問題1 東京に住むAは、京都に住むBに対し、「今月末までに返事をいただきたい。」との承諾の期間を定めて、売買契約の申込みをした。これに対し、Bが、その期間内に到達するように郵便で承諾の通知を出した場合、Bからの承諾の通知がAに到達した時点で、AB間に契約が成立する。○か×か?

正しい。契約は、申込みに対して相手方が承諾をしたときに成立する(民522条1項)。意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる(民97条1項)。したがって、Bからの承諾の通知がAに到達した時点で、AB間に契約が成立する。 【平15-20-ウ改】
問題2 建物の賃貸借終了に伴う賃貸人の敷金返還債務と賃借人の建物明渡債務とは、同時履行の関係に立つ。○か×か?

誤り。敷金返還請求権は目的物の明渡しの時点で発生する(民622条の2第1項1号参照)ので、敷金の返還債務と目的物の明渡債務は同時履行の関係に立たない(最判昭49.9.2)。【平21-18-ア改】
問題3 売主が買主に対して目的物引渡債務についての弁済の提供をした後に代金の支払請求をした場合には、その提供が継続されていないときであっても、買主は、同時履行の抗弁を主張することができない。○か×か?

誤り。同時履行の抗弁権を失わせ、相手方に債務を履行してもらうには、自己の反対債務の履行を継続させる必要がある(最判昭34.5.14)。本問において、売主は目的物引渡債務の提供を継続していないので、買主の代金支払債務にはまだ同時履行の抗弁権が存在する。なお、履行遅滞に陥り、解除権(民541条)を行使するための、同時履行の抗弁権を失なわせるためにする反対債務の履行の提供は継続する必要がない(大判昭3.10.30)。反対債務の履行を一度提供すれば、履行遅滞に陥り、解除権を行使することができるので、反対債務の履行を継続させる必要はないからである。【平21-18-ウ改】
問題4 土地の売買契約が解除された場合には、売主は、受領していた代金の返還に当たり、その受領の時からの利息を付さなければならないが、買主は、引渡しを受けていた土地の返還に当たり、その引渡しの時からの使用利益に相当する額を返還することを要しない。○か×か?

誤り。当事者の一方が解除権を行使したときは、各当事者は、相手方を原状に復させる義務を負う。この場合において、金銭を返還するときは、受領の時から利息を付さなければならない(民545条1項、2項)。そして、特定物の売買が解除された場合、判例は、引渡しの時から解除される時までの間に買主が所有者としてその物を使用収益した利益は、売主に償還しなければならないとしている(最判昭34.9.22)。なお、買主の当該償還義務は、原状回復義務に基づく一種の不当利得返還義務であって、不法占有に基づく損害賠償義務ではない(同判例)。【平22-18-イ】