司法書士試験<過去問題肢別チェック ■刑法「刑法総論 責任」>
問題1 Aは、Bを脅迫しようと考え、パソコン上で「お前を殺してやる」との内容の電子メールを作成し、これを送信したが、その際、送信先を間違えてCに送信してしまい、Cがこれを読んで畏怖した。この場合、Aには、Cに対する脅迫罪が成立する。○か×か?
正しい。Bを脅迫しようとして、間違えてCを脅迫した具体的事実の錯誤の問題である。事実の錯誤に関し判例(最判昭53.7.28)は、犯罪の故意があるとするには、犯人の認識した事実と発生した事実とが法定の範囲内で一致すれば足りるとする、法定的符合説の立場を採用している。したがって、Bを脅迫しようとして、間違えてCを脅迫した本肢の場合、同一の構成要件内における具体的事実の錯誤であるので、Aには、Cに対する脅迫罪が成立する。【平27-24-ア】
問題2 Aは、酒場で口論となったBの顔面を拳で殴り、その結果、Bが転倒して床で頭を強く打ち、脳挫傷により死亡したが、Aは、Bを殴った際、Bが死亡するとは認識も予見もしていなかった。この場合、Aには、傷害致死罪が成立する。○か×か?
正しい。暴行の故意で人を傷害し、その結果として被害者が死亡した場合であり、結果的加重犯の問題である。傷害致死という結果的加重犯の成立に、行為者が加重結果を認識又は予見していることを必要とするかどうかについて、判例(最判昭32.2.26)は、暴行と傷害致死の結果との間に因果関係の存する以上、被告人において致死の結果をあらかじめ認識、予見する可能性は必要ではないという立場である。したがって、本肢では、Aには、傷害致死罪が成立する。【平27-24-エ】
問題3 過失行為は、法律に過失行為を処罰する規定がある場合のほかは、処罰されない。○か×か?
正しい。刑法は「罪を犯す意思がない行為は、罰しない」と規定し、故意犯処罰を原則としている(刑38条1項本文)。したがって、過失行為は、故意がないので、法律に過失行為を処罰する規定がある場合のほかは、処罰されない(刑38条1項ただし書)。【平元-25-1】
問題4 重過失とは、行為者に通常人より重い注意義務が課され、このような重い注意義務に違反することをいう。○か×か?
誤り。重過失とは、通常の過失に対して、行為者の注意義務に違反した程度が著しい場合を意味する。すなわち、行為者が、些細な注意を払うことによって注意義務を尽くすことができたのに、これを怠って注意義務に違反し、重い刑法的評価を加えられる場合をいう。行為者に通常人より重い注意義務が課される場合をいうのではない。【平元-25-3】
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