2017年司法書士合格者インタビュー 昆 裕之さん

清水 それでは、合格者インタビューを始めます。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。

目次

司法書士を目指した理由

清水 まず、最初に司法書士試験に合格するまでの過程についてお伺いします。世の中にいろいろな資格がある中、なぜ司法書士を目指そうとしたかをお聞かせください。併せて差支えない範囲で、今までのお仕事や、法律の学習経験についても伺わせていただきたいと思います。

合格者 昆 裕之さん

私が司法書士を目指そうとした理由は、まず父の存在が大きいです。もともと父が岩手で開業司法書士をしています。私は司法書士の存在については知っていましたが、特に目指そうとは思っていなくて、大学を卒業してすぐは公務員として裁判所に勤めていました。その後裁判所職員として仕事をする中で父が司法書士として行っている仕事に触れることがありまして、そこで司法書士が街の法律家としてお客さんに寄り添って仕事をしている様子を見て、「私も自分の資格でお客さんのハッピーのために仕事をしたいな、そういう仕事が魅力的だな」と思い、司法書士を目指そうと思いました。

今年の司法書士試験を振り返って

清水 では、次に今年の司法書士試験を振り返って、本試験当日はどのような気持ちで迎えたか、午前の部の問題を解いた後の感想、午後の部の問題を解いた後の感想、そして、本試験を終えてどのように感じたかをお聞かせください。

思い返してみますと、当日の朝は、あんまり気負うこともなく、自然な状態で起きて試験会場に向かって、事前に自分で決めていたとおりに、直前に見返す項目や時間配分を確認して、試験に臨めたと思います。午前の部は、そんなに時間に追われることもなく、平常心で解くことができて、結構できたのではないかという手応えでした。午後は予想どおり時間的には厳しかったのですけれども、何とか書きたいことは書き終えることができたので、午後の部の問題を解いた直後は「結構できたぞ」と、そういうふうに思っていました。ただ、その後試験が終わって会場から出るときに、午前の部の解答速報が配られたのですけれども、すぐに午前の部だけ答え合わせしてみたら思ったより間違っていて、帰りの電車ではかなり落ち込んでいたのを思い出します。

清水 午後の部は時間内に全部書き終りましたか? 記述式については、ここまで書いたけれどもここが埋められなかったということはありましたか?

結果的に埋めていないところは、不動産登記記述式の添付書類のところです。

清水 記号で書くところですね。

はい。あとは登記原因証明情報を記載するところです。
そこについては、完全に白紙で出しました。添付情報は今までの経験上、不動産登記の時間配分から考えると、なかなか厳しいということがあったのと、配点がちょっと低いのではないかという情報があったので、書けなかったら書けなかったで仕方がないと、最初から思っていました。登記原因証明情報のところは、初めて見た形式だったので、解答を考える心の余裕がなくて、これも仕方がないと思って書きませんでした。

清水 そこは捨てて、あとは残りの部分を確実に仕上げていこうという戦略だったわけですね。

はい。そうです。

予備校選びのポイント

清水 次に、予備校選びのポイントについて伺います。司法書士試験の学習を開始するに当たって、複数ある予備校の中からクレアールのどこが良いと思われたかをお聞かせください。併せて通学講座ではなく、通信講座を選んだ理由もお聞かせください。

そもそも通信講座を選んだ理由としては、私の学習開始当時の住まいが岩手県だったもので近くに通える予備校はないですから、まず通信講座を前提として予備校を探していました。また、受験勉強をするに当たり仕事を辞めて無職になったため、やはり費用の面でも心配はあったので、いろいろ予備校を調べて、費用が安くて通信で受講できることから、クレアールを選びました。

クレアールを受講した感想

清水 では、クレアールを受講した感想をお聞きします。2回目の受験で難関といわれる司法書士試験に合格なさったわけですが、クレアールで受講して良かったところをお聞かせください。

まず、講義の形式ですけれども、私が一番良かったと思うのは、実体法と手続法をセットで教えてくれるところです。

清水 民法と不動産登記法を一体的に学習するところですね。

そうですね。民法と不動産登記法、会社法と商業登記法を一体的にというところです。会社法と商業登記法という点で言いますと、会社法上は必要な手続きだけども、商業登記法上の添付書面としてはそれを明らかにすることまでは求められないなど、実体法と手続法のずれが生じます。その点で、別々よりも一体で学んだ方が覚えも良かったですし、同時に勉強できている感覚だったので、その点は非常に良かったと思います。また、クレアールではメールで質問を受けてくれて、メールで質問すると回答をいただいていました。私は会社法や登記法に関しては完全に初学だったので、結構すっとんきょうな質問をすることがあったと思いますが、丁寧に回答をいただいて、具体的な事例ですとか理由も分かりやすく付けて回答をいただいたので、通信の受講生としては、とてもありがたかったです。

