司法書士試験<過去問題肢別チェック ■商業登記法「役員変更の登記」>

問題1 取締役会設置会社以外の株式会社において、定款の定めに基づく取締役の互選によって代表取締役を定めた場合には、当該代表取締役の就任による変更の登記の申請書には、当該代表取締役の就任承諾書に押印された印鑑につき市町村長が作成した印鑑証明書を添付しなければならない。○か×か?

誤り。取締役会設置会社以外の株式会社では、取締役の就任(再任を除く)による変更の登記の申請書には、当該取締役の就任承諾書に押印された印鑑につき市町村長が作成した印鑑証明書の添付が要求される(商登規61条4項)。取締役会設置会社以外の会社では、他に代表する者を定めない限り、取締役が各自会社を代表するため(会349条1項、2項)mその実在性の有無や就任承諾の意思の有無は、取締役について求めればよいと考えられているからである。他方、取締役会設置会社以外の会社では、代表取締役の就任については、就任承諾書に押印された印鑑につき市町村長が作成した印鑑証明書の添付は要求されていない(平18.3.31-782号)。【平18-31-ア】

問題2 取締役が1名しかいない株式会社において、取締役Aが辞任により退任した旨及び後任者としてBが取締役に就任した旨の登記がされた後、Bを取締役に選任した株主総会の決議が存在しないことの確認を求める訴えに係る請求を認容する判決が確定し、登記官が裁判所書記官の嘱託により当該株主総会の決議の不存在の登記をする場合には、登記官は、取締役Bの就任の登記を抹消する記号を記録するとともに職権で取締役Aの退任の登記を抹消し、取締役Aの登記を回復する。○か×か?

正しい。取締役に選任した株主総会の決議が存在しないことの確認を求める訴えに係る請求を認容する判決が確定し、登記官が裁判所書記官の嘱託により当該株主総会の決議の不存在の登記をする場合には、登記官は、取締役の就任の登記を抹消する記号を記録する(会937条1項1号ト(1)、商登規66条1項)。その結果、法律又は定款に定めた取締役の員数を欠くことになるため、前任の取締役の登記を回復する場合には、職権により退任の登記を抹消することを要する(商登規66条1項、昭57.12.15-7583号)。したがって、取締役が1名しかいない本肢の場合、登記官は、取締役Bの就任の登記を抹消する記号を記録するとともに職権で取締役Aの退任の登記を抹消し、取締役Aの登記を回復する。【平27-29-エ】

問題3 任期の満了による退任後もなお取締役としての権利義務を有する者を代表取締役に選定し、その後、当該代表取締役が死亡した場合には、「死亡」を原因とする取締役及び代表取締役の退任の登記を申請しなければならない。○か×か?

誤り。任期の満了による退任後もなお取締役としての権利義務を有する者を代表取締役に選定し、その後、当該代表取締役が死亡した場合には、取締役については、「任期満了」又は「辞任」を退任の原因とし、代表取締役については「死亡」を原因とする退任の登記を申請しなければならない(昭39.10.3-3197号)。取締役の退任原因は、「死亡」ではない。【平26-34-ア】

問題4 取締役につき破産手続開始決定があった場合には、当該取締役について「資格喪失」を原因とする退任の登記を申請しなければならない。○か×か?

誤り。取締役につき破産手続開始決定があったことは、委任の終了原因(民653条2号)となるため、「退任」を原因とする取締役の退任の登記を申請する。破産手続開始決定があったことは、取締役の欠格事由ではないため、「資格喪失」を原因とする退任の登記を申請するものではない。【平26-34-オ】

問題5 唯一の会計監査人が辞任した場合にする会計監査人の辞任による変更の登記は、新たに選任された会計監査人(一時会計監査人の職務を行うべき者も含む。)の就任による変更の登記と同時に申請しなければならない。○か×か?

誤り。会計監査人には、会計監査人が欠けた場合に、辞任した会計監査人をなお会計監査人の権利義務者とする規定は存在しない(会346条1項、4項参照)ので、唯一の会計監査人が辞任した場合に、後任の会計監査人(一時会計監査人の職務を行うべき者も含む。)が選任されていなくても、会計監査人の辞任による変更の登記をしなければならない。新たに選任された会計監査人(一時会計監査人の職務を行うべき者も含む。)の就任による変更の登記と同時に申請することが要求されるものではない。【平25-33-イ】

問題6 監査法人である会計監査人の就任による変更の登記の申請書には、登記すべき事項として、当該監査法人の名称及び当該監査法人が定めた書類等備置場所を記載しなければならない。○か×か?

誤り。会計監査人の登記では、書類等備置場所は登記事項とされていない(会911条3項19号)。書類等備置場所が登記事項とされているのは、会計参与設置会社である(会911条3項16号)。【平25-33-ウ】

問題7 取締役会を設置していない会社が新たに指名委員会等設置会社の定めの設定による変更の登記の申請をする場合には、取締役会設置会社の定めの設定による変更の登記も併せて申請しなければならない。○か×か?

