問題1 親権者が、その親権に服する未成年の子に対し、親権者を債務者とする抵当権設定の登記がされている親権者所有の不動産を贈与し、その登記を申請する場合には、未成年の子のための特別代理人の選任書を提供しなければならない。○か×か?

誤り。親権者が、その親権に服する未成年の子に対し、親権者所有の不動産を贈与する行為は、たとえ当該不動産に親権者を債務者とする抵当権設定の登記がされている場合であっても利益相反行為にはあたらない(大判大9.1.21)。贈与後の結果をみれば未成年者所有の不動産に親権者の債務を担保するための抵当権が設定されていることになるが、不動産を贈与する行為自体は、何ら未成年者に不利益を与えるものではないからである。したがって、未成年者のために特別代理人を選任する必要はなく、また、その登記を申請する場合にも、特別代理人の選任審判書を提供する必要はない。【平16-24-2改】
問題2 農地につき、包括遺贈を原因として所有権の移転の登記を申請する場合には、許可を証する情報を提供することを要しない。○か×か?

正しい。包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するので相続と同視され、農地についてする包括遺贈は、農地法所定の許可を要しない(農地3条1項10号、農地規3条5号)。 【平18-14-ウ】
問題3 農地につき、相続を原因として共同相続人であるA及びBへ所有権の移転の登記がされた後、相続分の贈与を原因としてAからBへのA持分の全部移転の登記を申請する場合には、許可を証する情報を提供することを要しない。○か×か?

正しい。共同相続人間においてする相続分の譲渡については、農地法所定の許可は不要であるとされる(最判平13.7.10)。したがって、共同相続の登記後に、共同相続人の1人から、他の共同相続人に「相続分の贈与」を原因としてする持分移転の登記の申請においては、農地法所定の許可を得たことを証する情報の提供は要しない。 【平18-14-エ】
問題4 農地について、法人格のない社団の代表者の変更に伴う委任の終了を原因とする所有権の移転の登記を申請する場合には、農地法第3条の許可を受けたことを証する情報の提供は不要であるが、民法第646条第2項の規定による移転を原因とする所有権の移転の登記を申請する場合には必要である。○か×か?

正しい。農地について、法人格のない社団の代表者の変更に伴う委任の終了を原因とする所有権移転の登記を申請する場合、実質的な権利変動があるわけではないので、農地法の許可を受けたことを証する情報の提供は不要である(昭58.5.11-2983号)。一方、農地について民法646条2項の規定による移転を原因とする所有権の移転の登記を申請する場合は、農地法の許可を受けたことを証する情報を提供することを要する(登研456号)。 【平21-13-ウ】
問題5 農地について、調停による財産分与を原因とする所有権の移転の登記を申請する場合には、農地法第3条の許可を受けたことを証する情報の提供は不要であるが、当事者間の協議による財産分与を原因とする所有権の移転の登記を申請する場合には必要である。○か×か?

正しい。農地について、当事者間の協議による財産分与を原因とする所有権の移転の登記を申請する場合には、当事者の意思によるので、農地法の許可を受けたことを証する情報を提供することを要する(登研523号)が、協議でなく判決や調停による財産分与の場合は、当事者の意思のみでの物権変動でないので、農地法の許可を受けたことを証する情報の提供は不要である。【平21-13-オ】
問題6 甲株式会社の代表取締役がA及びBであり、乙株式会社の代表取締役がA及びCである場合において、Bが甲株式会社を、Cが乙株式会社をそれぞれ代表して、甲株式会社所有の不動産について、甲株式会社から乙株式会社に売り渡し、この売買を登記原因とする所有権の移転の登記を申請するときは、いずれの会社についても取締役会の承認を受けたことを証する情報を提供する必要はない。○か×か?

正しい。甲株式会社の代表取締役がA及びBであり、乙株式会社の代表取締役がA及びCである場合において、Bが甲株式会社を、Cが乙株式会社をそれぞれ代表して、甲株式会社所有の不動産について、甲株式会社から乙株式会社に売り渡し、所有権移転の登記を申請するときは、いずれの会社についても取締役会の承認を受けたことを証する情報を提供する必要はない(昭52.11.14-5691号)。【平22-26-ウ】
問題7 甲株式会社及び乙株式会社の代表取締役が同一人である場合において、甲株式会社名義の不動産について、債務者を乙株式会社とする抵当権の設定の登記を申請するときは、甲株式会社の取締役会の承認を受けたことを証する情報を提供しなければならない。○か×か?

