司法書士試験<過去問題肢別チェック ■不動産登記法「用益権に関する登記」>

問題1 A所有の甲土地についてAB間で地上権設定登記がされた後に、Aは、Dとの間で甲土地上の特定の空間を範囲と定めて区分地上権を設定する旨を約した。この場合、A及びDの共同申請により、申請情報と併せてBが承諾したことを証する情報を提供して、当該区分地上権の設定登記を申請することができる。○か×か?

正しい。区分地上権の設定は土地所有者と区分地上権者との設定契約により、その設定の登記も両者が申請人となる。ただし、区分地上権の設定は、第三者が土地の使用又は収益をする権利(地上権や永小作権等)を有する場合には、その者の承諾がなければ成立しない(民269条の2第2項)。この承諾は区分地上権設定の効力要件であるので、申請情報と併せてBが承諾したことを証する情報を提供しなければならない(不登令7条1項5号ハ、昭41.11.14-1907号)。【平15-23-イ改】

問題2 A所有の甲土地についてA及びBは、地上権設定登記に必要な手続上の条件が具備しないため、甲土地について地上権設定仮登記をしたが、その後、Aは、Eとの間で甲土地について地上権設定契約を締結した。この場合、A及びEの共同申請により、甲土地について更に地上権設定仮登記を申請することができる。○か×か?

正しい。同一の土地に対して2つの地上権設定登記をすることはできない。しかし、仮登記については差し支えないものとされている。本登記によって得られた対抗力の優劣で決すればよいからである。したがって、AB間で地上権設定仮登記をした後、更にAE間で地上権設定仮登記を申請することができる。【平15-23-ウ改】

問題3 地上権の存続期間を「永久」として、地上権の設定の登記を申請することはできない。○か×か?

誤り。地上権の存続期間については、特に制限はなく、これを「永久」として定めることもできる(大判明36.11.16)。【平18-17-ア】

問題4 建物所有を目的とする地上権の設定の登記がされている土地について、区分地上権の設定の登記の申請をする場合は、添付情報として、登記されている地上権の登記名義人が承諾したことを証する情報を提供しなければならない。○か×か?

正しい。区分地上権設定登記の申請は、同一土地上に地上権設定登記がある場合であっても、地上権者の承諾を証する情報を提供すれば、申請することができる(昭41.11.14-1907号)。【平27-22-イ】

問題5 地上権の設定の登記をするときは、存続期間の定めを登記することができる。○か×か?

正しい。地上権設定の登記をするときは、存続期間の定めを登記することができる(不登78条3号)。一方、地役権については、存続期間の定めは登記事項とされていないため(不登80条1項参照)、存続期間の定めを登記することはできない。【平22-16-イ】

問題6 Aを賃借人とする賃借権の登記がされている不動産について、Bを賃借人とする賃借権の登記を申請することはできない。○か×か?

誤り。賃借権は債権であるので、同一の不動産について、既にその設定登記がされている場合であっても、重ねて設定登記をすることができる(昭30.5.21-972号)。【平17-23-ア】

問題7 賃借権の譲渡を許す旨の特約がない賃借権が譲渡された後、当該賃借権の譲渡についての賃貸人の承諾がされたときは、賃借権の移転の登記の登記原因の日付は、賃貸人が承諾した日である。○か×か?

誤り。賃貸人の承諾なくしてした賃借権の譲渡は、賃貸借契約の解除事由となる(民612条)。しかし、賃貸人の承諾なくしてされた賃借権の譲渡も有効であり、当該譲渡契約の時にその効力が生じ、その後に賃貸人の承諾があっても、当該承諾の時に譲渡の効力が生じるのではない。したがって、当該譲渡による賃借権移転登記の原因日付は、当事者の譲渡の合意が成立した日である。【平17-23-オ】

問題8 賃借権の設定の登記がされている賃貸借契約に、賃借権の譲渡又は転貸をすることができる旨の特約があっても、当該賃借権を目的とする質権の設定の登記の申請をすることはできない。○か×か?

