司法書士試験<過去問題肢別チェック ■民法総則「物・意思表示」

問題1 AとBとが通謀して、A所有の甲土地の売買契約を仮装し、Bへの所有権の移転の登記をした後、善意のCがBから甲土地を譲り受けた。この場合、Cが登記をする前に、AがDに甲土地を譲渡し、その旨の登記を経ていたときであっても、善意のCは、登記なくしてDに対して甲土地の所有権の取得を対抗することができる。○か×か?

誤り。AがBに不動産を仮装譲渡し、Cが善意でBからこれを譲り受けた場合であっても、Cが登記をする前に、DがAから当該不動産を譲り受けその登記を経たときは、CはDに所有権の取得を対抗することができない(最判昭42.10.31)。【平19-7-イ改】

問題2 A所有の甲建物について、AB間の仮装の売買契約に基づきAからBへの所有権の移転の登記がされた後に、BがCに対して甲建物を譲渡し、更にCがDに対して甲建物を譲渡した場合において、CがAB間の売買契約が仮装のものであることを知っていたときは、Dがこれを知らなかったときであっても、Dは、Aに対し、甲建物の所有権を主張することができない。○か×か?

誤り。転得者についても民法94条2項の「第三者」に該当するとされており(最判昭45.7.24)、善意の転得者Dは「第三者」として保護される。したがって、Dは、Aに対して、甲建物の所有権を主張することができる。【平27-5-イ】

問題3 A所有の甲建物について、AB間の仮装の売買契約に基づきAからBへの所有権の移転の登記がされた後に、Bの債権者Cが、AB間の売買契約が仮装のものであることを知らずに甲建物を差し押さえた場合であっても、CのBに対する債権がAB間の仮装の売買契約の前に発生したものであるときは、Aは、Cに対し、AB間の売買契約が無効である旨を主張することができる。○か×か?

誤り。通謀虚偽表示の目的物を差し押さえた者は、民法94条2項の「第三者」に該当するとされており(最判昭48.6.28)、善意のCは「第三者」として保護される。したがって、Aは、Cに対して、AB間の売買契約が無効である旨を主張することができない。【平27-5-ウ】

問題4 錯誤による意思表示をした者に重大な過失があった場合には、その表意者は、錯誤による意思表示の取消しをすることができないが、その意思表示の相手方は、錯誤による意思表示の取消しをすることができる。○か×か?

誤り。錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、相手方が表意者に錯誤があることを知り、若しくは重大な過失によって知らなかったとき、又は相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたときを除き、錯誤による意思表示の取消しをすることができない(民95条3項)。錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる(民120条2項)。したがって、錯誤による意思表示の相手方は、錯誤による意思表示の取消しをすることができない。【平17-4-ウ改】

問題5 家庭裁判所が相続放棄の申述を受理した後は、その相続放棄をした者は、その相続放棄について、錯誤による意思表示の取消しをすることはできない。○か×か?

誤り。相続放棄は、家庭裁判所がその申述を受理することにより効力を生ずるものであるが、その性質は私法上の財産上の法律行為であるから、民法95条の適用がある(最判昭40.5.27)。したがって、家庭裁判所が相続放棄の申述を受理した後であっても、その相続放棄をした者は、相続放棄について錯誤による意思表示の取消しをすることが可能である。【平17-4-オ改】

問題6 当事者が和解契約によって争いをやめることを約した場合には、その争いの目的である事項につき錯誤があったときでも、錯誤の規定の適用はない。○か×か?

正しい。争いの目的である事項につき錯誤があったときでも、和解当事者は錯誤を理由としてその取消しを主張することはできない(最判昭43.7.9参照)。和解は、たとえ真実と異なっていても合意した内容で当事者間の法律関係を確定するという趣旨のものであるからである。したがって、争いの目的である事項につき錯誤があったときでも、錯誤の規定の適用はない。【平29-5-3改】

問題7 養子縁組の意思表示については、錯誤の規定の適用があり、表意者に重過失があったときは、表意者は、自らその取消しを主張することができない。○か×か?

誤り。養子縁組における人違いなど身分上の行為の錯誤に関しては特則が定められており(民802条1号)、一般規定である民法95条の適用はないと解されている。したがって、当事者間に縁組をする意思があいときは、当該縁組は無効であり、表意者は、重過失があっても、養子縁組の無効を主張することができる。【平29-5-4改】

問題8 家庭裁判所に対してされた相続の放棄の意思表示については、錯誤の規定の適用はない。○か×か?

誤り。相続放棄は、家庭裁判所がその申述を受理することによりその効力を生ずるものであるが、その性質は私法上の法律行為であることから、民法95条の規定の適用があるとされている(最判昭40.5.27)。【平29-5-5改】

問題9 Aは、Bに欺罔されてA所有の土地をBに売却した後、この売買契約を詐欺を理由として取り消したが、その後に悪意のCがBからこの土地を買い受けた場合、Aは、登記無くしてその取消しをCに対抗することができる。○か×か?

誤り。民法96条3項の「第三者」とは、取消し前の第三者であり、取消し後の第三者は含まれない。取消し後の第三者CとAは対抗関係に立つため、Aは登記無くして、当該取消しをCに対抗することはできない(大判昭17.9.30)。【平18-6-イ改】

問題10 AがBに欺罔されてA所有の土地をBに売却した後、善意無過失のCがBからこの土地を買い受けた場合、Aは、詐欺を理由としてAB間の売買契約を取り消すことはできない。○か×か?

誤り。本肢の場合、意思表示を取り消すことは可能である。ただし、当該取消しを、善意無過失の第三者であるCに対抗できないだけである(民96条3項)。【平18-6-エ改】

問題11 意思表示の相手方が当該意思表示を受けた時に未成年者であった場合でも、その法定代理人が当該意思表示を知った後は、表意者は、当該意思表示をもってその相手方に対抗することができる。○か×か?

正しい。意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に未成年者又は成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。ただし、相手方の法定代理人がその意思表示を知った後は、この限りでない(民98条の2第1号)。【平24-4-イ改】

問題12 契約の解除の意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡した場合でも、そのためにその効力を妨げられない。○か×か?

正しい。意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない(民97条3項)。【平24-4-オ改】

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