司法書士試験<過去問題肢別チェック ■商業登記法「募集株式の発行、株式に関する登記」>

問題1 新株予約権を発行している会社が新株予約権の行使期間の初日の到来前に募集株式を発行した場合には、当該募集株式の発行後の発行済株式総数に新株予約権の目的である株式の数を加えた数が当該会社の発行可能株式総数を超えるときであっても、当該募集株式の発行による変更の登記を申請することができる。○か×か?

正しい。新株予約権を発行している会社が新株予約権の行使期間の初日の到来後に募集株式を発行する場合には、新株予約権者が新株予約権を行使することにより取得することとなる株式の数に相当する株式を、発行可能株式総数の中に留保しなければならない(会113条4項)。しかし、新株予約権の行使期間の初日の到来前の段階では、新株予約権が行使されることはないため、発行可能株式総数に係る留保を考慮する必要がない(会113条4項括弧書参照)。【平18-33-ア】

問題2 公開会社でない株式会社が、株主に株式の割当てを受ける権利を与えてする募集株式の発行の場合において、募集株式の引受けの申込みの期日が、募集事項の決定をした株主総会の決議の日の10日後であったときは、募集株式の発行による変更の登記の申請書に、期間の短縮についての総株主の同意を証する書面を添付しなければならない。○か×か?

正しい。株主割当ての方式で募集株式を発行するに際しては、募集事項等を株主に通知しなければならない(会202条4項)。したがって、株主割当ての方法による募集株式の発行の募集事項等の決定をした日と募集株式の引受けの申込期日との間隔が2週間ない場合は、募集株式の発行による変更の登記の申請書に期間の短縮についての総株主の同意を証する書面を添付しなければならない(昭54.11.6-5692号)。【平26-33-エ】

問題3 公開会社が株主に株式の割当てを受ける権利を与えないでする募集株式の発行の場合において、出資の目的が金銭以外の財産であるところ、募集株式の発行による変更の登記の申請書に添付された書面が現物出資財産について募集事項の決定の際に定められた価格が相当であることについて税理士の証明を記載した書面であるときは、当該税理士が税理士の登録をしていることを証する書面を添付しなければならない。○か×か?

誤り。出資の目的が金銭以外の財産である場合において、現物出資財産について募集事項の決定の際に定められた価格が相当であることについて税理士の証明があるときは、募集株式の発行による変更の登記の申請書には、税理士の証明を記載した書面及びその附属書類を添付する(商登56条3号ハ)。しかし、当該税理士が税理士の登録をしていることを証する書面の添付は必要でない(平14.12.27-3239号)。【平27-30-ウ】

問題4 公開会社が株主に株式の割当てを受ける権利を与えないでする募集株式の発行の場合において、新株予約権を発行している当該会社が当該新株予約権の行使をすることができる期間の初日が到来する前に募集株式を発行したところ、当該募集株式の発行後の発行済株式総数に新株予約権の目的である株式の数を加えた数が当該会社の発行可能株式総数を超えるときは、当該会社の発行可能株式総数の変更の登記をしなければ、当該募集株式の発行による変更の登記を申請することはできない。○か×か?

誤り。新株予約権を発行している会社が、当該新株予約権の行使をすることができる期間の初日が到来した後に募集株式を発行する場合は、新株予約権の目的である株式の数を発行可能株式総数の枠内に留保しておかなければならない(会113条4項)。そのため、募集株式の発行後の発行済株式総数に新株予約権の目的である株式の数を加えた数が当該会社の発行可能株式総数を超えるときは募集株式の発行をすることはできない。しかし、本肢の場合、新株予約権の行使をすることができる期間の初日が到来する前に募集株式を発行する場合であるので、当該新株予約権の目的である株式の数を発行可能株式総数の枠内に留保する必要はなく、発行可能株式総数の変更の登記をしなくても、当該募集株式の発行による変更の登記を申請することができる。【平27-30-エ】

問題5 募集株式の出資の目的が市場価格のある有価証券である場合において、募集事項において当該有価証券の価額を定めた価額決定日に当該有価証券が公開買付け等の対象となっておらず、かつ、当該募集事項に定められた価額が当該価額決定日における当該有価証券を取引する市場における最終の価格を超えないときは、募集株式の発行による変更の登記の申請書には、検査役の調査報告を記載した書面及びその附属書類に代えて当該有価証券の市場価格を証する書面を添付することができる。○か×か?

