第299条【留置権者による費用の償還請求】
① 留置権者は、留置物について必要費を支出したときは、所有者にその償還をさせることができる。
② 留置権者は、留置物について有益費を支出したときは、これによる価格の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、裁判所は、所有者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
目次
【超訳】
① 留置権者が、留置物に対して必要費(保存のために欠くことのできない費用)を支出したときは、果実を収取し、弁済に充てていても、その費用を償還請求することができる。
② 留置権者が、留置物に対して有益費(改良のための費用)を支出したときは、増加額が現存する場合に限って、所有者が選択した、支出した費用又は増加額のいずれかを償還請求することができる。価格の増加が現存しないときは、費用償還請求することはできない。また、所有者の請求により、裁判所が、留置権者の善意・悪意の区別なく、償還に相当の期限を許与することがある。この場合、留置権の行使は認められない。
【解釈・判例】
留置権者が必要費の償還請求権を被担保債権として建物を留置中、留置物について更に必要費を支出した場合は、既に生じている費用償還請求権と共に、当該建物について留置権を行使することができる(最判昭33.1.17)。
【比較】
占有者の費用償還請求権(196条)と留置権者の費用償還請求権(299条)
占有者 | 留置権者 | |
必要費 | 果実を取得した場合、通常の必要費は償還請求できない(196条1項) | 果実を取得した場合であっても、支出した全額を償還請求できる(299条1項) |
有益費 | 悪意の占有者に対しては、期限を許与することができる(196条2項) | 留置権者の善意・悪意の区別なく、期限を許与することができる(299条2項) |
【問題】
留置権者が留置物について必要費を支出した場合において、これによる価格の増加が現存しないときは、所有者にその償還をさせることはできない
【平30-13-オ:×】