通信講座のメリット

清水 では、続いて通信講座のメリットをお聞かせください。実際に通信講座で学習を進めていく中で、このようなことが良かった、この点は利便性が高かった、そして、最もよく活用した点がありましたらお聞かせください。

通信講座のメリットとしては、やはり講義のスピードを変えられるのがとても良かったです。

清水 倍速で視聴できる機能ですか。

そうですね。私も自分の理解が全然できていない科目については通常で聞いたり、少し早めたりした程度でしたけれども…。もともと裁判所の仕事をする中で知識として持っていた憲法や民事訴訟法などはある程度飛ばしてメリハリを付けて受講することができたので、その点がありがたかったです。あとは聞き逃しても戻れるところですね。私もちょっとボーっとしてしまう時もあったので、そういう時に戻れることがありがたかったです。

1年目の学習の進め方

清水 続いて、全体的な学習方法についてお聞きしていきます。まず、1年目の学習の進め方ですが、学習1年目は基本講義から始まり、最終的には直前期の答練や模試といったアウトプットで終了する流れでした。学習1年目の基本講義を進めていく時の学習方法や心構え、直前期の答練や模試の利用方法や注意点をお聞かせいただきたいと思います。まず、学習開始から年内、年明けから3月、受験案内書が配布される4月から司法書士試験までの時期ごとの学習状況を教えてください。

私が学習を開始したのは、平成27年の7月頃になります。当時はまだ仕事をしていて、結局平成28年の3月末まで仕事をしていたので、少しずつ講義は受けていたのですが、確か4月の時点でまだ会社法と商業登記法の講義を聞いている段階でした。

清水 まだ基本講義の途中ということですね。

はい、そこまでで1周していなかったので、4月から完全な専業の受験生になって、急いで聞き終えてすぐ直前期の総合答練に入っていったという状況でした。

1年目の受験の結果分析および2年目の学習の進め方・2年目の受験で強化したこと

清水 分かりました。では、次に1年目の受験の結果分析および2年目の学習の進め方、2年目の受験で注意したことをお聞きします。1年目の受験を終えた後の試験結果分析をどのように行い、どのような分析結果になったか。それを前提として、2年目の受験で合格を勝ち取るために、どのような点に注意して学習計画を立てて実際に学習を進めていったかを、択一式・記述式、それぞれお聞かせください。特に1回目の受験以降で、このような工夫をしたということがあればお聞かせください。

1回目の受験の後に試験の結果分析を行って、それで2年目の受験に向けてやり方を変えよう、この1年はこういう方針でいこうと思ったのは、大きく分けて3つあります。まず、模試や答練を受けるに当たって、本試験を意識して行うということが1つです。次に復習を徹底的に行うこと、最後に諦めることの3点になります。具体的に言いますと、まず1点目の本試験を意識することということに関しては、1回目の受験の際は、先ほど申したとおりスケジュール上かなり厳しかったこともありまして、そんなに模試に向けての準備をすることなく、日々の講義を受けて模試を受けて、答え合わせをして、何点で難しいなというような程度の使い方しかできていなかったのです。しかし2年目に向けては、実際に本試験も一度体験しているので、本試験をどのような時間配分で解いていこうかとか、試験直前の自分のスケジュール、朝ご飯に何を食べるかとか、どういう時間帯に会場に入るかといった、そういうところまで全部スケジュールを立てて、その上で1回1回の模試や答練に臨むということです。うまくいかなかったところは、それをちょっとずつ変えていって、最終的には本試験のときにベストな状況で臨めるようにしようと取り組みました。2点目の復習を徹底的にやるということについてですが、もちろん一度目の試験の際にも復習が大事だということは分かっていましたし、やらなければという気持ちはあったのですけれども…。あまりスケジュールを立ててやることができなくて、なるべく回せればいいな、1周でも2周でも3周でもいいから本試験までなるべく回して、そうすれば覚えているに違いないだろうというような見立てでやっていました。なので、結局復習をするときには、前回のことを完全に忘れてしまっていて、記憶が定着しないということがありました。2回目の試験に向けては、最初にこの知識を覚えようと決めたら、その後すぐに、例えば翌日、3日後、1週間後、1カ月後というように、きちんと記憶が残るように自分でスケジュールを立てて、しっかりそれを復習していくというようなやり方をすることで、うまく記憶が定着できたかなと思います。最後に3点目ですが、諦めることと言ったのは、もちろん諦めないのは大事なんですけれども…。

