司法書士試験<過去問題肢別チェック ■憲法「統治」

問題1 議院の国政調査権は、立法のために特別に与えられた権限であるから、その対象は立法をするのに必要な範囲に限られ、個別具体的な行政事務の処理の当否を調査する目的で国政調査権を行使することはできない。○か×か?

誤り。議院の国政調査権(憲62条)は、立法、行政、司法を含んだ国の政治全般について調査を行う権能であって、立法のためだけに特別に与えられた権限ではない。したがって、国政調査権の及ぶ範囲は、国政に関連のない純粋に私的な事項を除き、国の政治全般について及ぶのであり、行政監督の権能を行使する目的で、個別具体的な行政事務の処理の当否について、国政調査権を行使することも認められる。【平26-2-1】

問題2 法律及び政令には、全て主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。○か×か?

正しい。法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする(憲74条)。【平27-2-エ】

問題3 国会議員でない国務大臣は、国会議員から答弁又は説明のため出席を求められた場合に限り、議院に出席して発言することができる。○か×か?

誤り。内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかわらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる(憲63条前段)。【平27-2-オ】

問題4 内閣総理大臣が衆議院の解散によって国会議員の地位を失った場合には、内閣総理大臣が欠けたことになるため、内閣は、総辞職しなければならない。○か×か?

誤り。内閣が総辞職するのは、①内閣総理大臣が欠けたとき(憲70条)、②衆議院によって内閣不信任案が可決されるか内閣信任案が否決されたにもかかわらず、内閣が衆議院を解散しなかった場合(憲69条)、③衆議院議員総選挙後に初めて国会の召集があったとき(憲70条)、である。衆議院の解散によって内閣が辞職するわけではない。なお、内閣が総辞職した後でも、次の内閣総理大臣が任命されるまで、暫定的に内閣のメンバーはその職務を続ける(憲71条)。【平16-1-2】

問題5 国務大臣は、内閣総理大臣から罷免されることによってその地位を失うが、罷免については、天皇の認証を要しない。○か×か?

誤り。国務大臣が罷免された場合、その罷免されたことについて天皇の認証が必要である(憲7条5号)。【平16-1-3】

問題6 最高裁判所の裁判官及び下級裁判所の裁判官の任命は、内閣が行う。○か×か?

誤り。最高裁判所の長たる裁判官は内閣の指名に基づいて天皇が任命する(憲6条2項)。一方、最高裁判所の長官以外の裁判官と下級裁判所の裁判官は内閣が任命する(憲79条1項、80条1項)。よって、最高裁の裁判官の任命を内閣が行うと記述している点が誤っている。【平15-3-1】

問題7 裁判所は、衆議院及び参議院の議員の資格に関する争訟の裁判をすることができる。○か×か?

誤り。衆議院及び参議院の議員の資格に関する争訟は各議院が行う(憲55条)。各議院の議員の資格に関する争訟は各議院の内部に関する議院の自律権にかかわる事項であるため、司法権の介入を排除したのである。よって、裁判所が当該争訟を裁判できるとする本肢は誤っている。【平15-3-2】

問題8 裁判所は、裁判官の全員一致で、判決を公開法廷で行わない場合がある。○か×か?

誤り。裁判の対審及び判決は公開しなければならない(憲82条1項)。しかし、対審に関しては、裁判官全員が公の秩序や善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には、公開法廷で行わないことが許されている(憲82条2項本文)。但し、判決に関しては必ず公開法廷による。したがって、本肢は誤っている。【平15-3-3】

問題9 行政機関の審判に対する裁判所への出訴を認めない旨の立法は、憲法に違反しない。○か×か?

誤り。司法権はすべて最高裁判所を頂点とする裁判所が行う(憲76条1項)。例外的に一定の専門分野(独占禁止法事件、特許事件等)に関しては、行政機関が審判を行うことが認められている。しかし、その結果に不満な者には、司法裁判所へその事件を判断してもらう権利が確保されている。即ち、行政機関が審判をすることができるといっても、その次に司法裁判所の判断が後ろに控えているのである(行政機関が終審として裁判できない。憲76条2項後段)。したがって、本肢は誤っている。【平15-3-4】

問題10 法律の憲法適合性を審査する権限は、最高裁判所だけでなく、下級裁判所も有する。○か×か?

正しい。法律の憲法適合性を審査する権限は条文上、最高裁となっている(憲81条)。しかし、この規定は、下級裁判所が違憲立法審査を行えないというのではなく、最高裁の判断が最終判断であるという意味だと解されている(最判昭25.2.1)。【平15-3-5】

問題11 下級裁判所の裁判官は、弾劾裁判所の裁判による場合、いわゆる分限裁判によって心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合又は分限裁判によって懲戒された場合でなければ、罷免されることはない。○か×か?

