第125条【法定追認】
追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。
一 全部又は一部の履行
二 履行の請求
三 更改
四 担保の供与
五 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡
六 強制執行
【超訳】
追認をすることができる時以降、取り消すことができる行為について、本条所定の事情が1つでもあれば、追認権者が異議を述べた場合でない限り、追認を行ったことになる。
【解釈・判例】
1.法定追認事由
(1) 「全部又は一部の履行」は、追認できる者が債務者として相手方に債務を履行した場合だけでなく、債権者として相手方が行った債務の弁済を受領した場合を含む(大判昭8.4.28)。
(2) 「履行の請求」は、追認できる者が債権者として相手方に履行を請求した場合に限られる。債務者として履行の請求を受ける場合を含まない(大判明39.5.17)。
(3) 「更改」とは、追認できる者が債権者又は債務者として更改契約を締結した場合である。
(4) 「担保の供与」とは、追認できる者が債務者として相手方に担保を供与し、または債権者として相手方から担保の供与を受けた場合である。
(5) 「取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡」は、取消権者が債権者として取得した権利を譲渡する場合に限る。
(6) 「強制執行」は、取消権者が債権者として執行した場合に限り、債務者として執行を受けた場合を含まない(大判昭4.11.22)。
2.法定代理人・保佐人・補助人の同意を得て、未成年者・被保佐人・被補助人が125条の行為をした場合、法定追認が成立する。制限行為能力者がまだ制限行為能力者である場合において、法定代理人・保佐人・補助人が125条の行為をしたときも同様である。
3.取り消し得る法律行為によって負担した債務について強制執行を受けた場合、執行を免れるために追認ではないことを表示して弁済すれば、法定追認とはならない(本条ただし書)。
4.本条は無権代理行為の追認には類推適用されない(最判昭54.12.14)。
【問題】
取り消すことができる行為について追認をすることができる取消権者が当該行為から生じた債務の債務者として履行をした場合には、法定追認の効力が生ずるが、当該行為について当該取消権者が債権者として履行を受けた場合には、法定追認の効力は生じない
【平25-5-オ:×】
【問題】
Aは、その所有する甲土地のBへの売却がBの詐欺によることに気付いた後、甲土地の売買代金債権をBの詐欺につき善意無過失のCに譲渡した。この場合において、Aは、Bの詐欺を理由に、Bとの間の甲土地の売買契約を取り消すことができる
【平30-4-イ:×】