清水 いい意味で諦めることも必要だということですね。

そうですね。1年目の際は、結局本試験の直前までいろいろな知識を得ようと、諦めずになるべく多くの知識を得ようと思って覚えようとすると、結局知識は際限がないので、新しいもの新しいものというように手を出してしまって、先ほど言った復習がうまくいかなかったということにも関連してくるのですが、そこがうまくいかなかったのですね。また、記述式の問題でも、きちんと全ての欄を埋めて答えを出そうということで、そこを諦められなかったので、当時の私は到底時間がない、実力不足にもかかわらず、全ての欄を埋めようとしてうまくいかなかったというのが、1回目の反省でした。ですから、2回目の試験に当たっては、いい意味で諦めて、本試験1カ月前になったら、新しい知識や教材に手を出すことはせずに復習に集中するということです。また、最初の方に申しましたけれども、不動産登記の記述では、添付情報欄のところは無理をしない。時間的に厳しければ、そこの欄を埋めるのは諦めて、他のところでケアレスミスがないように解くということを自分の中で最初に決めていたので、2回目の受験をするに当たっては、良い準備ができたのかなと思います。

清水 試験の戦略をしっかり立てていたというところが良かったですね。それから先ほどの復習の仕方を具体的に教えていただきたいと思います。例えば翌日、3日後、1週間後、1カ月後といった形で復習をされたということでしたが、ある知識があって、それを翌日覚えているかどうかを確認して、また3日後、1週間後に確認して、例えば覚えていたら○を付ける、覚えていなかったら×を付けるといったような形ですか?

エクセル表で管理をしていました。1日の勉強の中で、この項目を覚えるぞと決意した知識は、その都度エクセルに打ち込んでいき、その後先ほど述べた間隔をあけて復習していくのです。最初はどういう間隔で復習をするかというのは、なかなか決められなかったのですけれども…。だいたいこのぐらいの間隔なら大丈夫だなというのが分かってきた後は、最初に項目を打ち込んだら3カ月後の予定までエクセルに打ち込んでおいて、あとは毎日の復習の時間帯に、その日にやるべき項目はエクセルを見て把握し機械的に復習をしていました。

清水 エクセルを使ってスケジュール管理をしていたのですね。

はい。そうです。

学習時間、学習量

清水 では、学習時間と学習量についてお聞きします。1年目の本試験以降、2年目の学習に当たって、時期ごとにどのようなことを学習の軸として、どのぐらい学習していたかをお聞かせください。

スケジュールという意味も含めての回答になりますが、2年目はクレアールの上級パーフェクトコースを受講していたので、そのコースで定められているスケジュールに沿って、3月までは各科目の講義を受けて、4月以降は答練を受けながら自習するといったスケジュールで行っていました。学習時間や量ということに関しては、専業受験生でしたので、できる限りやりました。

清水 本試験直前の1カ月前とか、それより少し前の時期とか、勉強時間はだいたいどのくらいだったか覚えていますか?

そうですね、あまり何時間というのは考えていなかったですが…。4月以降はおそらく毎日10時間位で本試験直前はもっと勉強していたと思います。でも途中休憩はしていたので、具体的に何時間というと難しいですね。

クレアールの通信講座で学習を開始した直後の感想

清水 それでは、次にクレアールの通信講座で学習を開始した直後にさかのぼって感想を伺います。司法書士は難関資格の1つであるため、民法・不動産登記法や会社法等の基本講義を学習する早い段階で挫折してしまう方も少なからずいらっしゃいます。特に不動産登記法はほとんどの受験生が見聞きしたことのない手続法であるため、学習初期段階では全体像が見えず悩む方が多いです。学習を開始した初年度を振り返っていただき、辛かったことや工夫したことがあれば、お聞かせください。また、辛かったときがある場合は、どのようにして乗り越えて学習を続けていったかをお聞かせください。

学習を開始した直後は、まず講義を受けるペースというか、講義を受けて復習をして、○×テストをどういう段取りで、どういう時間帯にやるかという、ペースをつかむのが大変でした。それが慣れてきてからは、確かに初学の科目に関しては、やはり一度で理解できることは難しかったので、そのときにどうしたかというと、取りあえず進めるということでした。

清水 分からないことがあっても、とにかく先に進んでいくということですね。

はい。いつかは分かるだろうということで、まず進めるしかないかなと思って進めていました。

清水 最初に不動産登記法を学習したときに、つまずいたということはなかったですか?