誤り。下級裁判所の裁判官は、弾劾裁判所の裁判による場合(憲78条前段、64条)及び分限裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合(憲78条前段)でなければ罷免されない。したがって、懲戒による罷免は許されない(裁判官分限法2条参照)。【平23-3-オ】

問題12 両議院は、それぞれその総議員の3分の1以上の出席がなければ、議決をすることができないだけでなく、議事を開くこともできない。○か×か?

正しい。両議院は、それぞれその総議員の3分の1以上の出席がなければ、議決をすることができないだけでなく、議事を開くこともできない(憲56条1項)。【平26-2-2】

問題13 国家試験における合格又は不合格の判定は、学問上の知識、能力、意見等の優劣、当否の判断を内容とする行為であるから、試験実施機関の最終判断に委ねられるべきものであって、司法審査の対象とならない。○か×か?

正しい。司法権の固有の内容として裁判所が審判し得る対象は、裁判所法3条にいう「法律上の争訟」に限られ、国家試験における合格、不合格の判定の当否は学問又は技術上の知識、能力、意見等の優劣、当否の判断を内容とする行為であるから、試験実施機関の最終判断に任せられる(最判昭41.2.8)。【平26-3-ア】

問題14 当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係に関する訴訟であっても、宗教団体の内部においてされた懲戒処分の効力が請求の当否を決する前提問題となっており、宗教上の教義や信仰の内容に立ち入ることなくしてその効力の有無を判断することができず、しかも、その判断が訴訟の帰すうを左右する必要不可欠のものであるときは、当該権利義務ないし法律関係は、司法審査の対象とならない。○か×か?

正しい。具体的な権利義務ないし法律関係に関する訴訟であっても、宗教団体内部でされた懲戒処分の効力が請求の当否を決する前提問題となり、その効力の有無が当事者間の紛争の本質的争点をなすとともに、それが宗教上の教義信仰の内容に深くかかわっているときは、その訴訟は、法律上の争訟に当たらない(最判平元.9.8)。【平26-3-イ】

問題15 地方議会は自律的な法規範を持つ団体であって、当該規範の実現については内部規律の問題として自治的措置に任せるべきであるから、地方議会議員の除名処分については、司法審査の対象とならない。○か×か?

誤り。地方議会議員の除名処分は、議員の身分の喪失に関する重大事項で、単なる内部規律の問題にとどまらないから、司法裁判の権限内の事項である(最判昭35.10.19)。また、地方議会議員に対する出席停止の懲戒の適否も、司法審査の対象となる(最判令2.11.25)。【平26-3-ウ】

問題16 政党は、議会制民主主義を支える上において極めて重要な存在であるから、その組織内の自律的な運営として党員に対してした処分は、それが一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまるものであっても、司法審査の対象となる。○か×か?

誤り。政党が党員に対してした処分が一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的問題にとどまる限り、裁判所の審判権は及ばず、一般市民としての権利利益を侵害する場合でも、審理は、当該政党の自律的に定めた規範が公序良俗に反するなど特段の事情がない限りその規範に照らし、またその規範がないときは条理に基づき、処分が適正な手続にのっとってなされたか否かの点に限られる(最判昭63.12.20)。【平26-3-エ】

問題17 衆議院の解散については、たとえその有効又は無効の判断が法律上可能である場合であっても、その判断は主権者たる国民に対して政治的責任を負う政府、国会等の政治部門の判断に委ねられ、最終的には国民の政治的判断に委ねられるべきであり、司法審査の対象とならない。○か×か?

正しい。直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為は、それが法律上の争訟となり、有効無効の判断が法律上可能である場合であっても裁判所の審査権の外にあり、その判断は主権者たる国民に対して政治的責任を負う政府、国会等の政治部門の判断に任され最終的には国民の政治判断にゆだねられている(最判昭35.6.8)。衆議院の解散の当否は司法審査の対象とならない。【平26-3-オ】

問題18 憲法第81条の明文上は、「最高裁判所」と規定されているが、下級裁判所も違憲審査権を有する。○か×か?

正しい。「憲法81条は下級裁判所が違憲審査権を有することを否定する趣旨を持つものではない」とするのが判例(最判昭25.2.1)であり、下級裁判所も違憲審査権を有している。【平25-3-ア】

問題19 裁判所のする判決も憲法第81条の「処分」の一種として、違憲審査の対象となる。○か×か?