正しい。指名委員会等設置会社は、取締役会設置会社でなければならない(会327条1項3号)。したがって、取締役会を設置していない会社が新たに指名委員会等設置会社の定めの設定による変更の登記の申請をする場合には、取締役会設置会社の定めの設定による変更の登記も併せて申請しなければならない。【平26-32-エ】

問題8 会計監査人が欠けた場合において、監査役会の決議によって一時会計監査人の職務を行うべき者を選任したときは、当該一時会計監査人の職務を行うべき者の就任による変更の登記の申請書には、監査役会議事録及び会社の代表者の同意書を添付しなければならない。○か×か?

誤り。一時会計監査人の職務を行うべき者の就任による変更の登記の申請書には、その選任に関する書面、一時会計監査人の就任を承諾したことを証する書面、一時会計監査人が法人であるときは、当該法人の登記事項証明書、一時会計監査人が法人でないときは、その者が公認会計士であることを証する書面を添付しなければならない(商登55条1項)。会社の代表者の同意書を添付することが要求されるものではない。【平18-31-エ】

問題9 株式会社において、住居表示の変更により代表取締役の住所に変更があった場合には、代表取締役の住所の変更による登記があったものとみなされることはなく、代表取締役の住所の変更の登記を申請しなければならない。○か×か?

正しい。住居表示の変更により代表取締役の住所に変更があった場合には、商業登記法26条の適用はないので、その変更による登記があったものとみなされることはなく、代表取締役の住所の変更登記を申請しなければならない。【平19-33-イ】

問題10 監査役の員数に関する定款の定めを変更して、増員に係る監査役を選任した場合には、当該監査役の就任による変更の登記の申請書には、定款を添付する必要はない。○か×か?

正しい。取締役、監査役の増員による変更登記の申請書に添付すべき書面は、株主総会の議事録及びその者が就任を承諾したことを証する書面であり、定款の添付は必要でない(昭44.5.14-385号)。取締役や監査役の員数に関する定款の定めがなくても、増員取締役や増員監査役を選任する決議は有効であるから、商業登記規則61条1項の定款の添付を要求する場合に該当しない。【平19-33-エ】

問題11 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役1名を選任することを内容とする種類の株式を発行する取締役会設置会社において、当該種類株主総会の決議によって取締役1名が解任されたときは、当該取締役の解任による変更の登記の申請書には、当該取締役の選任及び解任に係る各種類株主総会の議事録を添付しなければならない。○か×か?

正しい。原則としては、取締役の解任決議をした株主総会議事録を添付するが(商登54条4項)、取締役の選任権付株式を発行した会社の取締役を解任する場合は、株主総会議事録ではなく、解任に係る種類株主総会議事録のほか、当該取締役がどの種類株主によって選任された者かを確認するために、選任に係る種類株主総会議事録をも添付しなければならない(平14.12.27-3239号)。【平21-30-エ】

問題12 会計参与を1人置く旨の定款の定めがある株式会社の会計参与である税理士法人が主たる事務所を移転した場合において、当該税理士法人が従たる事務所を設けていないときは、当該株式会社の計算書類等の備置きの場所に係る変更の登記を申請しなければならない。○か×か?

正しい。法人である会計参与は、その主たる事務所又は従たる事務所の中から当該株式会社の計算書類等の備置きの場所を定めなければならず(会378条1項、会施規103条2項)、さらに当該備置きの場所は登記事項である(会911条3項16号)。本問における会計参与は従たる事務所を設けていないため、主たる事務所が備置きの場所であるはずなので、その主たる事務所が移転する際には登記事項である計算書類等の備置きの場所の変更登記を申請する必要がある。【平21-30-オ】

問題13 住居表示の実施により代表取締役の住所に変更があった場合には、代表取締役の住所の変更の登記を申請しなければならない。○か×か?

正しい。代表取締役の住所について住居表示が実施された場合、登記事項に変更が生じた場合に準じてその変更登記をする必要がある。この場合の登記手続について特例は設けられていないので、通常の変更登記をすることになる。なお、登録免許税については、当該変更が住居表示の実施に伴うものであることを証する財務省令で定める書類の添付があれば免除される(登税5条柱書括弧書、4号)。【平25-32-ア】

問題14 代表取締役の就任による変更の登記の申請は、当該株式会社の代表取締役の全員が日本に住所を有しない場合でもすることができる。○か×か?

正しい。代表取締役が日本に住所を有しない内国株式会社の代表取締役の重任又は就任の登記について、当該会社の代表取締役の全員が日本に住所を有しない場合でも、その登記の申請は受理して差し支えない(平27.3.16-29号)。従来の先例を変更したものである。【平25-32-ウ】

問題15 登記所に印鑑を提出している代表取締役が辞任した場合の変更の登記の申請書には、当該代表取締役が辞任を証する書面に押した印鑑について、当該印鑑と当該代表取締役が登記所に提出している印鑑とが同一であるときを除き、市町村長の作成した印鑑証明書を添付しなければならない。○か×か?

正しい。登記所に印鑑を提出している代表取締役が辞任した場合の変更の登記の申請書には、当該代表取締役が辞任を証する書面に押した印鑑について、当該印鑑と当該代表取締役が登記所に提出している印鑑とが同一であるときを除き、市町村長の作成した印鑑証明書を添付しなければならない(商登規61条8項)。【平27-29-ア】

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