不動産登記法の学習は初めてではありましたが、これまでの経験上、裁判所で働くに当たって民事訴訟法を学んだことはあったので、役所に書類を出すに当たっての手続を学んだことがあるという経験から、「こういう部分に関しては裁判所の場合と一緒だな」とか、「ここは違うな」とか、そういう視点で見ることができたので、その点では他の初学者の方に比べると抵抗が少なかったのかなと思います。

清水 比較的すんなり入っていけたということですね。

はい、そうです。

教材の利用方法

清水 では続いて、具体的な学習方法や学習に際して工夫したことについてお伺いします。まず、教材の利用方法についてですが、司法書士試験は出題される科目が多く、クレアールでは学習目的別にさまざまな復習教材をご用意しています。学習を進めていく上で、どの時期にどのような教材を利用したか、実際に学習した教材や、ご自身で作成なさったノートを拝見させていただきながら、利用方法をお聞かせください。

はい、これは実際の教材と資料をお見せします。

清水 そうですね。具体的に見せていただきながらお話を伺いたいと思います。まず、どこからいきましょうか?

会社法関係からでよろしいですか?

清水 はい、お願いします。

私はこの勉強期間を通じて、クレアールの商法(会社法)・商業登記法のテキストを自分のメインのテキストとして使いました。利用方法としては、過去問で新たに仕入れた知識とこういう説明は分かりやすいなと思った知識は、クレアールのテキストに全部書き込むようにしました。

清水 テキストに情報を集約して一元化したということですね。

そうですね。自分で表を作って、印刷した場合には、テキストに貼り付けたりしました。あとはパソコン上で表を作ることもあったのですが、そのときはテキストからどのエクセルファイルを見ればよいかというように工夫していました。

清水 その情報へすぐにアクセスできるようにしたということですね。

はい、そのように工夫していました。

清水 テキストはそのような形で、過去問の知識や、新たな知識をテキストに加えていく。表を作ったらテキストに挟み込んだり、エクセルで表を作って、すぐにそこにアクセスできるような工夫をなさっていたということですね。

あとは理由付けを書き込んだということですね。

清水 分かりました。択一六法はどう使いましたか。

会社法の択一六法も使ってはいたのですけれども、メインにはしていなくて…。ただ分かりやすく整理された表などがありましたので、択一六法の表も使いました。

清水 科目によって一元化するものが異なっていたということですね。

はい、そうです。民法に関しては、もともと知識がある程度あったので択一六法を、不動産登記法については択一六法と合格書式マニュアルの2種類をメインの教材として使っていました。これも同様に覚え方や表を作ったり、合格書式マニュアルに関しては、答練でどの書式についてどの部分を間違ってしまったのかということが、後で見返した場合に分かるようにしました。

清水 合格書式マニュアルに「ここをこういうふうに間違えた」ということをそのまま記載したということですね。

はい、そうです。なので、本試験の前に一通り書式を見返すことになるのですが、ここは何回も間違ったなということが、自分の印象に残るように意識して使っていました。

清水 講義の中のパワーポイントは使われていましたか?

私の使い方としては、パワーポイントを一時停止してノートに書き込んだりしました。

清水 ノートやテキストなどに書き込んだりしていたということですね。

その点でも、講義を一時停止できるのが、ありがたかったです。

過去問の学習方法

清水 続いて、過去問の学習方法について伺います。司法書士試験の学習では、ご存じのとおり、過去問の攻略が合否に直結します。過去問をどのように学習したかをお聞かせください。併せて1000問ノックWebテストの活用方法をお聞かせください。

過去問ですけれども、そんなに回数として何回回すという目標を立てて解くことはしませんでした。結局最終的には、テキストや択一六法に載っている条文や先例などを正確に思い出せれば解けると思いましたので、過去問を解いて条文やテキストに当たって、それで分かっていれば、それで良いかなという考えがありました。ただ、回数を繰り返して解くようにしていたのは、テキスト上の知識としては知っていても、それが問題として問われていた時に、そこをつなげられなかったということがあったからです。

清水 知識としては身に付いていても、こういう切り口で出題されたときに回答できなかったというような場合ですね。

はい、そうです。テキストのこの部分を聞かれているというように、その場で気付けなかった問題に関しては、そこをつなげる作業を何回かする必要があると思ったので、何回か復習をするようにしていました。これは過去問という意味でも、答練の問題という意味でも、同様なのですけれども。1000問ノックWebテストは、私は使いませんでした。

清水 分かりました。過去問については、例えばよく間違える問題に印を付けたなど、工夫されたことがあれば、お聞かせください。

過去問の使い方は、2年の間にいろいろ変遷があって、最初は間違った問題には「何月何日×」と付けて、後で何回も回す前提ですぐ分かるようにという目印を付けていたのですけれども、最終的には先ほど申し上げたような使い方になりました。ただ、正解していたかどうかぐらいはチェックしていたと思いますけれども、あんまり過去問自体に書き込みなどは付けていませんでした。

条文の学習方法

清水 では、続いて条文の学習方法について伺います。司法書士試験では過去問とともに条文の学習が必須です。この条文の学習を効率良く進めるために、クレアールでは司法書士試験のための教材として択一六法を作成しています。1年目、2年目、それぞれどのように条文の学習に取り組んだか、そして、択一六法をどのように使用なさったかをお聞かせください。

