変化する司法書士の現状。AIの登場と生き残り戦略とは

人々の身近で発生する様々な法律問題を解決する司法書士の仕事ですが、AIの登場においてその職が脅かされるということはあり得るのでしょうか。変化する環境の中で生き残って行くための戦略を解説していきます。

司法書士の現状

国家資格の中でも高度な専門知識を必要とするため取得するのが難しい資格であると司法書士は言われています。合格率は3~4%程度であり、合格するまでに必要な学習時間も2000~3000時間は必要です。この数年合格者数は700名を割り込み、2019年度試験では601人の合格者となっています。しかし、日本全国における司法書士の人数はここ10年で増加傾向にあります。これは、司法書士資格取得後にすぐに研修を受けなくとも、自身のタイミングで研修の受講および研修終了後の司法書士会への登録時期に制約がない点、そして何より司法書士に登録をしたあとに廃業するなど司法書士を辞めてしまう方が少ないため、司法書士の合格者数は少ないのですが、登録人数については増加傾向といえます。一方で、司法書士の主な仕事である不動産の登記や会社の登記件数自体は減少傾向にあり、登記業務で見た場合には競争率が高くなってきている現状は否めません。成年後見分野や空き家対策などは逆に増加傾向にあり、このような案件にもしっかり対応をしていくために、時代の変化に柔軟に対応していくことも必要です。また、司法書士は、簡易的な民事事件であれば法律で定められた範囲内での業務が可能とされていますが、受け持って良いとされる業務であっても、時代の変化に伴って少しずつ複雑化しているという現状もあるように思います。依頼者の要望をしっかりキャッチし、適切な解決策に導いていくことでより信頼される司法書士として活躍することができるとも言えるため、サービス業としての一面を持ち合わせているのも最近の司法書士の現状であると言えます。

AIによって変わる司法書士の仕事

ここ最近様々な分野から注目され、普及が広がっているAI(人工知能)ですが、今後このAIが私たちの仕事を奪う可能性があるという話を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。オックスフォード大学の研究によると、現存する仕事の約90パーセントはAIによって行うことができると言われているそうです。AIは、あらかじめプログラムされた事柄を自動的に処理してくれるだけでなく、学習機能があることで、一度インプットされた情報を記憶し、更に性能を高めていくという優れた面も持ち合わせています。司法書士は法律に関わる膨大な知識を要する職種ですが、これらの知識はAIにプログラムすることができ、いつでも呼び出すことが可能になるため、これまで人間が膨大な情報の中から調べ物などに費やしていた時間を大幅にカットすることができるようになる可能性があります。

司法書士の仕事に求められる変化

AIの登場によって、これからの働き方に変化が出てくる可能性が考えらますが、今後求められる変化は今までよりも、より一層コミュニケーション能力の向上が不可欠ではないでしょうか。もちろんAIも依頼人の要望に合わせた適切な答えを提示できるようにプログラミングしていくことは不可能ではありませんが、複雑な案件になればなるほどその人それぞれの状況や要望に対して答えが変わってくる場合もあります。AIに学習能力があるとはいえ、対面で話すことができる人間だからこそ、その依頼者に寄り添ったヒアリングとそれに対する提案ができます。これは、AIでは賄いきれない大切な要素であると言えます。また、AIに仕事を奪われてしまうと嘆くのではなく、このAIが長けている部分をうまく活用するための思考力やパソコン能力などを高めていくことによって、より自身の仕事を効率化することができるようにすることが大切です。これからはAIとの共存がキーワードになってくるのではないでしょうか。

今後司法書士として生き残るために必要なコト

司法書士として生き残るために必要なのは、顧客一人一人に合った対応力の向上などAIには行えない強みを高めていき、AIが得意な部分は任せて行くという分業スタイルだと言えそうです。司法書士の仕事は単に書類作成といった業務だけでなく、人と人との関わりであり、その時々やその人の状況によってあらゆる解決策が考えられるため、AIが最初から最後までを完結するまでには至らないのが現状です。このような現状を踏まえた上でうまく業務の棲み分けができると、それだけ業務も円滑に進み、手厚いサービスを行うことが可能になるでしょう。また、司法書士には将来独立開業を目指している人も多いと思いますが、独立をした場合に大切になってくるのは当然ながら顧客の獲得です。弁護士、税理士など、業務に関わりがある職種同士の繋がりも少なくないですし、既存の顧客を通して新規客を紹介してもらうというパターンもあり、このような地道な努力が必要になってきます。こういったネットワークづくりも一部AIによって分析などは可能かもしれませんが、実際に顔を合わせて信頼関係を結んでいくとことはAIではなし得ないものでしょう。

まとめ

今、民間における法律に関わる案件は複雑化しており、全く同じ案件というのはほぼないと言えます。そのような時に、より依頼者の立場に寄り添ったコンサルティングができる司法書士はやはり重宝されますし、需要もやりがいもアップすることが予想されます。また、親切、丁寧なサービスだけでなく、正確性がありスピードもあることによって信頼感も生まれます。このような正確性やスピードは人間ももちろん取り組めることではありますが、AIの能力をうまく活用することで、それぞれを組み合わせた精度の高い仕事を実現することができます。逆を言うと、これからの時代は従来の方法に加えて新しい技術を柔軟に取り入れながら変化していくことが求められるのではないでしょうか。