第834条の2【親権停止の審判】
① 父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権停止の審判をすることができる。
② 家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、2年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める。
目次
【解釈・判例】
1.親権停止の審判は、不行跡はあるものの、親権を喪失させるまでには至らない親権者に対し、一定期間親権を停止して様子を見るという対応を可能とするものである。
2.親権喪失の審判の請求がなされたところ、親権喪失の原因までは認められないが、親権停止の原因は認められる場合には、家庭裁判所は、親権停止の限度で審判をすることができると解される。
【比較】
親権喪失の審判と親権停止の審判の比較
親権喪失の審判(民834条) | 親権停止の審判(民834条の2) | |
制度の対象となる事案 | 父母による親権の行使が不適当であり、子の利益を害する程度が著しく、改善が見込まれないか、又は改善に長期間を要する事案 | 親権喪失の要件を満たすまでには至らない比較的程度の軽い事案であって、一定の期間内に改善が見込まれる事案 |
審判の要件 | ① 父母による虐待・悪意の遺棄があるとき② 父母による親権の行使が著しく困難・不適当であることにより、子の利益を著しく害するとき
③ 2年以内に上記①②の原因が消滅する見込みがないとき |
父母による親権の行使が困難・不適当であることにより、子の利益を害するとき |
請求権者 | 子本人、子の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、検察官 | |
審判の効果 | 父母による親権の行使不可 | |
親権の回復 | 審判の取消しが必要 (民836条) |
審判で定めた期間の経過により当然に回復(民834条の2第2項参照) |
15歳未満の子を養子とする縁組に係る同意権の有無 | 親権を喪失した父母に同意権なし | 親権を停止された父母も同意権あり(民797条2項後段) |
【問題】
家庭裁判所が親権停止の審判をするには、父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときでなければならない
【平26-21-オ:×】