択一六法はとても使いやすいと思いました。条文とそれに関連する先例・判例、あとは過去問も載っていたので、これはとても使いやすいと思って、各科目で使っていました。ただ、一部では条文をメインで勉強しなかった分野もありました。それは不動産登記法の申請人の印鑑証明書の添付の条文が、何度読んでも読み解けなくて、これはやめようと思って、テキストにあるこういう基準であれば、印鑑証明書の添付が必要だ、そういうところの方式を覚えれば、まず十分だろうということで、読み解くのは諦めました。あともう1点としては会社法の条文がなかなか長くて読みづらくて、ここも条文がメインというよりは、やはりテキストをメインで項目ごとに覚えた方がいいだろうという判断で、先ほど申し上げたとおりテキストをメインに勉強するようにしました。

清水 必ずしも条文にこだわり過ぎるのではなく、科目や分野ごとに自分の覚えやすい形で覚えようとしたということですね。

はい。そうです。

記述式の学習方法

清水 続いて、記述式の学習方法について伺います。初学者の方には記述式の学習に不安を持つ方もそれなりにいらっしゃいます。記述式の学習を進めていく上で注意したこと、工夫したことをお聞かせください。また、答案構成用紙をどのように使用したかを不動産登記、商業登記、それぞれお聞かせください。

記述式の学習方法として意識して取り組んでいたことは、先ほど言ったこととも関連しますけれども、合格書式マニュアルに情報を集約することです。2点目として、練習する際は略語を使って何度も練習することです。

清水 時間の節約のためですね。

はい、そうです。最後に3つ目としては、本試験形式の解き方を自分の体で覚えられるところまで何度も練習するということの3点です。合格書式マニュアルに関しては、先ほど申し上げたこととも関連しますけれども、間違ったところを、合格書式マニュアルに何度も書き込んだり、似たような書式でよく間違ってしまうところの区別というか覚え方を書き込んだりすることで、本試験で迷わないように意識をしました。次は略語に関しては、略語は人それぞれ略し方を様々に考えれば良いとは思いますが、やはり頭の中で1つのワードが出てくれば、本試験でも書けると思いますので、練習するに当たっては、一文字ぐらい記号のようなもので何度も回数を練習できたほうが良いのではないかと思います。あとは本試験で間違って略語を使わなければ、よろしいかと思います。最後に3点目の本試験形式の問題の解き方を体で覚えるというところですが、やはり記述式は、午後の部の問題全体で見てもとても時間的に制約が厳しいので、どの情報をどの順番で処理するということは、最初から決めておいて臨むようにしました。

清水 設問があって、注意事項があって、事実関係があって、そういう中でどのような順番で見ていくかについては、初めから決めていたということですね。

はい、そうです。年ごとにちょっとずつ情報の出方が違ったりはするのですけれども、おおむね近年は一緒の出題のされ方だと思うので、その点は最初から決めて、もし違うところが出ればその場で何とか対応しようというつもりでした。
答案構成用紙は使わずに、問題用紙に書き込むことで、メモをまとめて直接解答用紙に記載するという方法を取りました。いろいろなやり方があって、私もいろいろ試したのですけれども、答案構成用紙を使わないほうが早く解けるということと、答案構成用紙を使うことで、かえって二度のメモをする中で焦って間違いが生じてしまうということがあったので、結果的には使わないという方法を取りましたが、それは人によってやりやすい方法があると思います。また、答案構成用紙を使わないことで、本試験の限られた自分の机のスペースがある程度広く使えるという点もあったので、私にとっては向いていたのかなと思います。

清水 不動産登記だったら、例えば登記記録の所だけメモをしていくといったような形ですか?

そうですね。登記記録のページをメインにして、解答用紙に記載すべき申請書の簡略版のメモのようなものを登記記録のページに書いていって、「順番はどうかな」と考えて、結局その場では添付情報は考えずに私は処理していましたので、主にその目的・原因・当事者の所を意識してメモを取っていました。

清水 商業登記の場合、これも同じく登記記録の所にメモをしておくわけですね。

商業登記だと、役員と、あとは資本金、株式数の変更の所は登記記録の用紙に書いたのですけれども、その他は別紙を使って、別紙の中で登記事項の変更の内容が出てくれば、そこにチェックをしておいて、最後に答案用紙に書くときは、別紙の所を読みながら書いた用紙に書いていくという方式ですね。

学習を効率良く進めていくうえで工夫したこと

清水 続いて、学習を効率良く進めていく上で工夫したことについて伺います。学習を効率良く進めるために、1日、1週間をどのように過ごしていらっしゃったか、そして、クレアールの通信講座を、どこでどのように学習したか、音声学習の利用の有無や、復習講義の利用の有無、および活用方法をお聞かせください。

