用金額及び弁済期までの利息を提供して、受領を拒否されたのであれば、借主は受領拒否を原因として当該金額を供託することができる(昭39.2.3-43号)。【平5-10-3】
問題6 賃借人から賃料の提供を受けた賃貸人がその受取証書を交付しないときは、賃借人は、受領拒否を供託原因として供託することができる。○か×か?
正しい。弁済者は弁済の受領者に対して受取証書の交付を請求することができる(民486条)ので、本肢のようにこれを交付しない賃貸人は、弁済の受領を拒否しているとみなされる。したがって、賃借人は受領拒否を原因として弁済供託をすることができる(昭39.3.28-773号)。【平6-10-1】
問題7 婚姻中にされた妻名義の銀行預金について、離婚後、夫であった者が預金証書を所持し、妻であった者が印鑑を所持して、お互いに自らが預金者であることを主張して現に係争中である場合であっても、銀行は、債権者不確知を供託原因として供託することはできない。○か×か?
誤り。妻名義の銀行預金について、離婚後、夫婦がそれぞれ印鑑と証書の一方のみを所持して互いに自らが預金者であることを主張し、現に係争中である場合には、債権者不確知を原因として供託することができる(昭40.5.27-1069号)。本肢のような場合、銀行はいずれが真の権利者であるかを認定することが極めて困難だからである。【平6-10-3】
問題8 賃貸借契約における賃料債務について、賃貸人があらかじめ賃料の受領を拒否する旨を明らかにしている場合でも、その履行期が到来するまでは賃料の弁済供託をすることはできない。○か×か?
正しい。賃料は、一定期間使用したことの対価として発生するものなので、履行期到来前、つまり、いまだ弁済期の到来していない将来発生する地代や賃料については、先払いの特約がない限り、弁済供託をすることはできない(昭24.10.20-2449号)。【平11-10-1】
問題9 家賃として供託された弁済供託金については、損害金として還付請求をする旨を留保して払渡請求をすることはできない。○か×か?
正しい。供託物の性質について留保を付して還付請求することはできない。したがって、「家賃」として供託されたものを「損害金」として受領する旨留保してする還付請求は認められない。【平11-10-2】
問題10 債務者が債務の全額に相当するものとして弁済供託した場合であっても、債権者たる被供託者は、債務の一部に充当する旨を留保して供託金の還付請求をすることができる。○か×か?
正しい。例えば、家賃の弁済供託において、「1月の分」として供託されたものを「1月の分の一部」として還付請求することは認められている(昭42.1.12-175号)。なお、「1月の分」として供託されたものを「2月の分」として還付請求することはできない。【平11-10-3】
問題11 供託所への供託受諾の意思表示は、書面によってしなければならない。○か×か?
正しい。供託受諾の意思表示は、供託所に対して受諾書を提出することによって行う(供規47条)。【平11-11-ア】
問題12 供託受諾をすることができる者には、供託金還付請求権の仮差押債権者は含まれない。○か×か?
正しい。供託受諾の意思表示を有効になしうる者は、当該弁済供託の還付請求権を行使することができる者である。すなわち、被供託者、還付請求権についての譲受人、取立権を有する差押債権者、転付債権者及び債権者代位権を行使する一般債権者であり、仮差押債権者は、供託物の払渡請求権の処分を禁ずる地位にとどまるので、これにはあたらないとされている(昭38.2.4-351号)。【平11-11-オ】
問題13 供託所に対してする供託受諾の意思表示は、口頭によってすることはできない。○か×か?
正しい。供託受諾の意思表示は、供託所に対してすることができるが、供託所に対する供託受諾の意思表示は、供託を受諾する旨を記載した書面等を提出することによって行わなければならない(供規47条)。口頭によってすることはできない(昭36.4.4-808号)。【平19-10-イ】
問題14 供託物還付請求権の譲渡通知が供託所に送達された場合において、その記載内容により供託を受諾する旨の意思表示があったものと認められたときは、供託者は、供託物の取戻しを請求することができない。○か×か?
正しい。供託所に対して供託を受諾する旨を記載した書面(供規47条)とは、必ずしも供託受諾書として記載された書面でなくとも、その書面の記載の趣旨、内容から供託受諾の意思表示が判断されればよい。したがって、還付請求権の譲渡通知書の送付があった場合に、その記載内容から供託受諾の意思表示があったものと認められるときには、供託者は供託物の取戻しができなくなる(民496条1項)。【平19-10-エ】
問題15 毎月末に支払うべき地代又は家賃について過去の数か月分をまとめて提供したがその受領を拒否されたとして供託するには、各月分についてその支払日から提供日までの遅延損害金を付して提供したことが必要である。○か×か?
正しい。1か月分の滞納家賃を供託する場合、支払日から提供日までの遅延損害金を付さねばならないのであるから、過去の数か月分の場合には本肢のようになる。【平14-8-4】
問題16 持参債務について被供託者をA又はBとして債権者不確知を原因とする弁済供託をする場合において、Aの住所地の供託所とBの住所地の供託所とが異なるときは、いずれの供託所にも供託をすることができる。○か×か?
正しい。持参債務について被供託者を複数とする債権者不確知による弁済供託をする場合において、各債権者の住所地が異なるときは、供託者は、いずれか1人の債権者の住所地の管轄供託所に供託することができる(昭38.6.22-1794号)。【平26-10-ア】
問題17 被供託者をA又はBとして債権者不確知を原因とする弁済供託がされている場合には、第三者Cが、被告をA及びBとする訴えを提起し、当該供託に係る債権の実体上の権利をCが有することを確認する旨の確定判決を添付して供託金払渡請求をしたとしても、Cは、供託物の還付を受けることはできない。○か×か?
