問題1 養子である未成年者が実親の同意を得て法律行為をしたときは、その未成年者の養親は、その法律行為を取り消すことはできない。○か×か?

誤り。子が養子であるときは、養親の親権に服するため(民818条2項)、養子である未成年者が実親の同意を得て法律行為をしても、民法5条1項の同意を得た法律行為とはいえず、取り消し得る行為となる。したがって、その未成年者の養親は、当該法律行為を取り消すことができる。【平27-4-イ改】
問題2 未成年者と契約をした相手方が、その契約締結の当時、その未成年者を成年者であると信じ、かつ、そのように信じたことについて過失がなかった場合には、その未成年者は、その契約を取り消すことはできない。○か×か?

誤り。未成年者と契約をした相手方が、その契約締結の当時、その未成年者を成年者であると信じ、かつ、そのように信じたことについて過失がなかったとしても、未成年者がした法律行為について第三者を保護する規定は存在しないため、その未成年者は、当該契約を取り消すことができる。【平27-4-ウ】
問題3 未成年者Aが、A所有のパソコン甲をAの唯一の親権者Bの同意なく成年者Cに売る契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した。本件売買契約を締結するに際し、AとCとの間でAの年齢について話題になったことがなかったため、AはCに自己が未成年者であることを告げず、CはAが成年者であると信じて本件売買契約を締結した場合には、Aは、本件売買契約を取り消すことができない。○か×か?

誤り。未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならず、これに反する法律行為は、取り消すことができるが(民5条1項本文、2項)、制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるために詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない(民21条)。ただし、「無能力者であることを黙秘していた場合でも、それが、無能力者の他の言動などと相俟って、相手方を誤信させ、又は誤信を強めたものと認められるときは、なお詐術にあたるというべきであるが、単に無能力者であることを黙秘していたとの一事をもって、右に言う詐術に当たるとするのは相当でない」(最判昭44.2.13)とされており、単に告げなかったAは本件契約を取り消すことができる(120条1項)。【平23-4-ア】
問題4 未成年者Aが、A所有のパソコン甲をAの唯一の親権者Bの同意なく成年者Cに売る契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した。Aが、成年に達する前に本件売買契約の代金債権を第三者に譲渡した場合には、本件売買契約及び代金債権の譲渡につきBの同意がなく、かつ、追認がなかったときでも、Aは、本件売買契約を取り消すことができない。○か×か?

誤り。取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にしなければ、その効力を生じない(民124条1項)。また、追認をすることができる時以後に、異議をとどめずに、取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡があったときは、追認したものとみなされる(民125条5号)。したがって、成年に達する前に本件譲渡をしていても法定追認には該当せず、Aは取り消すことができる。【平23-4-ウ】
問題5 成年被後見人がした行為は、日用品の購入その他日常生活に関する行為であっても、取り消すことができる。○か×か?

誤り。成年被後見人の行った法律行為は、原則として行為能力の制限を理由に取り消すことができる(民9条本文)。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、取り消すことができない(民9条ただし書)。これは、本人の自己決定権を尊重し、その残存能力を有効に活用するという観点から、取消権の対象からはずしたものである。なお、『日用品の購入その他日常生活に関する行為』とは、具体的には、食料品、衣料品の買物、電気、ガス、水道料金の支払い、その支払いのために必要な範囲での預貯金の引出し等が考えらる。【平15-4-イ改】
問題6 家庭裁判所は、保佐開始の審判において、保佐人の同意を得ることを要する法定の行為に関し、その一部について保佐人の同意を得ることを要しない旨を定めることができる。○か×か?

誤り。保佐人制度において、民法13条1項の保佐人の同意権を制限することは許されないと解されている。被保佐人は、事理弁識能力が著しく不十分な者なので、被保佐人を保護するため、最低限民法13条1項の範囲で同意権を認める必要があるからである。【平15-4-ウ改】
問題7 成年被後見人が日用品の購入をした場合には、成年後見人は、これを取り消すことができるが、被保佐人が保佐人の同意を得ないで日用品の購入をした場合には、保佐人は、これを取り消すことができない。○か×か?

誤り。成年被後見人が日用品の購入をした場合、成年後見人は、これを取り消すことができない(民9条ただし書)。日用品の購入その他日常生活に関する法律行為については、本人の自己決定権を尊重し、その残存能力を有効に活用するため、取消権の対象とされていないからである。また、被保佐人が保佐人の同意を得ないで日用品の購入をした場合、保佐人は、これを取り消すことはできない(民13条1項柱書ただし書、4項)。【平25-4-ア】
問題8 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者の四親等の親族は、その者について後見開始の審判の請求をすることができるが、当該能力が不十分である者の四親等の親族は、その者について補助開始の審判の請求をすることができない。○か×か?

誤り。精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる(民7条)。また、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる(民15条1項)。【平25-4-ウ】
問題9 未成年者が買主としてした高価な絵画の売買契約を取り消した場合において、その絵画が取消し前に天災により滅失していたときは、当該未成年者は、売主から代金の返還を受けることができるが、絵画の代金相当額を不当利得として売主に返還する必要はない。○か×か?