今回の試験を受けるに当たって、4月から6月の直前期は、実力完成総合答練が始まっている時期でしたので、1週間に1回問題が送られてきますから、毎回実力完成総合答練の問題を受ける時に、そこを本試験だと思って準備をしました。なので、答練を受ける際は普段の勉強場所とは違う所にいって、時間ももちろん計って、本試験のつもりで解くように、そういう形で直前3カ月を過ごすことができたので、その点で本試験形式の問題に慣れること、あとは本試験の1日のスケジュールに慣れることができたと思います。復習講義と音声学習に関しては、全て自宅でパソコンの画面を見ながら講義を聞いたり、答練の解説講義を見たりしていましたので、私は使っていませんでした。

苦手科目、苦手分野の克服法

清水 次に、苦手科目や苦手分野の克服法についてお聞きします。学習を進めていくと、例えば民法の何々の分野が分かりにくくて辛かった、会社法のイメージがつかみにくかった、記述式の解き方に戸惑いがあったなど、苦労したことがあったと思います。このようないわゆる苦手となりそうな分野、あるいはご自身が苦手と感じた科目・分野を、どのように克服したかをお聞かせください。

私が一番苦手と感じていたのは、会社法でした。もちろんそれまで勉強したことのない科目でしたし、講義を聞いていてもやはりイメージが湧かない、そして、問題を解いても解けないということが続いて、どうしようかなと思っていました。結果的に意識して使ったのは表の活用、あとはイメージの活用という2点になります。表の活用というのは、やはり会社の種類によって、決議機関がどう変わるかとか、公告が必要かどうかとか、そういう細かい違いがあって、そういうところが問題として問われるのですけれども、解けなかった問題を復習していると、択一六法や他の資料に載っている表のこの部分が問われているのだなと感じることが多かったので、これは表をきちんと覚えておくと強いぞということが途中で分かりまして、表を覚えるようにすることを意識しました。もう1つイメージしたのは、例えばこの会社の決議はどこの機関がやるかとか、機関によってどのような権限の違いがあるかというところも、結局覚えていないと答えられないところで、なかなか覚えるのは難しかったのですけれども…。私の場合は、会計参与まで含めてすべての機関が置かれている会社を想定して、その機関の役員として自分がイメージしやすい人を具体的に当てはめて覚えるようにしました。

清水 お友達や親戚の方など、周りの知っている人を当てはめたのですか。

そうですね。知人とか有名人を当てはめました。

清水 知人とか有名人を、例えば社外取締役や株主さんに当てはめて、イメージをしやすいようにしたということですね。

はい、そうです。あとはその知人をイメージしながら、なるべく印象に残るように覚えるという方法を取っていました。

清水 まとめますと、苦手分野の所は表を使って整理した、それからイメージを湧かせることによって苦手分野を克服していった、そういったところですね。

答練・模試について

清水 では、続いて答練・模試についてお聞きします。答練を解くときの心構え、注意したこと・工夫したことや、返却された答案・成績表の活用方法をお聞かせください。先ほどと重複するところがあるかもしれませんが。

そうですね、はい。やはり本試験を意識して臨むということが一番大きいかなと思います。なので、スケジュール、筆記用具、時間帯、そういうところを本当に本試験だと自分で思って解くということが、心構えとしては大きいかなと思います。あとは返却後の話になりますが、解答直後に復習をなるべくすぐにやるということを意識していました。最初のうちは、全ての肢についてきちんと復習しなければということで、復習にかなり時間をかけてしまって、翌日、翌々日まで復習に取り掛かっているということもありましたが、ちょっと良くないなと思って、そこはなるべく当日のうちに終わるようにしようということで復習にも取り組んでいました。肢によって、「これは分かったな」というところに関しては、そんなに復習もしなかったですし、「テキストに書いてなかったぞ」というものについは解説を読む程度にするなど、メリハリを付けて復習をすることを心掛けました。

清水 成績表については、例えば順位を落としたとか、正答率の高い問題を間違えたとか、そういうところは意識していましたか?