正しい。募集株式の出資の目的が市場価格のある有価証券である場合において、募集事項において当該有価証券の価額を定めた価額決定日に当該有価証券が公開買付け等の対象となっておらず、かつ、当該募集事項に定められた価額が当該価額決定日における当該有価証券を取引する市場における最終の価格を超えないとき(会施規43条)は、募集株式の発行による変更の登記の申請書には、検査役の調査報告を記載した書面及びその附属書類に代えて、当該有価証券の市場価格を証する書面を添付することができる(商登56条3号ロ)。【平20-35-ア】

問題6 定款にその発行する株式の全部の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定めを設けている株式会社において、定款に当該株式会社が承認しなかった場合における指定買取人の定めを設けたときであっても、当該指定買取人の定めについて登記の申請をすることはできない。○か×か?

正しい。定款にその発行する株式の全部の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定めを設けている株式会社において、定款に当該株式会社が承認しなかった場合における指定買取人の定めを設けたときであっても、当該指定買取人の定めは登記事項とされていないから、指定買取人について登記の申請をすることはできない(会107条2項1号、平18.3.31-782号)。 【平20-35-オ】

問題7 株主名簿管理人の設置による変更の登記の申請書には、定款及びその者との契約を証する書面を添付しなければならない。○か×か?

正しい。株主名簿管理人の設置による変更の登記の申請書には、定款及びその者との契約を証する書面を添付しなければならない(商登64条)。【平25-30-ア】

問題8 発行済株式の総数が10万株である場合において、単元株式数を1,000株とする単元株式数の設定による変更の登記の申請は、することができない。○か×か?

正しい。1単元の株式の数は、1,000及び発行済株式総数の200分の1を超えることはできない(会188条2項、会施規34条)。発行済株式の総数が10万株である場合において、単元株式数を1,000株とする1単元の株式数の設定は、発行済株式総数の200分の1を超えることになるので、変更の登記の申請はすることができない。【平25-30-オ】

問題9 現に2以上の種類の株式を発行している会社は、株式の種類ごとに異なった株式の併合に係る併合比率でした株式の併合による変更の登記の申請をすることができる。○か×か?

正しい。種類株式発行会社では、株式の併合は株式の種類ごとに行われる(会180条2項3号)。したがって、現に2以上の種類の株式を発行している会社は、株式の種類ごとに異なった株式の併合に係る併合比率でした株式の併合による変更の登記の申請をすることができる。【平25-31-ウ】

問題10 株券発行会社がする株式の併合による変更の登記の申請書には、株券の提出に関する公告をしたことを証する書面又は当該株式の全部について株券を発行していないことを証する書面を添付しなければならない。○か×か?

正しい。株券発行会社がする株式の併合による変更の登記の申請書には、株券の提出に関する公告をしたことを証する書面又は当該株式の全部について株券を発行していないことを証する書面を添付しなければならない(商登61条、59条1項2号)。【平25-31-オ】

問題11 取締役会設置会社であっても、譲渡による株式の取得について株主総会の承認を要する旨の株式の譲渡制限に関する規定の設定の登記の申請をすることができる。○か×か?

正しい。譲渡による株式の取得につき会社の承認を要する場合の承認機関については、取締役会設置会社にあっては取締役会であることが原則であるが、定款で別段の定めをすることができる(会139条1項)。したがって、定款で、譲渡による株式の取得について株主総会の承認を要する旨を定めている会社では、取締役会設置会社であっても、株主総会の承認を要する旨の株式の譲渡制限に関する規定の設定の登記の申請をすることができる。 【平19-30-エ】

問題12 種類株式の内容の要綱を登記した場合には、当該種類の株式を初めて発行する時までに当該株式の内容を定め、発行する各種類の株式の内容の変更の登記を申請しなければならない。○か×か?