正しい。「裁判は一般的抽象的規範を制定するものではなく個々の事件について具体的処置をつけるものであるから、その本質は一種の処分である。一切の処分は行政処分たると裁判たるとを問わず、終審として最高裁判所の違憲審査権に服する」とするのが判例(最判昭23.7.8)である。判決も「処分」の一種として、違憲審査の対象となる。【平25-3-イ】

問題20 両議院の自律権に属する行為は違憲審査の対象となるものの、国の統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為は違憲審査の対象とはならない。○か×か?

誤り。「両議院の自律権に属する行為は、裁判所は、両院の自主性を尊重すべく、制定の議事手続に関する事実を審理して、その有効無効を判断すべきではない」(最判昭37.3.7)という論理で、違憲審査の対象とならない。【平25-3-ウ】

問題21 憲法違反となるかどうかが争われている法令の規定について、複数の解釈が成り立ち、ある解釈を採ると違憲となるが、別の解釈を採れば合憲となるというような場合、裁判所は、争われた法令の規定そのものを常に違憲と判断することになる。○か×か?

誤り。憲法違反となるかどうかが争われている法令の規定について、複数の解釈が成り立ち、ある解釈を採ると違憲となるが、別の解釈を採れば合憲となるというような場合、「合理的な法解釈の範囲内において可能である限り、憲法と調和するように解釈してその効力を維持すべきである」とするのが判例(最判昭59.12.12)である。争われた法令の規定そのものを常に違憲と判断するものではない。【平25-3-オ】

問題22 政治犯罪、出版に関する犯罪又は憲法第3章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審及び判決は、常に公開しなければならない。○か×か?

正しい。裁判の対審及び判決は公開法廷でなされるのが原則であるが、裁判官全員の一致によって公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には、対審を非公開とすることができる(憲82条2項本文)。ただし、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第3章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常に公開しなければならない(憲82条2項但書)。つまり、裁判判決は例外なく公開されなければならず、対審については非公開の場合もあるが、本肢のように国民の人権が問題となっているような事件の対審は公開が要求される。【平20-2-ア】

問題23 予算については、衆議院の優越が定められており、参議院が衆議院と異なった議決をした場合であっても、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び議決したときは、衆議院の議決を国会の議決とすることができる。○か×か?

誤り。参議院が衆議院と異なった議決をした場合に、衆議院の再議決を国会の議決とするのは、法律案の場合である(憲法59条2項)。予算の場合は、再議決の制度ではなく、参議院で衆議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取った後、国会休会中の期間を除いて30日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする(憲60条2項)。【平26-2-3】

問題24 憲法第82条は、裁判を一般に公開して裁判が公正に行われることを制度として保障するが、各人が裁判所に対して傍聴することを権利として要求できることまでを認めたものではないことはもとより、傍聴人に対して法廷でメモを取ることを権利として保障しているものでもない。○か×か?

正しい。憲法82条の裁判の公開の規定は、裁判の公開という制度を保障したにすぎず、各人に裁判を傍聴することを権利として認めたわけではない。さらに傍聴人に対して法廷でメモを取ることも権利として認めたわけでもない。判例も、「憲法82条1項の規定は、各人が裁判所に対して傍聴することを権利として要求できることまでを認めたものでない。」又、「傍聴人が法廷においてメモを取る自由は、憲法21条1項の規定によって直接保障されている表現の自由そのものとは異なっている。」とした(最判平元.3.8)。【平20-2-イ】

問題25 家事審判法に基づく夫婦同居の審判は、夫婦同居の義務等の実体的権利義務自体を確定する趣旨のものではなく、これら実体的権利義務の存することを前提として、同居の時期、場所、態様等について具体的内容を定め、また必要に応じてこれに基づき給付を命ずる処分であると解されるから、公開法廷で行わなくても憲法第32条に違反しない。○か×か?

正しい。夫婦の同居義務は法律上の権利義務であるので、かかる権利義務自体を終局的に確定するには公開の法廷における対審・判決による必要がある。しかし、家事事件手続法上の同居を命じる審判手続は、夫の同居の義務等の実体的権利義務自体を確定する趣旨のものではなく、これら実体的権利義務の存することを前提にして、例えば夫の同居の時期、場所、態様等について具体的内容を定める処分である。そして、家事審判法の審判には形成的効力があるため、それ自体は争えないが、その前提たる同居義務自体については公開法廷における対審・判決を求める途が残されている。以上より、夫婦の同居を命じる審判に関する家事事件手続法の規定は憲法32条、82条に違反しない(最決昭40.6.30)。【平20-2-エ】

問題26 刑事確定記録の閲覧は、表現の自由等を定めた憲法第21条によっては必ずしも国民の権利として保障されているものではないが、憲法第82条によって国民の権利として保障されたものであるから、これを制限する旨の法の規定は憲法に違反する。○か×か?