正しい。未成年者が法定代理人の同意を得ずに高価な絵画の売買契約を締結した場合、当該法律行為を取り消すことができる(民5条2項)。取消しにより、法律行為は、遡及的に無効となり(民121条)、当事者双方は、受け取った財産については、原状回復義務が生じる(民121条の2第1項)が、制限行為能力者である未成年者(民13条1項10号参照)は、現存利益のみ返還すれば足りる(民121条の2第3項後段)。本問の場合、未成年者は、売主からの代金の返還を受けることができる(民121条の2第1項)が、未成年者が受領した絵画は、天災により滅失しており、現存利益はなく、返還する必要はない。【平19-6-ア改】
問題10 成年被後見人が締結した契約をその成年後見人が取り消すには、その行為を知った時から5年以内にする必要があるが、意思無能力を根拠とする無効であれば、その行為を知った時から5年を過ぎても主張することができる。○か×か?

正しい。成年被後見人が締結した契約は、成年後見人は、原則として取り消すことができ(民9条本文、120条1項)、当該取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する(民126条前段)。成年後見人は追認権者である(民122条、120条1項)が、法定追認(民125条)を除き、追認の前提として法律行為を取り消すことができることを知っていることが必要である(民124条1項)。したがって、成年後見人が行為能力の制限に反する行為を取り消す場合、成年後見人がその行為を知った時が追認することができる時であるから、その時から5年以内にする必要がある。一方、意思無能力者の行為は、常に無効である(民3条の2)。無効は誰からでも主張でき、またその期間の制限もない。【平19-6-イ改】
問題11 家庭裁判所が不在者Aの財産管理人としてDを選任した場合において、DがA所有の財産の管理費用に充てるためにAの財産の一部である不動産を売却するときは、Dは、これについて裁判所の許可を得る必要はない。○か×か?

誤り。家庭裁判所が選任した不在者の財産管理人が、民法103条に規定する権限を超える行為をするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる(民28条前段)。不在者の不動産を売却する行為は、民法103条に規定する権限(保存行為又はその性質を変えない範囲内における利用又は改良を目的とする行為)を超える行為(処分行為)である。したがって、家庭裁判所の許可を得ることを要する。【平22-4-イ】
問題12 不在者Aが財産管理人Dを置いた場合において、DがA所有の財産の管理を著しく怠っているときは、家庭裁判所は、Aの生存が明らかであっても、利害関係人の請求により、管理人の任務に適しない事由があるとしてDを改任することができる。○か×か?

誤り。不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、管理人を改任することができる(民26条)。しかし、不在者の生存が明らかな場合に、不在者本人により選任された管理人が委任された管理行為を行うときは、たとえ義務違反があっても、それは当事者間で処理が可能な問題であるため、家庭裁判所による改任は認められない。【平22-4-エ】
問題13 不在者が管理人を置いた場合には、その不在者の生死が明らかでなくなったとしても、利害関係人は、その管理人の改任を家庭裁判所に請求することができない。○か×か?

誤り。不在者が管理人を置いた場合において、その不在者の生死が明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、管理人を改任することができる(民26条)。【平28-4-1】
問題14 不在者が管理人を置いていない場合においても、その不在者が生存していることが明らかであるときは、利害関係人は、管理人の選任を家庭裁判所に請求することができない。○か×か?

誤り。不在者が管理人を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる(民25条1項)。これは、不在者が生存している場合であっても同様である。【平28-4-2】
問題15 家庭裁判所が管理人を選任した後、不在者が従来の住所において自ら管理人を置いた場合には、家庭裁判所が選任した管理人は、その権限を失う。○か×か?

誤り。家庭裁判所が管理人を選任した後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない(民25条2項)。家庭裁判所が選任した管理人は、その権限を当然に失うわけではない。【平28-4-3】
問題16 家庭裁判所が選任した管理人がその権限の範囲内において不在者のために行為をしたときは、家庭裁判所は、不在者の財産の中から、管理人に報酬を与えなければならない。○か×か?

誤り。家庭裁判所は、管理人と不在者との関係その他の事情により、不在者の財産の中から、相当な報酬を管理人に与えることができる(民29条2項)。【平28-4-5】
問題17 Aが失踪宣告を受け、Aの妻BがAの土地を相続したところ、Bは、相続した土地をCに売却した。その後、Aが生存することが明らかになったため、失踪宣告は取り消された。この場合において、BがCに土地を売却した際にAの生存について悪意であったときは、Cが善意であっても、Aについての失踪宣告の取消しにより、Cは、当該土地の所有権を失う。○か×か?

正しい。失踪の宣告の取消しがなされると、原則として失踪の宣告による権利義務の変動は生じなかったことになるが、善意者保護のため、失踪の宣告後、取消し前に善意でした行為の効力には影響を及ぼさないとしており(民32条1項後段)、この行為が契約である場合、当事者双方が善意でなければならない(大判昭13.2.7)。本肢においては、Bが悪意であるため、Cが善意であっても、失踪宣告の取消しにより、Cは土地の所有権を失う。【平18-5-ウ】
問題18 Aが失踪宣告を受け、Aの妻BがAの土地を相続したところ、Bは、相続した土地をCに売却した。その後、Aが生存することが明らかになったため、失踪宣告は取り消された。この場合において、BがCに土地を売却した際、BとCがともにAの生存について悪意であったが、CがDに土地を転売したときは、DがAの生存について善意であったとしても、Aについての失踪宣告の取消しにより、Dは、当該土地の所有権を失う。○か×か?

正しい。BC双方が悪意であるため、転得者Dが善意であっても、失踪宣告の取消しにより、Dは土地の所有権を失う。【平18-5-エ】