正しい。種類株式の内容の要綱を登記した場合には、当該種類の株式を初めて発行する時までに当該株式の内容を定めなければならない(会108条3項前段)。種類株式の内容は登記事項である(会911条3項7号)ため、当該株式の内容を定めたときは、発行する各種類の株式の内容の変更の登記を申請しなければならない(会915条1項)。【平18-33-オ】

問題13 種類株式の内容として株式譲渡制限を定款で定めた場合には、当該種類株式の種類株主を構成員とする種類株主総会を譲渡承認機関とする内容の登記を申請することができる。○か×か?

正しい。株式会社が、株式の譲渡に係る承認をするか否かの決定をするには、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならないが、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない(会139条1項)。したがって、種類株式発行会社が、種類株式の内容として株式譲渡制限を定款で定めた場合、承認機関を他の機関、例えば本肢のように、当該種類株式の種類株主を構成員とする種類株主総会を譲渡承認機関とすることも可能である。そして、譲渡制限株式の内容は登記しなければならない(会911条3項7号)ので、種類株主総会を譲渡承認機関とする内容の登記を申請することができる。【平23-30-ア】

問題14 株券発行会社であっても、譲渡承認機関を取締役会から株主総会に変更したことを内容とする登記の申請をする場合には、当該登記の申請書には、株券の提出に関する公告をしたことを証する書面の添付を要しない。○か×か?

正しい。現に株券を発行している株券発行会社が株式譲渡制限の定めを「設ける」定款変更をする場合は、株券提供公告をしなければならず(会219条1項1号)、株券提供公告をしたことを証する書面を添付しなければならない(商登62条、59条1項2号)。しかし、譲渡承認機関を取締役会から株主総会に変更するにすぎないときは、株券提供公告をすることは要求されておらず、当該登記の申請書には、株券の提出に関する公告をしたことを証する書面の添付を要しない。【平23-30-ウ】

問題15 譲渡制限株式の定めについて「当会社の株式を譲渡により取得するには、当会社の承認を要する。」との登記をしている株券発行会社である取締役会設置会社が取締役会設置会社の定めの廃止をした場合には、株券提供公告をしたことを証する書面を添付して当該譲渡制限株式の定めについての変更の登記をしなければならない。○か×か?

誤り。譲渡制限株式の定めについて「当会社の株式を譲渡により取得するには、当会社の承認を要する。」との登記をしている株券発行会社が、取締役会を廃止して譲渡承認機関を変更しても、登記すべき事項に変更はないので、変更の登記を申請する必要はない。また、株式譲渡制限の定めを変更する場合には、株券提供公告をする必要はないので、株券提供公告をしたことを証する書面は添付書面とならない。 【平21-29-ウ】

問題16 募集株式の発行において、引受人に割り当てる株式の総数が発行済株式総数の10分の1を超えない場合、会社法上の公開会社でない取締役会設置会社が株主に株式の割当てを受ける権利を与えずに募集株式を発行したときは、株主総会議事録を添付しなければならない。○か×か?

正しい。会社法上の公開会社でない取締役会設置会社が、株主に株式の割当てを受ける権利を与えずに募集株式を発行するには、募集事項を株主総会で決議する(会199条2項)か、株主総会の委任の決議(会200条1項)に基づいて取締役会が募集事項を決定しなければならない。いずれの場合も株主総会決議を要し、募集株式の発行による変更登記申請には、株主総会の議事録を添付しなければならない(商登46条2項)。【平19-31-ア】

問題17 募集株式の発行において、引受人に割り当てる株式の総数が発行済株式総数の10分の1を超えない場合、引受人が会社に対する600万円の金銭債権を出資したときであっても、当該金銭債権について記載された会計帳簿を添付する必要はない。○か×か?

