行政書士の年収は日本の平均年収を上回ります。本記事では、行政書士の年収に焦点を当てて、実態や初任給、年齢別・就職先別・地域別の年収などについて解説します。さらに、行政書士として年収を上げる方法や、行政書士の将来性についてもご紹介するので、行政書士を目指している方は参考にしてみてください。
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行政書士の年収の平均値は約580万円
行政書士の年収の平均値 579.8万円(2022年度)
(引用:厚生労働省 「職業情報提供サイトjobtag」)
行政書士の年収の平均値は580万円程度で、日本人の平均年収である440万円を上回る結果となっています。ただし、これはあくまで平均値であり、行政書士の年収の中央値(データを順番に並べた際に中央に位置する値)は、400~450万円程度となります。これが意味するところは、一部の高所得者が平均値を引き上げており、580万円前後の年収を上げている行政書士は、実際はそれほど多くないということです。
実際、「日本行政書士会連合会」が4,338人の行政書士を対象にした調査では、年間売上高500万円未満と回答した人が3,415人と最も多く、次いで500万円以上1,000万円未満と回答した人が492人と2番目に多い結果となりました。なお、男女差により年収の違いはほとんどありません。
他の事務職の平均年収
士業の種類 | 平均年収(万円) |
---|---|
一般事務 | 490 |
経理事務 | 450 |
営業事務員 | 471.4 |
国家公務員(行政事務) | 437.4 |
地方公務員(行政事務) | 437.4 |
学校事務 | 437.4 |
税務事務官 | 450 |
行政書士の平均年収は約580万円であるのに対し、他の事務職の平均年収は概ね500万円未満となっています。
もちろん単純な比較はできませんが、行政書士になるためには厳しい試験を突破する必要があり、専門家としての肩書も付くため、行政書士は他の一般的な事務職よりは年収が高い傾向にあるようです。
行政書士の初任給
行政書士の初任給 21万円程度
(引用:求人ボックス給料ナビ)
行政書士の初任給は21万円程度で、一般的な大卒社員の初任給とほぼ同じ水準となっています。行政書士は難関資格ではあるものの、資格を取得しただけで年収が上がることは基本的に少なく、実務経験を積みつつ、独立開業したり集客したりすることで徐々に収入を上げていくのが一般的です。
行政書士の年齢別の年収
年齢(歳) | ~19 | 20~24 | 25~29 | 30~34 | 35~39 | 40~44 | 45~49 | 50~54 | 55~59 | 60~64 | 65~69 | 70~ |
年収(万円) | 231 | 360 | 407 | 504 | 664 | 692 | 675 | 628 | 657 | 568 | 419 | 290 |
行政書士の年齢別の年収は40代がピークとなっており、30代後半あたりから同年代の平均年収を超える傾向が見られます。もちろん個人差はありますが、20代や30代前半の時期は行政書士としての経験がまだ浅く、独立開業をしても大きく稼ぐことは難しいものの、30代後半あたりから徐々に事業が軌道に乗り始め、40代前後で年収のピークに達するケースが多いようです。
行政書士の就職先別の年収
冒頭でも述べた通り、行政書士の平均年収は約580万円ですが、行政書士にはさまざまな働き方があり、実は働き方によって大きな年収差が生じています。そこで本章では、行政書士の就職先別の年収について解説します。
独立開業
独立開業をしている行政書士の中には、年収1,000万円以上の人が多く存在する一方、年収200万円未満の人も少なくなく、個人差が大きいのが特徴です。独立開業の場合は、基本的に開業1年目から大きく稼ぐことは難しく、実務経験を積んで顧客からの信頼を積み重ねることで、徐々に年収が上がっていきます。そのため、開業直後は一時的に年収が下がることが一般的です。
士業事務所(雇われ)
士業事務所に雇われる行政書士は「使用人行政書士」と呼ばれ、個人が経営する個人事務所や、複数の行政書士が共同で経営する行政書士法人の他、複数の士業が集まる総合事務所などで勤務します。使用人行政書士の平均年収は300万円程度で、決して高いとはいえませんが、将来的な独立開業のための経験の場として働いている人が多く、1つの事務所で何十年も働き続ける人は少ないようです。
一般企業(雇われ)
一般企業に勤務する行政書士の平均年収は、400万円程度です。企業によって差はあるものの、士業事務所と比べて給与体系や福利厚生が整備されていることも多く、待遇は良いといえます。なお、行政書士の就職先企業としては、許認可(特定の事業を行うために行政機関から取得する許可)が頻繁に必要となる、建設業や不動産業が多いようです。
行政書士の地域別の年収
続いて、行政書士の地域別の年収について解説します。
都道府県 | 平均年収 |
---|---|
北海道 | 567.4万円 |
青森県 | 368.7万円 |
岩手県 | 417.6万円 |
宮城県 | 622.0万円 |
秋田県 | 447.7万円 |
山形県 | 476.0万円 |
福島県 | 538.0万円 |
茨城県 | 509.4万円 |
栃木県 | 535.6万円 |
群馬県 | 306.8万円 |
埼玉県 | 424.7万円 |
千葉県 | 584.8万円 |
東京都 | 650.7万円 |
神奈川県 | 564.9万円 |
新潟県 | 449.4万円 |
富山県 | 421.8万円 |
石川県 | 474.7万円 |
福井県 | 518.0万円 |
山梨県 | 468.2万円 |
長野県 | 398.8万円 |
岐阜市 | 425.5万円 |
静岡県 | 542.3万円 |
愛知県 | 467.5万円 |