正しい。被供託者をA又はBとして債権者不確知を原因とする弁済供託がされている場合において、第三者Cが、A及びBを被告として債権の存在確認訴訟を提起して、A又はBとの関係で実体上の権利者であることを確定判決で証明しても、それは供託原因以外の事項であるため、これによりCが供託物の還付請求をすることはできない。【平26-10-オ】
問題18 弁済の目的物が株券である場合において、債権者がその受領を拒否したときは、債務者は、法務大臣が指定した倉庫営業者に当該株券を供託することができる。○か×か?
誤り。供託物が、金銭又は有価証券である場合には、法務局・地方法務局又は支局・法務大臣の指定する出張所が供託所となる(供1条)。株券は有価証券であるので、法務局等に供託しなければならない。なお、法務大臣の指定する倉庫営業者・銀行に供託をするのは、金銭又は有価証券以外の物品が供託物となる場合である(供5条1項)。【平16-9-イ】
問題19 家賃の減額につき当事者間に協議が調わない場合において、その請求をした賃借人が自ら相当と認める額を提供し、賃貸人がその受領を拒否したときは、賃借人は、その額を供託することができる。○か×か?
誤り。家賃の減額請求に対して当事者の協議が調わないときは、請求を受けた者、すなわち賃貸人は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、自己が相当と認める賃料を請求することができる(借地借家32条3項本文)。したがって、この場合には、賃借人は請求を受けた賃料を支払わなければならず、提供した自ら相当と認める額の家賃の受領を賃貸人が拒否したことを理由に、賃借人は、その額を供託することができない(昭46年度決議)。【平19-9-ア】
問題20 賃貸人Aが死亡した場合には、賃借人は、相続人の有無や相続放棄の有無を調査することなく、供託書の被供託者の住所氏名欄に「住所亡Aの相続人」の旨を記載して債権者不確知供託をすることはできない。○か×か?
誤り。賃貸人が死亡し、その相続人が不明である場合には、被供託者の住所氏名欄に「住所 亡何某の相続人」の旨を供託書に記載して、債権者不確知によって供託することができる。この場合、債務者は、債権者の相続関係について調査する義務を負わない(昭37.7.9-1909号)。【平19-9-エ】
問題21 指名債権が二重に譲渡され、確定日付のある各譲渡通知が同時に債務者に到達したときは、債務者は、債権者不確知を原因とする弁済供託をすることができる。○か×か?
誤り。確定日付ある複数の譲渡通知が、同時に債務者に到達したときは、各譲受人は債務者に対してそれぞれ譲受債権についてその全額の弁済を請求でき、譲受人の1人から請求を受けた債務者は、他の譲受人に対する弁済その他の債務消滅事由がない限り、単に同順位の譲受人が他に存在することを理由として、弁済の責めを免れることができない(最判昭55.1.11)。この判例の見解から、債権譲渡通知書が同時に到達したことのみでは、債権者不確知には当たらず、債務者は、債権者不確知を原因とする弁済供託をすることはできない。【平20-9-ア】
問題22 地代の弁済供託をする場合において、債務履行地の属する最小行政区画内に供託所がないときは、その地を包括する行政区画内における最寄りの供託所に供託すれば足りる。○か×か?
正しい。弁済供託は、債務履行地の属する最小行政区画内に供託所がないときは、その地を包括する行政区画内における最寄りの供託所に供託すれば足りる(昭23.8.20-2378号)。【平20-9-ウ】
問題23 持参債務の債務者が弁済期日に弁済をしようとして電話で債権者の在宅の有無をその住居に問い合わせた場合において、債権者その他の弁済の受領の権限を有する者が不在で、留守居の者から分からない旨の回答があったときは、債務者は、受領不能を原因とする供託をすることができない。○か×か?
誤り。持参債務の債務者が弁済期日に弁済をしようとして電話で債権者の在宅の有無をその住居に問い合わせた場合において、債権者その他の弁済の受領の権限を有する者が不在で、留守居の者から分らない旨の回答があったときは、債務者は、受領不能を原因とする供託をすることができる(大判昭9.7.17)。【平22-9-ウ】
問題24 弁済の目的物について損傷による価格の低落のおそれがあるときは、弁済者は、裁判所の許可を得て、弁済の目的物を競売に付し、その代金を供託することができる。○か×か?
正しい。弁済の目的物について滅失、損傷その他の事由による価格の低落のおそれがあるときは、弁済者は、裁判所の許可を得て、弁済の目的物を競売に付し、その代金を供託することができる(民497条2号)。【平25-9-ア改】
問題25 建物の賃貸借における賃料の増額について当事者間に協議が調わない場合において、賃借人が賃貸人に従来の賃料と同じ額を相当と認める額として弁済の提供をしたのに対し、賃貸人がその受領を拒否したときは、賃借人は、その額の弁済供託をすることができる。○か×か?
正しい。賃料の増額請求があり、当事者間に協議が調わないときは、賃借人は従来の賃料と同じ額を相当と認める額として支払うことで足りる(借地借家32条2項前段)。そして、建物の賃貸借における賃料の増額請求につき当事者間に協議が調わない場合において、賃借人が従前の賃料と同じ額を自己の相当と認める額として賃貸人に弁済の提供をしたのに対し、受領を拒否されたときは、賃借人は、その額を供託することができる(昭41.7.12-1860号)。【平25-9-エ】
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