誤り。賃借権の譲渡又は転貸をすることができる旨の特約がある場合において、質権の目的として賃借権を権利質とすることが認められるため、賃借権を目的とする質権設定登記の申請をすることができる(昭30.5.16-929号)。【平23-17-イ】

問題9 建物の賃借権の設定の登記の申請をする場合において、賃貸借契約に敷金があっても、その旨の登記の申請をすることはできない。○か×か?

誤り。賃借権の登記において、敷金があるときは、その旨が登記事項となる(不登81条4号)。したがって、賃貸借契約に敷金がある場合、その旨を登記しなければならない。【平23-17-エ】

問題10 宅地である甲土地について賃借権の設定の登記を申請する場合は、その申請情報の内容として、賃料の定めを、「乙土地を使用収益する」とすることができる。○か×か?

正しい。賃料を「乙土地を使用収益する」と定めて、賃借権設定の登記を申請することができる(昭41.4.15-193号)。【平27-22-オ】

問題11 地役権の登記がされた後に、その要役地について抵当権設定の登記がされているときは、当該地役権の登記の抹消の申請情報と併せて、当該抵当権者が承諾したことを証する情報を提供し、又はこれに対抗することのできる裁判があったことを証する書面を添付しなければならない。○か×か?

正しい。権利に関する登記の抹消は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる(不登68条)。地役権の登記がされた後に、その要役地について抵当権設定の登記がされた場合、当該抵当権の効力は地役権にも及ぶ。したがって、当該地役権の抹消について抵当権者は登記上の利害関係を有する第三者となるので、その承諾がある場合に限り、地役権の抹消登記をすることができる(不登令別表37添ハ参照)。【平16-16-4改】

問題12 要役地の地役権の登記である旨の登記がされた土地について、所有権の移転の登記を申請する場合には、承役地について、地役権の変更の登記を申請することを要しない。○か×か?

正しい。要役地について所有権が移転した場合には、特約のない限り地役権も当然に移転するが、承役地についてされている地役権の登記には、地役権者は登記されていないので(不登80条2項)、当該登記について変更の登記を申請する必要はない。【平17-27-オ】

問題13 地役権の設定の登記をした後、契約によって、民法第286条に規定する承役地の所有者の工作物の設置義務を定め、承役地にその旨の登記がされた場合には、登記官は、職権で、要役地についてその旨の登記をしなければならない。○か×か?

誤り。地役権の設定の登記をした後、契約によって、承役地の所有者の工作物の設置義務を定めた場合、承役地にその旨を追加する地役権の変更登記を申請することができる(不登80条1項3号)。しかし、当該特約は、要役地における登記事項とはなっていない(不登規159条1項)ため、承役地について変更登記がされても、登記官が職権で要役地についてその旨の登記をすることはない。【平23-16-イ】

問題14 承役地に対し、民法第287条による放棄を登記原因とする所有権の移転の登記がされた場合には、承役地及び要役地の地役権の登記は、職権で抹消される。○か×か?

誤り。承役地の所有者は、いつでも、地役権に必要な土地の部分の所有権を放棄して地役権者に移転し、これにより承役地の所有者の工作物の設置義務を免れることができる(民287条)。そして、承役地の所有者が所有権の放棄をしたときは、地役権は混同により消滅することになる(民179条1項本文)。この場合、承役地については、地役権者が権利者兼義務者の立場で混同を原因として地役権の登記の抹消を申請しなければならない。要役地については、承役地の登記に伴って、登記官の職権で、地役権の登記が抹消される(不登規159条3項)。【平23-16-ウ】

問題15 地役権の設定の登記をするときは、存続期間の定めを登記することができる。○か×か?

誤り。地役権については、存続期間の定めは登記事項とされていないため(不登80条1項参照)、存続期間の定めを登記することはできない。【平22-16-イ】

問題16 地役権の設定の登記が完了すると、登記権利者に対して登記識別情報が通知される。○か×か?

誤り。登記識別情報は、その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合に通知されるところ(不登21条)。地上権者は、地上権の登記名義人となるため登記識別情報が通知される。一方、地役権設定の登記では、地役権者は登記名義人とはならないため(不登80条2項)、登記識別情報は通知されない。【平22-16-ウ】

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