そうですね、順位は気にしました。順位は見る度に一喜一憂しました。一喜一憂しないということを言われるのですが、こればかりは無理でした。ただ、やはり正答率が高い問題で間違えてしまったというのは、「ここはしっかり復習しないといけない」ということで復習項目にも入れていました。正答率が低い問題で間違えてしまったのは、仕方がないかなと思いました。ただ、この知識をこう考えていれば気付けたはずだというものについては、何とか次はできるようにするということで復習に取り組んでいました。

午後の問題の解き方について

清水 では、次に午後の部の問題の解き方について伺います。午後の部は択一式問題35問と、記述式問題2問を解かなければならないので、必然的に時間との勝負という要素があります。午後の部の択一式問題をどのように解いたのか、時間配分はどのように考えていたのか、そして、1回目の受験と2回目となる今年の本試験で、問題を解くときに変えたことがあればお聞かせください。

まず、択一の解き方に関してですけれども、理想的には全ての肢を読んで、その中で判断できれば一番良かったですし、そこを目標にはしていたのですが、結果的には全て読むのは諦めました。時間的に無理でしたし、記述式の時間を確保するということも必要でしたので。本試験の解き方として、私は肢を2つ読んで、その中で確実だと自分が思えるものがあれば、その判断が合っている前提で肢をきりました。

清水 組合せで答えが出せれば全ての肢は読まないということですね。

はい、そうです。なので、2つの肢で判断できる場合もありますし、3つ4つの肢まで読んで判断ができる場合もあるのですけれども、時間との兼ね合いを考えました。それまでの模試や答練で最低3肢読んで判断するとか、4肢読んで判断するとか、いろいろ試した結果、2肢でいけるはずだ、ある程度の正答率は保てるはずだと思って、本試験に臨みました。ただ、それは結果的には、択一だけに関して言えばあまりうまくいかなくて、やはり平常心のつもりが、ちょっとフワフワしていた部分があったのか、ここで間違ってしまったかという問題が何問かありまして、良かったのか悪かったのかは分かりません。

清水 他の選択肢を見れば、もう少し正解できたかなという問題が何問かあったということですね。

はい、そうです。

清水 選択肢は、最初から順番に見ていくのですか?あるいは、問題文の短い選択肢から見ていくといった形ですか?

基本的には上の肢から見るのですけれども、長い肢は読まなかったですね。

清水 短い肢から読むということですね。

はい、そうです。短い肢で確実に判断ができれば、それが一番早いので、引っ掛からなければ、ということで解いていました。

清水 合格体験記にもありました、午後の部のタイムスケジュールについてお話していただけますか。

はい、分かりました。午後の部のスケジュールですが、私はまず最初の5分を使って記述式の問題のページを全部のぞいてみて、それで不動産登記を先に解くか、商業登記を先に解くかというところをまず判断するのが1つです。あとは普段の設問と明らかに違うような出題のされ方がされていないか、今まで間違えたことのある論点が出ていないか、という所を、最初の自分の心に余裕がある段階で見ておきたいと思ったからです。そこで商業登記が比較的解きやすそうだなと思い、商業登記を先に解くと決めました。また、存続期間の満了に関する定めが登記記録上あるということが分ったので、ある程度論点も想定でき、心に余裕を持つことができました。その後択一式に入っていくのですけれども、13時05分から14時までの55分間を使って択一式を解いていくという方式でした。これはこの時間内に何問解くというふうに決めていたわけではなくて、55分でできるだけ判断するということで、記述式に入る時間は14時からと決めていました。14時から商業登記に入りまして、まず25分間で問題検討、その後答案構成を5分、答案の記載を25分間、ですので商業登記が14時55分までの55分間で解きました。
その後不動産登記に入って、これも登記の問題を読むのに25分間、答案構成に5分間、あとは不動産登記の答案を記載するのに15分間、なので15時40分までに記述式については、一通り終えました。その後択一式で解き切れなかった問題を解いて、択一式のマークはまとめて5分間で全ての肢のマークをしていました。択一式のマークは、実際にタイムを計って事前に計算していて、5分あれば大丈夫だということが分かっていたので、択一式のマークは後回しにしました。あとはマークが終わって最後の最後は記述式の誤字脱字をチェックするという方法でした。記述式や択一式を交互にやっていくような感じで、珍しいやり方だったかなと思います。

清水 答練や模試を繰り返し受けていく中で、その方法が一番自分にとってベストだということで、最終的にそうなったということですよね。

はい、そうです。最初は記述式の全体像を把握するという作業をやらずに、いきなり択一式から解いていくという方式だったのですけれども、どうしても記述式の問題で見落としなどが多くて…。また、不動産登記と商業登記のどちらを先に解くかというのも検討した方が良いということが分かって、こういう方式を取りました。それに当たっては、クレアールの会場公開模試に参加した際に、戸谷講師に記述式問題の解き方について相談をしたところ、少なくとも昨年で見ると商業登記を先に解いたほうが正解だったし、やはりそこは最初に見た方が良いというアドバイスをいただいたので、こういう戦略を取ることができたのだと思います。

清水 もしかしたら、最初の5分の全体像を把握する時間で、例えば商業登記が解きにくそうだなと思ったら、不動産登記から始めたかもしれないということですね。

はい、そうです。比較的商業登記の方が得意ではあったので、よほどこれは全然書けないという論点が出ない限りは、商業登記から先に解くということは決めていましたけれども。今回もそんなにひねった問題ではなかったので、予定どおり商業登記から解こうということで決めることができました。

清水 解きやすい方からやっていこうということですね。

そうです。

清水 午後の部の問題の解き方は、1回目の受験と2回目の本試験では、やはり変わりましたか?