誤り。刑事確定記録の閲覧については、公の秩序や善良の風俗を害するおそれといった法が定める除外事由に該当する場合には記録閲覧できない(刑事確定訴訟記録法4条2項)。この国民の刑事確定記録の閲覧を制限している刑事確定訴訟記録法4条2項は、国民の刑事確定訴訟記録法の閲覧を制限するものではあるが、国民には刑事確定訴訟記録法の閲覧を求める法的権利はないので、これを制限する法律を作成しても憲法に違反しないのである。判例も「憲法の右の各規定(憲21条、82条)が刑事確定訴訟記録の閲覧を権利として要求できることまでを認めたものでないことは、当裁判所大法廷判例の趣旨に徴して明らかである。」としている(最決平2.2.16)。【平20-2-オ】

問題27 最高裁判所の裁判官は、その在任中、衆議院議員総選挙が行われるたびに国民の審査に付され、投票者の多数がその裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。○か×か?

誤り。最高裁判所裁判官は、その任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に国民審査に付される。そして、それから10年経過後に行われる衆議院議員総選挙の際にも再び国民審査に付される(憲79条2項)。ということは、ある最高裁判所の判事が任命後に行われた総選挙の際に国民審査に付された後、それから10年経過する前に衆議院議員総選挙が行われた場合、その判事については、国民審査に付されないのである。よって、衆議院議員総選挙が行われるたびに国民審査が行われるという部分が誤っている。【平16-1-4】

問題28 下級裁判所の裁判官は、行政機関による懲戒処分を受けず、また、弾劾裁判所が行う裁判によらない限り、罷免されることはない。○か×か?

誤り。下級裁判所の裁判官が罷免されるのは、①心身の故障を理由とする裁判での罷免(憲78条)、②国会が設置した弾劾裁判による罷免(憲64条)、の場合である。よって、弾劾裁判によらない限り罷免されないという部分が誤っている。なお、最高裁判所裁判官は、上記①、②以外にも、③国民審査による罷免(憲79条2項、3項)もあることに注意すること。【平16-1-5】

問題29 地方公共団体が条例により税率や税目を定めることは、許されない。○か×か?

誤り。税率や税目については、租税法律主義の観点から国会の議決(法律)によって決せられるべきであるのが原則である。しかし、地方公共団体が地方税についての税目や税率などを決定する場合には、国会が制定する法律ではなく、地方公共団体に設置されている地方議会が制定する条例で決定することが認められている。つまり、租税法律主義を定めた憲法84条の「法律」には「条例」も含まれると解されているのである。地方議会は地方公共団体の住民の代表者が集まる機関であるので、その機関が地方税について条例で決定しても財政民主主義、租税法律主義の理念(税などの経済的負担はその負担者が決定する)に反することがないからである。【平18-2-1】

問題30 法律案と同様に、予算は、衆議院と参議院のいずれに先に提出してもよい。○か×か?

誤り。予算については衆議院に先に提出しなければならない(憲60条1項)。これを衆議院における予算先議権という。【平18-2-2】

問題31 予算は、内閣が作成し、国会に提出するものであって、国会において予算を修正することは、許されない。○か×か?

誤り。国会は内閣が作成した予算を審議・議決するが、その際に内閣提出の予算を修正することは可能であると解釈されている。内閣の予算発案権を害さない程度の修正であるのなら、財政民主主義の理念に合致するからである。【平18-2-3】

問題32 衆議院で可決された予算は、参議院で否決された場合でも、衆議院で3分の2以上の多数により再び可決されたときは、予算として成立する。○か×か?

誤り。予算が衆議院で可決されたが、参議院で否決された場合、両議院の協議会を開き、妥協点が見つからなければ、衆議院の議決が国会の議決となる(憲60条2項)。【平18-2-4】

問題33 決算は、会計検査院が検査して、内閣が国会に提出するものであって、国会における審査の結果は、既にされた支出行為の効力に影響しない。○か×か?

