問題1 抵当権が設定され、その登記をしないうちにその被担保債権の一部が弁済された場合、当該抵当権設定・金銭消費貸借契約書と一部弁済証書を登記原因証明情報として提供して、現存する債権額についての抵当権の設定の登記を申請することはできない。○か×か?

誤り。抵当権設定契約後、その設定登記をする前に被担保債権の一部が弁済された場合、現存する被担保債権の額を債権額として、抵当権設定の登記を申請することができる。この場合、登記原因証明情報としては、抵当権設定契約書に一部弁済証書を合綴したもの又は抵当権設定契約書に一部弁済の旨を奥書きしたものでよいとされている(昭34.5.6-900号)。 【平21-14-ウ改】
問題2 竹木の所有を目的とする存続期間の定めがある地上権の設定契約書を登記原因証明情報として提供した場合であっても、存続期間を申請情報の内容としない地上権の設定の登記を申請することができる。○か×か?

誤り。地上権の設定契約において存続期間の定めがあるときは、その定めが登記事項となり(不登78条3号)、存続期間の定めがある地上権の設定契約書を登記原因証明情報として提供し、存続期間を申請情報の内容としない地上権設定登記の申請は、申請情報の内容が登記原因証明情報の内容と合致しないときに該当し却下される(不登25条8号)ため、申請することができない。 【平21-14-オ改】
問題3 真正な登記名義の回復を登記原因とする所有権の移転の登記を申請する場合には、登記原因証明情報の提供を要しない。○か×か?

誤り。権利に関する登記を申請する場合には、申請人は、法令に別段の定めがある場合を除き、その申請情報と併せて登記原因証明情報を提供しなければならない(不登61条)。真正な登記名義の回復を登記原因とする所有権の移転登記は、登記原因証明情報を不要とする規定はないため、原則どおり当該情報を提供する必要がある。なお、真正な登記名義の回復を原因とする登記においては、申請情報の内容として原因日付を提供することは要しない(昭39.2.17-125号)。【平23-24-ア改】
問題4 敷地権付き区分建物の所有権を表題部所有者から取得した者が所有権の保存の登記を申請する場合には、登記原因証明情報の提供を要しない。○か×か?

誤り。所有権の保存の登記を申請する場合には、登記原因証明情報を提供することを要しない(不登令7条3項1号)が、敷地権付き区分建物について不動産登記法74条2項の規定により所有権保存登記を申請する場合は除外されているため、原則どおり当該情報を提供しなければならない(不登令7条3項1号括弧書、不登令別表29添ロ)。【平23-24-イ改】
問題5 Aが、B及びCとともに、売買を原因とするBからCへの所有権の移転の登記を、売買を原因とするBからA及びCへの所有権の移転の登記に更正する登記を申請した場合、Aは登記識別情報の通知を受けることができる。○か×か?

正しい。Aは登記識別情報の通知を受けることができる。BからCへの所有権移転登記を、BからA、C共有名義の登記に更正する登記は、Aは登記権利者として申請人となり、かつ当該登記によって、共有者として登記名義人となる者である(不登21条本文)。 【平17-13-エ】
問題6 破産管財人が破産者所有の不動産を売却し、裁判所の許可を得たことを証する情報を提供して、その所有権の移転の登記を申請する場合には、登記義務者の登記識別情報を提供することは要しない。○か×か?

正しい。破産管財人が破産者の所有する不動産を売却するには、裁判所の許可を受けることを要し(破産78条2項1号)、当該許可を得たことを証する情報は添付情報である(不登令7条1項5号ハ)。そして、当該登記の申請においては登記識別情報の提供は要しないものとされている(昭34.5.12-929号)。これは、裁判所の許可を得たことを証する情報の提供によって登記の真正は担保され得るということ、破産管財人が裁判所によって選任される一種公的な地位を有すること、破産管財人が破産者から登記識別情報の提供を得ることが困難であることなどが理由とされる。【平18-18-イ改】
問題7 債権譲渡による抵当権の移転の登記がされている抵当権の登記の抹消を申請する場合には、当該抵当権の移転の登記がされたときに通知された登記識別情報を提供すれば足り、当該抵当権の設定の登記がされたときに通知された登記識別情報を提供することは要しない。○か×か?

