司法書士試験<過去問題肢別チェック ■民法総則「法人」>

問題1 権利能力なき社団の代表者が団体を代表して銀行から500万円を借り入れたところ、団体がその返済をできなくなったときは、団体の代表者と構成員は、いずれも支払義務を負うことになる。○か×か?

誤り。最高裁は、権利能力なき社団の代表者が社団を代表してなした取引上の債務について「その社団の構成員全員に、1個の義務として総有的に帰属するとともに、社団の総有財産だけがその責任財産となり、構成員各自は、取引の相手方に対し、直接には個人的責任を負わない」と判示して、権利能力なき社団の構成員は個人的債務ないし責任は負わないことを認めた(最判昭48.10.9)。【平16-4-ア】

問題2 権利能力なき社団の構成員は、団体を脱退するに当たって、自己の持分相当の財産を分割して払い戻すように請求することは認められないが、構成員の間で特段の合意をしている場合には、財産の分割請求が認められる。○か×か?

正しい。最高裁は、権利能力なき社団の社団財産は構成員全員の総有に属するものであるから、構成員の間で総有の廃止など財産の処分について特段の合意をしている場合を除いて、原則として構成員は社団財産について持分権や財産分割請求権を有しないと判示した(最判昭32.11.14)。【平16-4-イ】

問題3 権利能力なき社団の構成員の資格要件に関する規則を構成員の多数決で改正した場合、これに承諾していない構成員であって、資格要件を改めたことにより構成員の地位を奪われることになる者は、その決議に拘束されることはない。○か×か?

誤り。権利能力なき社団について、その規則において定められていた改正手続に従い、総会での多数決により、構成員の資格要件の定めを改正した場合、当該改正規定は、特段の事情がない限り、改正決議について承諾をしていなかった構成員を含む当該社団のすべての構成員に適用されるものと解すべきものとされている(最判平12.10.20)。したがって、改正規定が施行された時点において、改正規定に定められた資格要件を満たしていないかった構成員は、その決議を承諾していなくとも構成員の地位を喪失する。【平16-4-ウ】

問題4 権利能力なき社団の構成員が死亡した場合には、その相続人が当然にその地位を承継して構成員になる旨を当該団体の規則で定めることはできない。○か×か?

誤り。権利能力なき社団の内部関係については、原則として当該社団の規則に従い、規則に定めのない事項については、法人格を前提とするものを除いた規定を、できる限り類推適用すべきであるとされている。権利能力なき社団は、形式的には法人格がないが、実質的には社団法人と変わらないからである。そして、社団法人はその定款において、社員の資格の得喪について定めることができる(一般法人11条1項5号)ので、権利能力なき社団においても、構成員の死亡によってその相続人が当然にその地位を承継して構成員となる旨を社団の規則で定めることは可能となる。【平16-4-エ】

問題5 権利能力なき社団であるA団体が、法人格を取得した場合において、法人格の取得以前から占有を続けていた不動産について取得時効を主張するときは、A団体は、占有開始時期として、法人格の取得以前にA団体が占有を開始した時点と法人格を取得した時点とを選択して主張することができる。○か×か?

正しい。権利能力なき社団が、法人格を取得する以前から占有する不動産を、法人格を取得した後も引き続き占有している場合には、権利能力なき社団が占有を開始した時点と法人格を取得した時点とを選択して主張することができる(最判平元.12.22)。【平16-4-オ】

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