変わりましたね。1回目の受験の時は、本当に択一式を最初から解いて記述式の解答欄も全部埋めるように頑張ろうとした結果全然駄目だったという、戦略も何もなかったので全然違いました。やはり本試験形式の練習を何度もやる中で、自分に合った解き方がだんだん分かってきて、2回目の試験を迎えられたということです。

清水 1回目の受験を踏まえて、いろいろ工夫をして2回目の形になったということですね。

はい、そうですね。

モチベーションの維持

清水 では、続いてモチベーションの維持についてお聞きします。司法書士試験を含めて難関資格の学習を継続していくことは、心身ともにきつい点が多々あります。学習を進めていく中で、もし挫折しそうになったことがあればどう乗り越えたか、あるいはこのような工夫や気分転換を図ったということがあればお聞かせください。

確かに無職で収入がなくなっての2年間の勉強だったので、精神的にもきつかった面はあります。そういう時にどうしたかということですが、私は休憩時間に好きな楽曲を聞いたり、「このまま勉強をし続ければ受かる」と思い続ける、言い聞かせる、洗脳するということでした。ただ、それだけだと「本当に?」と自分の中で問い掛けをしてしまうので、私は本試験直前の6カ月間は禁酒して勉強をしました。「禁酒をして勉強をし続けているのだから受かるに違いない」という、変な発想で自分に言い聞かせて頑張ったということですね。

学習の進めるうえで心掛けていたことについて

清水 では、学習をする上で工夫したこと、心掛けていたことなどをお聞かせください。

先ほど話しましたとおり、エクセルで表を作ったり、スケジュールなどを管理したり、あとは自分の周りの人をイメージで置き換えてイメージを膨らませて覚えていったり、工夫するように心掛けて、自分がどうすれば覚えられるかということを考えながら勉強していました。

清水 あとは情報を表に集約したり、あるいは定期的に復習を行うことで知識の定着を図っていったということですね。

これから学習する人、現在学習を始めている方へのアドバイス

清水 では、これから学習する人、現在学習を始めている方へのアドバイスをお願いします。昆さんは1回目の受験では残念ながら一歩及ばず、2回目で見事に合格を勝ち取りました。難関といわれる司法書士試験では、2回目の受験での合格も短期合格といえます。また、1回目にカリキュラムは消化したけれども、2回目に伸び悩んでしまう方も、それなりにいらっしゃいます。そこで2回目の試験で合格を勝ち取ることができた秘訣は、ズバリ何でしょうか?

そうですね、今までの話で出てきたとおり、1回目の試験のことを振り返って、どうやってパワーアップするかを具体的に考えて実行したというところが、2回目で伸びた要因なのかなと思います。

清水 そうですね。1回目の受験で失敗したところを、しっかりと自己分析なされて、そしてまずかったところは変えていこうということを、しっかりと自分なりに考えたということが、一番良かったということですかね。

そうですね、そう思います。

これからの抱負

清水 分かりました。では、これからの抱負をお聞かせください。

これからどういう司法書士になるのかということは、なかなかまだそこは分りません。先日、合格証の交付を受けて、合格したという実感を得て、間もなく各団体での研修が始まるところですので、そこでしっかり実務に関する知識を身に付けていきたいと思っています。まずは研修を頑張っていきますという決意です。

来年度の司法書士試験合格を目指す方へのメッセージ

清水 では、最後に来年度の司法書士試験合格を目指す方へのメッセージ、伝えたいことをお聞かせください。

私は主に司法書士試験をこれから目指そうかどうか悩んでモヤモヤしている方に伝えたいと思うのですけれども、先ほどモチベーションの維持のところで好きな楽曲を聞いていたと申し上げました。私はアイドルグループのJuice=Juice(ジュースジュース)というグループの楽曲が好きで、その曲に支えられてやってこられたというのもあります。その楽曲の一節として「悩んだときは新しい道を行くしかない。やらぬ後悔よりやっちまった後悔をしよう」というメッセージがあって、そこに支えられて私は今回の受験をやり通すことができたので、これから試験をやろうかどうか、勉強をしようかどうか迷っている方に、「やってちった後悔をしよう」ということを伝えたいです。

清水 では、以上で合格者インタビューを終わります。本日はどうもありがとうございました。

はい、ありがとうございました。

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