正しい。決算は会計検査院が検査する。そして、内閣は次の年度にその検査報告とともにこれを国会に提出して(憲90条1項)、その審議・議決を経ることになるが、その議決は既になされた支出行為に影響しないと解釈されている。【平18-2-5】

問題34 両議院の議員は、院内で行なった演説、討論又は表決について院外で責任を問われないため、議員が行ったこれらの行為につき、国が賠償責任を負うことはない。○か×か?

誤り。国会議員が国会の質疑、演説、討論等の中でした個別の国民の名誉又は信用を低下させる発言につき、国家賠償法1条1項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が肯定されるためには、当該国会議員が、その職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは、虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、国会議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があることを必要とする、と解するのが判例(最判平9.9.9)である。したがって、両議院の議員が院内で行なった演説、討論又は表決について、国が賠償責任を負うこともあり得る。【平26-2-4】

問題35 憲法第92条にいう「地方自治の本旨」には、一般に、国から独立した団体が自己の事務を自己の機関により自己の責任において処理するという団体自治の原則が含まれると解されている。○か×か?

正しい。地方自治の本旨(憲92条)には、団体自治と住民自治という2つの意味がある。団体自治とは、国から独立した団体が自己の事務を自己の機関により自己の責任において処理することを意味し、住民自治とは、地域の住民が地域的な行政需要を自己の意思に基づき自己の責任において充足することを意味する。【平22-3-①】

問題36 憲法上の地方公共団体の意義について、判例は、憲法上の地方公共団体であるといえるためには、住民の共同体意識という社会的基盤が存在し、沿革上及び行政上の実態として地方自治の基本的権能を付与された地域団体であることを必要とするという立場を採っている。○か×か?

正しい。判例は、憲法上の地方公共団体といえるためには、単に法律で地方公共団体として取り扱われているということだけでは足らず、事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識をもっているという社会的基盤が存在し、沿革的にみても、また現実の行政の上においても、相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等地方自治の基本的権能を付与された地域団体であることを必要とするとしている(最判昭38.3.27)。【平22-3-③】

問題37 憲法第94条の条例制定権の根拠について、判例は、条例は、地方自治の本旨に基づき、直接憲法第94条により法律の範囲内において制定する権能を認められた自治立法であるという立場を採っている。○か×か?

正しい。条例制定権(憲94条)の根拠について、判例は、地方公共団体の制定する条例は、憲法が特に民主主義政治組織の欠くべからざる構成として保障する地方自治の本旨に基づき、直接憲法94条により法律の範囲内において制定する権能を認められた自治立法にほかならないとしている(最判昭37.5.30)。【平22-3-⑤】

問題38 特別会は、衆議院の解散に伴う衆議院議員の総選挙後に召集されるものであり、その会期中は、参議院は閉会となる。○か×か?

誤り。特別会は、衆議院の解散に伴う衆議院議員の総選挙後に召集される国会であり(憲54条1項)、衆議院だけが召集され、開会されるものではない。両議院の召集、開会及び閉会は、同時におこなわれるのが原則であり(同時活動の原則)、特別会の会期中、参議院が閉会となるものではない。【平26-2-5】

問題39 国会議員は、所属議院が行う資格争訟の裁判により議席を失うことがあるが、この裁判で資格なしと判断された議員は、裁判所に不服を申し立てることができない。○か×か?

正しい。両議院は、各々その所属する議員についての資格争訟の裁判を行う権限がある(憲55条)。この権限は、各議院の自律権を認めたものなので、その争訟の結果に不服があった場合でも、司法裁判所に訴えることは認められていない。もし、それを認めると各議院が自律的に決定した事項に対して裁判所が干渉することになってしまうからである。【平16-1-1】

問題40 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負うため、ある国務大臣につき両議院で不信任決議案が可決された場合には、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。○か×か?

誤り。衆議院で不信任の決議案を可決した場合に、10日以内に衆議院が解散されない限り、内閣が総辞職をしなければならないのは、内閣の不信任の決議が可決されたときである(憲69条)。国務大臣について両議院で不信任決議案が可決されたとしても、政治的な効力はともかく、法的な効力は生じない。10日以内に衆議院が解散されない限り、内閣が総辞職をしなければならないものではない。【平27-2-ア】

問題41 内閣総理大臣について、衆議院と参議院とが異なった指名の議決をしたため、法律の定めるところにより、両議院の協議会が開かれたが、そこでも意見が一致しなかった場合には、衆議院の議決が国会の議決となる。○か×か?

正しい。内閣総理大臣について、衆議院と参議院とが異なった指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする(憲67条2項前段)。【平27-2-イ】

問題42 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。○か×か?

正しい。国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない(憲75条本文)。【平27-2-ウ】

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