正しい。募集株式の引受人が会社に対する600万円の金銭債権を出資した場合であっても、引受人に割り当てる株式の総数が発行済株式総数の10分の1を超えない場合、検査役の調査を受ける必要はない(会207条9項1号)。この場合、引受人に割り当てる株式の総数が発行済株式総数の10分の1を超えるか否かは、登記官が登記簿と申請書から判断できるから、特別な添付書面は要求されておらず、当該金銭債権について記載された会計帳簿を添付する必要はない。【平19-31-エ】

問題18 公開会社でない取締役会設置会社が、株主に株式の割当てを受ける権利を与えないでする募集株式の発行の場合において、募集事項を取締役会の決議により定めたときは、募集株式の発行による変更の登記の申請書には、定款を添付しなければならない。○か×か?

誤り。公開会社ではない取締役会設置会社が第三者割当てにより募集株式を発行する場合、株主総会の特別決議により、募集株式の数の上限及び払込金額の下限を定め、募集事項の決定を取締役会に委任することができる(会200条1項、309条2項5号)。この委任に関し、定款の定めは不要であるから、募集事項を取締役会の決議により定めたとしても、募集株式の発行による変更の登記の申請書には、定款を添付することは要しない。【平22-29-イ】

問題19 公開会社でない取締役会設置会社が、株主に株式の割当てを受ける権利を与えてする募集株式の発行の場合において、募集株式の発行による変更の登記の申請書には、株主に対して募集事項、当該株主が割当てを受ける募集株式の数及び募集株式の引受けの申込みの期日を通知したことを証する書面を添付しなければならない。○か×か?

誤り。株主割当てにより募集株式の発行を行う場合、株主に対して募集事項、株主が割当てを受ける募集株式の数及び募集株式の引受けの申込みの期日を通知しなければならない(会202条4項)が、この通知をしたことを証する書面を添付することは要求されていない。【平22-29-ウ】

問題20 第三者割当てにより譲渡制限株式でない募集株式の発行をする場合には、募集株式の割当ての決定を代表取締役が行ったときであっても、当該登記の申請書には、代表取締役が募集株式の割当てについて決定したことを証する書面の添付を要しない。○か×か?

正しい。第三者割当てにより募集株式の発行をする場合に、募集株式の割当ての決定をしたことを証する書面(商登46条2項)が要求されるのは、譲渡制限株式を募集する場合(会204条2項)に限られる(平18.3.31-782号)。したがって、譲渡制限株式でない場合、登記の申請書には募集株式の割当てについて決定したことを証する書面の添付を要しない。【平23-31-イ】

問題21 出資の目的が金銭である場合において、その全額を資本金の額に計上するときは、当該登記の申請書には、資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面を添付しなければならない。○か×か?

正しい。出資の目的が金銭である場合において、その全額を資本金の額に計上するときであっても、当該登記の申請書には、資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面を添付しなければならない(商登規61条9項)。募集株式の発行は、自己株式の処分の手続と併行し得るので、株式発行割合を明確にする必要があるからである。【平23-31-オ】

問題22 公開会社でない取締役会設置会社が、株主に株式の割当てを受ける権利を与えてする募集株式の発行の場合において、募集事項を取締役会の決議により決定したときは、募集株式の発行による変更の登記の申請書に、取締役会の議事録に加え、定款を添付しなければならない。○か×か?

正しい。公開会社でない会社が、株主割当てにより募集株式を発行する場合、取締役会が募集事項等の決定を行うことができる旨の定款の定めがあれば、取締役会が募集事項等を決定することができる(会202条3項2号)。したがって、公開会社でない会社において、取締役会設置会社が募集事項を取締役会の決議により決定したときは、募集株式の発行による変更の登記の申請書に取締役会の議事録に加え、定款を添付しなければならない(商登46条2項、商登規61条1項)。【平26-33-イ】

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