司法書士試験<過去問題肢別チェック ■民法総則「代理」>

問題1 Bの代理人Aは、Bのためにすることを示さずに、CからC所有のマンションを購入する旨の契約を締結した。この場合、当該契約をAがBのために締結することを契約当時Cが知っていたときは、Bは、当該マンションの所有権を取得することができる。○か×か?

正しい。代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなされる(民100条本文)が、相手方が代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、本人に対して直接にその効力を生ずる(民100条ただし書)。したがって、本人Bは、当該マンションの所有権を取得することができる。【平18-4-ウ改】

問題2 Aの代理人であるBは、Cに対し物品甲を売却したところ、Bの意思表示がCの詐欺によるものであったときは、Bは、その意思表示を取り消すことができるが、Aは、Bによる意思表示を取り消すことができない。○か×か?

誤り。代理人が相手方の詐欺により意思表示をした場合には、詐欺の事実の有無については代理人について決することになるため、当該意思表示は取り消すことができる行為となる(民96条1項、101条1項)。この場合において、当該代理行為の効果は直接本人に帰属することから、その取消権は本人に帰属するものとなる(民99条1項)。なお、代理人による取消権の行使の可否については、与えられた代理権の範囲によるものであり、当然に取消権を行使できるものではない。【平22-5-ウ】

問題3 BがAのためにする意思をもって、Aの代理人であることを示して、Cに対し物品甲を売却した場合であっても、Bが未成年者であるときは、Bがした意思表示は、Aに対して効力を生じない。○か×か?

誤り。制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない(民102条本文)。代理行為の効果は直接本人に帰属するので、代理人が制限行為能力者であってもその者が不利益を受けることはなく、また、本人も制限行為能力者をあえて代理人としているのであれば、行為能力の制限を理由に取り消すことを認める必要はないからである。したがって、未成年者である代理人がした意思表示は本人に対して効力を生じる。【平22-5-オ】

問題4 復代理人が委任事務の処理に当たって金銭等を受領した場合、復代理人は、委任事務の処理に当たって、本人に対して当該金銭を引き渡す義務を負うほか、代理人に対しても当該金銭を引き渡す義務を負う。もっとも、復代理人が代理人に当該金銭を引き渡したときは、本人に対する引渡義務は消滅する。○か×か?

正しい。復代理人は、特別の事情がないかぎり、本人に対して受領物を引き渡す義務を負うほか、代理人に対してもこれを引き渡す義務を負い、もし復代理人において代理人にこれを引き渡したときは、代理人に対する受領物引渡義務は消滅し、それとともに、本人に対する受領物引渡義務もまた消滅する(最判昭51.4.9)。【平19-5-ウ】

問題5 復代理人の代理権は、代理人の代理権を前提としていることから、代理人が死亡してその代理権が消滅した場合には、復代理人の代理権も消滅する。このことは、復代理人が本人の指名に従って選任された場合であっても同様である。○か×か?

正しい。復代理人の代理権は、代理人の代理権に基づくものであるから、代理人の代理権が消滅(民111条1項2号)すれば、復代理人の代理権も消滅する。このことは、復代理人が本人の指名に従って選任された場合も異ならない。【平19-5-オ】

問題6 Aの代理人であると称するBが、Cとの間で、Aが所有する甲建物の売買契約を締結したところ、Bが代理権を有していなかったという事例において、BがAの子であった場合、AがBの無権代理行為の追認を拒絶した後に死亡し、BがAを単独相続したときは、Bは、追認拒絶の効果を主張することができる。○か×か?

正しい。本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為は有効にならない(最判平10.7.17)。本人の追認拒絶により無権代理行為の効果が本人に及ばないことが確定するからである。したがって、Bは追認拒絶の効果を主張することができる。【平23-6-エ】

問題7 Aの代理人であると称するBが、Cとの間で、Aが所有する甲建物の売買契約を締結したところ、Bが代理権を有していなかったという事例において、Aが追認を拒絶した場合、Cが民法第117条第1項に基づいてBに対して損害賠償を請求するためには、Bに故意又は過失があることを立証する必要はない。○か×か?

正しい。無権代理人の責任は、無権代理人が相手方に対し代理権がある旨を表示し又は自己を代理人であると信じさせるような行為をした事実を責任の根拠として、相手方の保護と取引の安全並びに代理制度の信用保持のために、法律が特別に認めた無過失責任である(最判昭62.7.7)。したがって、第三者であるCが無権代理人Bの故意過失を立証する必要はない。【平23-6-オ】

問題8 無権代理人Aが、父親Bを代理して、第三者Cに対し、B所有の不動産を売り渡した。その後、Aが死亡してBがAを単独で相続した場合、無権代理人の地位を相続した本人が無権代理行為の追認を拒絶しても、何ら信義に反するところはないから、BC間の売買契約は当然に有効となるものではない。また、BがAの民法第117条による無権代理人の責任を相続することもない。○か×か?

誤り。判例は「本人が無権代理人を相続した場合、無権代理人が本人を相続した場合と異なり、相続人たる本人が被相続人の無権代理行為の追認を拒絶しても、何ら信義に反するところはないから、被相続人の無権代理行為は、一般に本人の相続により当然に有効となるものではない」としている(最判昭37.4.20)ので、前段は正しい。しかし、「民法117条による無権代理人の債務が相続の対象となることは、本人が無権代理人を相続した場合でも異ならないから、本人が無権代理人を相続した場合、本人は、民法117条により無権代理人が相手方に対して負担する債務を承継するのであって、本人として無権代理行為の追認を拒絶できる地位にあったからといって当該債務を免れることはできない」(最判昭48.7.3)ので、後段は誤っている。【平20-6-エ】

問題9 無権代理人Aが、父親Bを代理して、第三者Cに対し、B所有の不動産を売り渡した。その後、Aが死亡し、B及びAの母親Fが共同相続した後、Bが追認も追認拒絶もしないまま死亡し、FがBを単独相続した場合、無権代理人の地位を本人と共に相続した者が、さらに本人の地位を相続しているが、その者は、自ら無権代理行為をしたわけではないから、無権代理行為を追認することを拒絶しても、何ら信義に反するところはないため、BC間の売買契約は当然に有効となるものではない。○か×か?

誤り。判例は、「無権代理人を本人と共に相続した者が、その後更に本人を相続した場合においては、無権代理人を相続した者は無権代理人の法律上の地位を包括的に承継するのであり、その後本人を相続したとしてもそのことに変わりはないから、当該相続人は本人の資格で無権代理行為の追認を拒絶する余地はなく、本人自ら法律行為をしたと同様の法律上の地位ないし効果を生ずる」としている(最判昭63.3.1)。【平20-6-オ】

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