問題1 同時履行の抗弁については、当事者がその主張をしない限り、裁判所は、これを判決の基礎とすることはできない。○か×か?

正しい。裁判所は、当事者が主張しない事実を認定して判決の基礎とすることはできない(弁論主義の第1テーゼ)。訴訟上の攻撃防御方法のうち、同時履行の抗弁権は、権利の発生原因事実が弁論に現れていても、訴訟上その権利行使の主張がなされなければ抗弁として斟酌できない(権利抗弁)。裁判所がこれを判決の基礎とするためには、同時履行の抗弁権行使の意思表示の事実の主張が当事者からなされていることが必要である(最判昭27.11.27参照)。【平19-2-ア】
問題2 債務不履行に関する過失相殺は、債務者が過失相殺をすべきであるとの主張をしなくても、裁判所が職権ですることができる。○か×か?

正しい。債務不履行に関する過失相殺は、債務者の主張がなくても、裁判所が職権ですることができる(最判昭43.12.24)。【平19-2-ウ】
問題3 所有権に基づく土地の明渡請求訴訟において、原告が被告に対して当該土地の使用を許した事実を原告自身が主張し、裁判所がこれを確定した場合には、被告が当該事実を自己の利益に援用しなかったときでも、裁判所は、当該事実を判決の基礎とすることができる。○か×か?

正しい。主張責任を負う当事者が自己に有利な事実を主張しなくても、相手方がその事実(相手方にとっては不利益な事実)を主張していれば、裁判所は当該事実を判決の基礎とすることができる(主張共通の原則)。【平25-3-ア】
問題4 裁判所は、債務不履行に基づく損害賠償請求訴訟において、債務者である被告が原告である債権者の過失となるべき事実を主張し、この事実が証拠から認められる場合には、被告が過失相殺の主張をしていないときであっても、過失相殺の抗弁を判決の基礎とすることができる。○か×か?

正しい。債務不履行に関する過失相殺(民418条)は、債務者の主張がなくても、裁判所が職権で過失相殺をすることができる(最判昭43.12.24)。【平25-3-エ】
問題5 AがBに対して貸金返還請求訴訟を提起したところ、Bは「既に借受金を弁済した」と主張した。この場合、Bが主張する弁済の事実は間接事実に当たる。○か×か?

誤り。弁済の事実(民474条以下)は、債権の消滅という法律効果を判断するのに直接必要な事実であるから、主要事実になる。【平23-4-イ】
問題6 当事者の一方が主張している間接事実を他方の当事者が争っていない場合には、裁判所は、その事実と異なる事実を認定することができない。○か×か?

誤り。裁判所は、当事者間に争いのない事実は、そのまま判決の基礎としなければならない。これを弁論主義の第2テーゼ(自白の拘束力の原則)という。弁論主義の第2テーゼが適用されるのは、主要事実に限られ、間接事実には適用されないから、間接事実の自白は裁判所を拘束しない(最判昭31.5.25)。したがって、原告が主張する間接事実について被告が争わない場合であっても、裁判所は、その事実に拘束されず、これに反する事実を認定して裁判の資料とすることができる。【平23-4-オ】
問題7 職権証拠調べの禁止は、処分権主義の現れである。○か×か?

誤り。処分権主義は、訴訟の開始、審判の対象の特定、訴訟の終了等につき当事者の主導権を認めてその処分を委ねる建前のことである(民訴246条参照)。一方、職権証拠調べの禁止は、争いのある事実について証拠調べをする際には、当事者の申し出た証拠に基づかなければならないとするものであり、これは、弁論主義の現れである。【平15-5-ア】
問題8 不利益変更の禁止は、弁論主義の現れである。○か×か?

誤り。弁論主義は、裁判の基礎となる訴訟資料の提出を当事者の権能かつ責任とする建前のことであり、弁論主義から次の3つの命題が導かれる。
①裁判所は、当事者が主張しない主要事実を認定して裁判の基礎とすることはできない。
②裁判所は、当事者間の争いのない事実は、そのまま裁判の基礎にしなければならない。
③争いのある事実について証拠調べをするには、当事者が申し出た証拠によらなければならない。
一方、不利益変更の禁止は、上訴審で原判決を不服申立ての限度を超えて、上訴人に不利益に変更することを許さないとするもの(民訴304条)であり、これは、処分権主義の現れである。【平15-5-イ】
問題9 弁論準備手続の期日において、裁判所は、訴えの変更を許さない旨の決定をすることができる。○か×か?

正しい。裁判所は、弁論準備手続の期日において、証拠の申出に関する裁判その他の口頭弁論の期日外においてすることができる裁判及び文書の証拠調べをすることができる(民訴170条2項)。訴えの変更を許さない旨の決定(民訴143条4項)は、口頭弁論の期日外においてすることができる裁判に当たる。【平18-2-4】
問題10 簡易裁判所の訴訟手続においては、原告又は被告が口頭弁論の続行期日に欠席しても、その者が提出した準備書面を陳述したものとみなすことができる。○か×か?

正しい。簡易裁判所の訴訟手続においては、比較的軽微な事件を扱うという特性から、地方裁判所の訴訟手続と異なり、続行期日に当事者の一方が欠席した場合でも、陳述擬制が認められている(民訴277条、158条)。【平18-1-ア】
問題11 証人尋問は、当事者双方が期日に欠席しても、実施することができる。○か×か?

正しい。証人尋問は、証人の証言を証拠資料とする証拠調べである。そして、証拠調べは、当事者双方が期日に出頭しない場合でもすることができる(民訴183条)。当事者は証拠調べにつき立会権を有する(民訴94条1項、240条本文参照)が、当事者が期日に欠席することによってその権利を放棄したとはいえ、むしろ、審理の迅速性の確保(民訴147条の2)や、証人等の出頭の煩わしさに対する配慮を、より優先すべきだからである。【平18-1-エ】
問題12 証拠調べは、当事者が期日に出頭しない場合には、することができない。○か×か?

誤り。証拠調べは、当事者が期日に出頭しない場合においても、することができる(民訴183条)。【平26-2-ウ】
問題13 請求の放棄をする旨の書面を提出した当事者が口頭弁論の期日に出頭しないときは、裁判所は、その旨の陳述をしたものとみなすことができない。○か×か?

誤り。請求の放棄又は認諾をする旨の書面を提出した当事者が口頭弁論等の期日に出頭しないときは、裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、その旨の陳述をしたものとみなすことができる(民訴266条2項)。【平26-2-エ】