第478条【受領権者としての外観を有する者に対する弁済】
受領権者(債権者及び法令の規定又は当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者をいう。以下同じ。)以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。
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【解釈・判例】
1.弁済の受領権者以外の者に対してされた弁済は、原則として無効である。しかし、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者に対して弁済がされた場合、弁済者が善意無過失であれば、当該弁済は有効となる。
2.「取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するもの」とは、自己のためにする意思を持って債権を行使する者で、債権者ではないのに取引通念上債権者らしい外観を有する者をいう(大判昭2.6.22)。
→ 具体的には、債権者の代理人と称する者、債権者の相続権を有しない表見相続人、受取証書の持参人、預金証書と印鑑の持参人等が該当する。
3.二重譲渡された債権の債務者が、民法467条2項の対抗要件を後れて具備した劣後譲受人に対してした弁済については、民法478条の規定の適用があるが、弁済につき過失がなかったというためには、優先譲受人の譲受行為又は対抗要件に瑕疵があるため、その効力を生じないと誤信してもやむを得ない事情がある等、劣後譲受人を真の権利者と信じるにつき相当な理由が必要である(最判昭61.4.11)。