正しい。債権譲渡による抵当権移転の登記がされている場合における当該抵当権抹消の登記の登記義務者は、移転を受けた現抵当権登記名義人のみである。したがって、当該登記義務者が抵当権移転の登記をした際に通知を受けた登記識別情報を提供すれば足り、抵当権設定登記の登記識別情報の提供は要しない。【平18-18-オ改】
問題8 A所有の不動産について、AからBへの所有権の移転の登記の申請と、BからCへの所有権の移転の登記の申請とが連件でされた場合には、B及びCに対して登記識別情報が通知される。○か×か?

正しい。登記識別情報の通知をする前に、すでに登記名義人でなくなっている者に対しても、登記識別情報は通知される(不登21条)。登記記録上は、Bへの所有権の移転登記がなされた後に、その次の順位番号でCへの所有権移転登記がなされる。Bも、不動産登記法21条でいう「申請人自らが登記名義人」となるので、CだけでなくBに対しても登記識別情報は通知される。 【平20-13-ア】
問題9 Aの持分が2分の1、Bの持分が2分の1であるとの登記がされた共有不動産について、その持分をAは3分の1とし、Bは3分の2とする所有権の更正の登記がされた場合には、Bに対して登記識別情報が通知されない。○か×か?

正しい。共有者の持分のみの更正登記の場合は、更正登記により持分の増加するBに対して登記識別情報は通知されない。登記が実行されても、登記記録に登記名義人が記録されないからである。 【平20-13-オ】
問題10 AからBへの所有権の移転の登記が抹消された場合には、Aに対し、新たに登記識別情報が通知される。○か×か?

誤り。登記識別情報は、申請人自らが登記名義人となる場合に、当該申請人に対し通知される(不登21条本文)。所有権の移転の登記が抹消された場合、前の所有権者が新たに登記名義人となるわけではないため、当該登記の抹消が完了しても登記識別情報は通知されない。【平23-12-ウ】
問題11 一の申請情報により、A所有の1筆の土地を要役地とし、B所有の2筆の土地を承役地とする地役権の設定の登記の申請がされ、当該登記が完了した場合には、Aに対し、2個の登記識別情報が通知される。○か×か?

誤り。地役権の登記において、地役権者の氏名又は名称及び住所は登記事項とはなっていない(不登80条2項)。地役権は、人に対する権利ではなく、土地に対する権利だからである。したがって、地役権の設定の登記が完了しても、申請人自らが登記名義人になる場合(不登21条本文)に該当せず、地役権者に対して登記識別情報は通知されない。【平23-12-エ】
問題12 A株式会社が抵当権の登記名義人である甲土地につき、A株式会社からB株式会社への合併を登記原因とする抵当権の移転の登記の申請と、弁済を登記原因とする当該抵当権の抹消の登記の申請とが連件でされた場合には、B株式会社に対して登記識別情報は通知されない。○か×か?

誤り。本肢の場合、B株式会社は、抵当権の移転の登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合に該当するため(不登21条本文)、B株式会社に対して登記識別情報が通知される。【平27-12-4】
問題13 抵当権の設定の登記をした不動産の所有権を抵当権者が取得したことにより、混同を原因として当該抵当権が消滅した場合において、抵当権の設定の登記の抹消を申請するときは、申請人は、抵当権の設定の登記の際に通知された登記識別情報を提供しなければならない。○か×か?

正しい。登記権利者及び登記義務者が共同して権利に関する登記を申請する場合には、登記義務者の登記識別情報を提供しなければならない(不登22条本文)。混同を原因として抵当権の抹消登記を申請する場合に、登記権利者と登記義務者が同一人であっても、不動産登記法22条に規定する共同して権利に関する登記を申請する場合に該当し、登記義務者である抵当権の登記名義人の登記識別情報の提供を要する(平2.4.18-1494号)。【平24-16-ア】
問題14 代物弁済を登記原因とする所有権移転請求権の仮登記がされている場合において、所有権移転請求権の移転の登記を申請するときは、申請人は、所有権移転請求権の仮登記の登記名義人に通知された登記識別情報を提供しなければならない。○か×か?

正しい。仮登記された所有権移転請求権についての移転の登記をする場合、申請情報と併せて登記義務者の登記識別情報を提供することを要する(昭39.8.7-2736号参照)。所有権移転請求権は譲り受けた者に確定的に移転し、この場合の登記の申請は、仮登記ではなく、本登記でなされるからである。【平24-16-ウ】
問題15 事前通知に対し、法務省令で定められた期間内に登記義務者から申請の内容が真実である旨の申出がされた場合であっても、登記官が申請人となるべき者以外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があると認めたときは、登記官は、申請人に出頭を求め、当該申請人の申請の権限の有無を調査することができる。○か×か?