三重県 | 368.1万円 |
滋賀県 | 579.1万円 |
京都府 | 478.6万円 |
大阪府 | 603.1万円 |
兵庫県 | 483.3万円 |
奈良県 | 537.1万円 |
和歌山県 | 726.3万円 |
鳥取県 | 499.6万円 |
島根県 | 575.2万円 |
岡山県 | 485.6万円 |
広島県 | 458.7万円 |
山口県 | 380.7万円 |
徳島県 | 441.7万円 |
香川県 | 537.7万円 |
愛媛県 | 480.6万円 |
高知県 | 568.6万円 |
福岡県 | 494.9万円 |
佐賀県 | 372.3万円 |
長崎県 | 410.5万円 |
熊本県 | 441.9万円 |
大分県 | 480.6万円 |
宮崎県 | 445.5万円 |
鹿児島県 | 476.8万円 |
沖縄県 | 449.2万円 |
行政書士の年収は地域によって大きく異なることはないものの、都市部の方が地方に比べて年収が高い傾向があるようです。これは、行政書士の業務は許認可や設立手続きといった企業からの依頼案件が多く、企業が集まりやすい都市部の方が、地方に比べて仕事を獲得しやすいことが影響していると考えられます。
行政書士が年収を上げる方法
行政書士として年収を上げたいのであれば、それなりの戦略を持って行動する必要があります。そこで本章では、行政書士が年収を上げる方法をご紹介します。
独立開業する
行政書士が年収を上げる方法としては、やはり独立開業するのが最も効果的といえます。というのも、会社員や事務職員では、成果や頑張りがすぐに年収に反映されにくいのに対し、独立開業をすれば、成果や頑張りがそのまま年収に直結するからです。
ただし、その反面、思うように仕事を獲得できなければ、収入が大きく下がる可能性もあります。そのため、積極的に営業したり、専門性を高めて競合との差別化を図ったりすることが求められます。
ダブルライセンスを取得する
税理士・土地家屋調査士・宅建士・社会保険労務士・司法書士・公認会計士・中小企業診断士・ファイナンシャルプランナー
2つ目の方法は、ダブルライセンス(複数の資格)を取得することです。例えば、税理士とのダブルライセンスであれば、会社設立手続きの際に税務や会計に関するアドバイスをすることもでき、業務の幅が広がります。
単価の高い仕事を選ぶ
業務内容 | 単価の目安 |
---|---|
建設業許可申請 | 10~20万円程度 |
建設業変更届 | 5~10万円程度 |
宅地建物取引業者免許申請 | 10~20万円程度 |
農地法許可申請 | 5~10万円程度 |
自動車登録申請 | 5千円~3万円程度 |
風俗営業許可申請 | 30~80万円程度 |
宗教法人設立 | 50~60万円程度 |
一般廃棄物にかかわる許可申請 | 5~20万円程度 |
産業廃棄物にかかわる許可申請 | 5~20万円程度 |
在留資格認定証明書交付申請 | 5~20万円程度 |
在留期間変更許可申請 | 5~10万円程度 |
会社の合併・分割手続き | 10~20万円程度 |
議事録作成 | 2~3万円程度 |
遺産分割協議書の作成 | 3~5万円程度 |
相続人及び相続財産の調査 | 3~5万円程度 |
3つ目の方法は、単価の高い仕事を優先的に選ぶことです。単価の高い仕事は、手続きが複雑なものや特別な知識を必要とするものが多く、競合相手も比較的少ないため、その分野のスペシャリストになれば、大きな差別化を図れます。
最初の頃は大変かもしれませんが、経験を積み重ねていくうちにノウハウも蓄積されていき、効率的に稼ぐことも可能となるでしょう。
営業スキルやマーケティングスキルを磨く
4つ目の方法は、顧客に営業するスキルやマーケティングスキルを身につけることです。行政書士に限らず、独立開業するのであれば営業スキルやマーケティングスキルは必須です。
営業スキルやマーケティングスキルを磨くためには、セミナーなどに積極的に参加し、自ら学ぶ姿勢が重要です。積極的に行動することで新たな人脈が生まれ、思わぬところから仕事の依頼を受けるケースも増えてくるでしょう。
行政書士の将来性
行政書士の業務の中には単純な書類作成業務が多く、そういった業務は将来的にAIに代替される可能性が高いでしょう。とはいえ、行政書士の業務は現在も拡大しており、AIでは対応が難しい業務も数多く存在します。とくに、相談業務やコンサルティング業務などは、AIに代替される可能性は極めて低く、今後もその需要は高まっていくことが予測されます。
このように、時代のニーズに合わせて自らの専門性や強みを磨いていけば、行政書士は十分に将来性がある職業といえるでしょう。
行政書士の年収・収入にまつわるQ&A
本章では参考として、行政書士の年収・収入にまつわるQ&Aをご紹介します。
(引用:厚生労働省 「職業情報提供サイトjobtag」)
行政書士は頑張りしだいで高年収を狙える資格
ここまで行政書士の年収の実態について解説してきましたが、平均年収はあくまで平均であり、1つの目安にすぎません。行政書士の需要は今後も高まっていくことが予測されるため、本人の頑張りや工夫しだいでは、高年収を目指すことも十分に可能でしょう。
行政書士になるためには、まずは試験を突破する必要があります。行政書士試験は合格率10%前後の難関試験であるため、短期合格を目指すのであれば、スクールや通信講座の利用も検討した方がいいでしょう。
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監修:行政書士・社労士 田中 伴典さん
2016年に社会保険労務士試験に合格後、社会保険労務士法人のスタッフとしてお客様を外部からサポート。その後、民間企業の人事として内部からサポートしつつ、2021年に行政書士試験に一発合格を果たす。現在は、現役行政書士・社会保険労務士として自身の事務所を運営している。
田中社会保険労務士・行政書士事務所のサイトはこちら