正しい。甲株式会社及び乙株式会社の代表取締役が同一人である場合において、甲株式会社名義の不動産について、債務者を乙株式会社とする抵当権を設定する場合は、会社法365条、356条の利益相反取引に該当する。したがって、甲株式会社の取締役会の承認を受けたことを証する情報を提供しなければならない(昭35.8.4-1929号)。【平22-26-エ】
問題8 元本確定前に根抵当権の極度額増額の登記を申請する場合には、申請情報と併せて後順位抵当権の登記名義人が承諾したことを証する情報を提供しなければならない。○か×か?

正しい。根抵当権の極度額の変更は利害関係人の承諾がなければすることができない(民398条の5)。利害関係人の承諾は極度額変更の効力要件である。極度額の増額については、後順位抵当権者が利害関係人となり、その承諾が必要であり、当該増額による変更の登記の申請に際しては、後順位抵当権者が承諾したことを証する情報の提供をしなければならない(不登令7条1項5号ハ)。なお、本肢は、「元本確定前に」としているが、極度額の変更について利害関係人の承諾を要することは、元本確定の前後を問わないので、申請に際し、その承諾したことを証する情報の提供をしなけばならないことも、元本確定の前後を問わない。【平16-27-イ改】
問題9 抹消された抵当権の登記を回復する登記を申請する場合には、申請情報と併せてその抵当権の抹消登記後に登記された抵当権の登記名義人の承諾を証する情報を提供しなければならない。○か×か?

正しい。抹消された登記(権利に関する登記に限る)の回復は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる(不登72条)。抹消された抵当権の登記を回復する登記がされると、回復前の登記の順位を保全するから、その抵当権の抹消登記後に登記された抵当権の登記名義人は、登記上の利害関係人となり、その申請に際して、その者の承諾を証する情報の提供をしなければならない(不登令別表27添ロ)。【平16-27-エ改】
問題10 所有権移転の登記の抹消を申請する場合には、申請情報と併せて、その所有権を目的として登記された抵当権の登記名義人の承諾を証する情報を提供しなければならない。○か×か?

正しい。権利に関する登記の抹消は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる(不登68条)。所有権移転の登記を抹消すると、その所有権を目的とする抵当権は職権で抹消される(不登規152条2項)ので、抹消の登記を申請する場合、その所有権を目的として登記された抵当権の登記名義人は登記上の利害関係人となるからである。したがって、当該登記の申請に際しては、その所有権を目的として登記された抵当権の登記名義人の承諾を証する情報の提供をしなければならない(不登令別表27添ロ)。 【平16-27-オ改】
問題11 地上権を目的とする賃借権の設定の登記を申請する場合には、当該地上権の設定者の承諾を証する情報の提供を要する。○か×か?

誤り。地上権は物権であるので、地上権者が、その目的である土地を第三者に賃貸するについては、設定者の承諾は不要である。【平19-25-イ】
問題12 地役権の設定の登記がされる前にその要役地について所有権の移転の仮登記がされていた場合において、当該地役権の設定の登記の抹消を申請するときは、当該仮登記の登記権利者の承諾を証する情報の提供を要する。○か×か?

誤り。権利に関する登記の抹消は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、当該第三者の承諾があるときにのみすることができ(不登68条)、抹消の登記の申請に際しては、当該登記上の利害関係を有する第三者の承諾を得たことを証する情報を提供しなければならない(不登令別表26添ヘ)。地役権の抹消において、当該地役権の設定登記がされる前に要役地についてされた所有権移転の仮登記の登記名義人は、もともと地役権のない要役地について権利を取得した者であるから、その抹消について登記上の利害関係を有する第三者には該当しない。【平19-25-エ】
問題13 地役権の設定の登記がされた後、その要役地について抵当権の設定の登記がされている場合において、当該地役権の設定の登記の抹消を申請するときは、申請情報と併せて、当該抵当権の登記名義人の承諾を証する情報を提供しなければならない。○か×か?

正しい。地役権の登記がされた後に、その要役地について抵当権設定の登記がされた場合、当該抵当権の効力は地役権にも及ぶ。したがって、当該地役権の抹消について抵当権者は登記上の利害関係を有する第三者となるので、その承諾がある場合に限り、地役権の抹消登記をすることができる(不登令別表37添ハ参照)。【平26-14-ア】
問題14 A及びBを登記名義人とする所有権の移転の登記が債権者代位によりされている場合において、当該所有権の移転の登記をAのみを登記名義人とする所有権の更正の登記を申請するときは、申請情報と併せて、当該所有権の移転の登記を申請した者の承諾を証する情報を提供しなければならない。○か×か?

正しい。債権者代位によって共有名義の所有権の移転の登記がされた後、当該登記を単有名義とする更正登記を申請する場合、代位債権者は登記上の利害関係を有する第三者に該当する(昭39.4.14-1498号)。したがって、代位債権者の承諾を証する情報又は代位債権者に対抗することができる裁判があったことを証する情報を提供しなければならない。【平26-14-オ】