正しい。登記官は、登記の申請があった場合において、申請人となるべき者以外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、不動産登記法25条の規定により当該申請を却下すべき場合を除き、申請人又はその代表者若しくは代理人に対し、出頭を求め、質問をし、又は文書の提示その他必要な情報の提供を求める方法により、当該申請人の申請の権限の有無を調査しなければならない(不登24条1項)。この、登記官による本人確認は、事前通知に対して、法務省令で定める期間内に登記義務者から申請の内容が真実である旨の申出があった場合であっても、「申請人となるべき者以外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは」行うことができる。 【平17-16-ウ】
問題16 所有権に関する登記の申請において、登記識別情報の提供ができない場合に、当該申請の代理人となった司法書士が、当該申請人が登記義務者であることを確認するために必要な情報を提供したときは、登記官においてその情報の内容が相当と認められる場合に限り、事前通知が省略される。○か×か?

正しい。本来事前通知を要する場合であっても、申請が登記の申請の代理を業とすることができる代理人(以下、「資格者代理人」という。)によってされた場合であって、登記官が当該代理人から法務省令で定めるところにより当該申請人が登記義務者であることを確認するために必要な情報の提供を受け、かつ、その内容を相当と認めるときは、事前通知は行われない(不登23条4項1号)。 【平17-16-エ】
問題17 電子情報処理組織を使用する方法で不動産登記の申請の手続をした場合であっても、登記義務者に対する事前通知は、書面を送付してされ、登記義務者から申請の内容が真実である旨の申出も、書面ですることを要する。○か×か?

誤り。書面申請か電子申請かを問わず、事前通知は、書面を送付する方法による(不登規70条1項)。事前通知制度は、登記義務者の現住所にあてて通知することにより、なりすましの者が申請していないかどうかを確認する手続であるため、どこでも受け取ることができるオンライン通知でされてしまうと、制度趣旨に反するからである。しかし、登記義務者からの申請の内容が真実である旨の申出は、書面申請の場合には、書面を登記所に提出する方法により行うが、電子申請の場合には、事前通知の書面の内容を通知番号等を用いて特定し、申請の内容が真実である旨の情報に電子署名を行った上、登記所に送信する方法によらなければならない(不登規70条5項)。【平23-13-イ】
問題18 登記義務者が法人であり、その本店について変更の登記がされている場合において、所有権に関する登記の申請をするときは、登記義務者に対する事前通知のほか、当該登記をする前に、登記義務者の登記記録上の前の本店に宛てて当該申請があった旨も通知される。○か×か?

誤り。登記義務者が法人である場合には、登記の申請が所有権に関するものであり、登記義務者である法人の本店について変更の登記がされている場合であっても、前の住所にあてて、当該申請があった旨を通知する必要はない(不登規71条2項3号)。【平23-13-オ】
問題19 登記官は、申請人の申請の権限の有無を調査するに際しては、申請人又はその代表者若しくは代理人に対し、出頭を求めることができる。○か×か?

正しい。申請人の申請権限の有無の調査は、申請人又はその代表者若しくは代理人に対し、出頭を求め、質問をし、又は文書の提示その他必要な情報の提供を求める方法により行われる(不登24条1項)。 また、本人確認調査は、申請人となるべき者以外の者が申請していると疑う契機となった事由等に応じ、適切な方法により調査することを要するので、疑いの程度又は当該契機となった事由に応じて、電話等による事情の聴取又は資料の提出等により当該申請人の申請の権限の有無を確認することができる場合には、本人の出頭を求める必要はない(平17.2.25-457号)。なお、登記官は、登記の申請が資格者代理人によってされている場合において、本人確認の調査をすべきときは、原則として、当該資格者代理人に対し必要な情報の提供を求めるものとされており(不登準33条2項)、それにより本人確認ができれば、本人に対して確認を求める必要はない。【平20-18-イ】
問題20 登記官は、申請人の勤務先の近辺に所在する登記所において申請人の申請の権限の有無の調査を行うことが申請人の勤務の都合上、便宜である場合には、申請人からの申出により、他の登記所の登記官に調査を嘱託することができる。○か×か?

正しい。登記官が本人確認の調査のため申請人等の出頭を求めた場合において、申請人等から遠隔の地に居住していること又は申請人の勤務の都合等を理由に他の登記所に出頭したい旨の申出があり、その理由が相当と認められるときは、当該他の登記所の登記官に本人確認の調査を嘱託するものとする(不登準34条1項)。 【平20-18-エ】