司法書士試験を合格した人の中で、簡裁等関係業務認定考査試験も合格することで得られる認定司法書士の資格。一般の司法書士との違いは、簡易裁判所において法定代理人として法廷に立つことができます。その認定司法書士になるまでの受験の流れ、合格のための参考書や勉強法まで、解説します。
司法書士試験後の「認定考査」とは ー難易度と合格率ー
司法書士の認定考査の難易度

簡易訴訟代理等関係業務を扱える認定司法書士になるための選考考査の難易度ですが、受験者の体験談としては、「司法書士試験に合格した後、簡裁訴訟代理関係業務を行う能力を習得するための特別研修をただ受けただけでは合格は難しく、自分なりの学習が必須」という意見でほぼ一致しています。
具体的な勉強の方法としては、以下のようなものが挙げられます。
- 認定考査の参考書をあたる
- 過去問に挑戦する
- 本年度は受験されない方でも解答速報をチェックして、その難易度や傾向から、来年度以降傾向を予測しておく
司法書士の認定考査の合格率は年々下がっている?
認定司法書士になるための認定考査の難易度は、過去5年の合格率(認定率)からいうと、平成30年は43.1%と下がりましたが、平成31年は79.7%、令和2年は79.0%、令和3年に70.6%と7割となり、令和4年に65.3%と6割台に下がったあと令和5年度は77.2%と再び7割となっています。
特に平成30年度は過去もっとも低くなっており、認定考査の難易度は決して低くないことが伺えます。
司法書士の「認定考査」合格の重要性とは

司法書士が認定考査合格でできること
認定司法書士とは、司法書士試験に合格後、令和4年からは5月から7月にかけて、100時間研修と呼ばれる特別研修を経て、9月の簡裁等関係業務認定考査に合格し、法務大臣の認可を受けた人です。通常の司法書士は、裁判所に提出する書類の作成代行が業務で、職務として法廷に立つことはできません。しかし認定司法書士であれば、簡易裁判所における訴額140万円以内の民事事件であれば、簡裁訴訟代理人の資格が得られます。
具体的な業務は、以下のような内容が例として挙げられます。
- 簡易裁判所における民事訴訟手続
- 訴訟提起前、裁判外の和解手続や仲裁手続
- 支払督促
- 証拠保全
- 民事保全
- 民事調停
認定考査合格後の流れ
認定考査に合格すると、合格者の氏名と合格を認める文書、そして簡裁代理関係業務の認定番号が記された合格証書が授与されます。取得後の代理人業務に関しては、最初は戸惑いなどもあると思いますし、慣れない業務なため、先輩司法書士の先生方や特別研修時に学んだ仲間などに分からないことはいろいろ質問するなどして、業務の幅に広がりを持つ事が必要です。また、この経験を通じて、新たな人脈作りやはもちろんのこと、代理人業務において次に活かせるように経験を重ねていくといいでしょう。
司法書士の認定考査の内容と対策

認定考査の出題内容
簡裁等関係業務認定考査試験(認定考査)の内容で問われるのは、事実認定の手法に関する能力、立証活動に関する能力、弁論及び尋問技術に関する能力、訴訟代理人としての倫理に関する能力、その他簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を習得したかどうかについて、記述式により行われます。試験内容は合計3問で、事例形式、つまり2ページ程度にわたる原告と被告の主張を読み、各設問について30字から350字程度の論述で答える形になります。1問目は本案訴訟手続、2問目は簡裁代理権限、3問目は司法書士倫理について問われます。そのうち1問目は、7個程度の小問形式に分かれ、全体でおよそ2000文字程度を記述することになります。
認定考査の過去問(入手方法)
認定考査の過去問については、過去問と解答をまとめた書籍が何種類かあり、一般書店やインターネット書店で入手できます。
認定考査の参考書はある?
認定考査の参考書については、過去問の論点を解説するものが数種類あります。要件事実の考え方と実務、倫理の問題については、多くのマニュアルや問題集、類例集や、認定考査に絞った過去問分析などの参考書があります。参考書選びには、多くの認定考査合格者がブログなどで実体験を紹介しているので、確認しておくとよいでしょう。また、認定考査の対策講座を実施している予備校もありますので、効率よく対策を講じる場合には問い合わせをしてみると良いでしょう。
まとめ

令和4年4月1日時点で、司法書士会に登録されている司法書士の人数は22907人です。そのうち、簡裁等関係業務認定考査試験に合格した認定司法書士は、全体の78%に当たる17861人になります。司法書士として簡裁訴訟代理業務を行うつもりがなければ、簡裁訴訟代理人の資格は不要に思えます。
ただ、現在では民事に関する紛争の相談に応じるためにも認定司法書士の資格が必要とされています。そのため今後、司法書士にとって、認定司法書士の資格は実質的に必須になるといえるでしょう。
一方、認定考査は合格率が乱高下しており、ただ特別研修を受けただけでは合格は難しい難易度になっています。そのため研修に加えて自分なりの学習が重要になります。現在では過去問と解答からその論点を解説する参考書が豊富にありますので、司法書士試験の受験時から、その年の認定考査の解答速報なども参考にして、傾向を掴んでおくといいでしょう。また、実際の合格者のブログでの経験談も勉強法の参考になります。さまざまな情報を集めて、認定司法書士になるための的確な勉強法を選んでください。