民法 第258条【裁判による共有物の分割】

第258条【裁判による共有物の分割】

① 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。

② 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
 一 共有物の現物を分割する方法
 二 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法

③ 前項に規定する方法により、共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させる恐れがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。

④ 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。

目次

【解釈・判例】

1.協議による分割
 (1) 共有物の分割は、まず。当事者間の協議によって行う。共有物分割の協議は、共有者全員ですることを要する(大判大13.11.20)。
 (2) 協議による分割は、現物分割、価格賠償による分割、代金分割の方法による。

2.裁判所による分割
 (1) 共有物の分割について共有者間の協議が調わず、又は協議をすることができない場合に、共有物の分割を裁判所に請求できる(本条1項)。
 (2) 「共有者間の協議が調わないとき」とは、共有者の一部に共有物分割の協議に応ずる意思がないために共有者全員による協議ができない場合を含み、現実に協議をした上で不調に終わった場合に限られない(最判昭46.6.18)。
 (3) 共有者の一部が不特定・所在不明であることから、共有物の分割について共有者間で協議をすることができない場合も、裁判による分割を求めることができる。

3.裁判所による分割の方法
 (1) 裁判による分割の方法として、共有者に債務を負担させ、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法(賠償分割)が可能である(本条2項2号)。
 (2) 現物分割や賠償分割のいずれもできない場合、又は分割によって共有物の価格を著しく減少させるおそれがある場合、競売による分割を行うことができる(本条3項)。
 (3) 裁判所は、共有物分割の裁判において、当事者に対し、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる(本条4項)。

4.関連判例
 (1) 現物分割に加えて価格賠償による過不足調整をする方法
  現物分割をするに当たり、持分の価格に応じた分割をする場合において、共有者の取得する現物の価格に過不足を来すときは、持分の価格以上の現物を取得する共有者に超過分の対価を支払わせ、過不足の調整をすることも許される(最判昭62.4.22)。
 (2) 全面的価格賠償の方法
  共有物の性質及び形状、共有関係の発生原因、共有者の数及び持分の割合、共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値、分割方法についての共有者の希望及びその合理性の有無等の事情を総合的に考慮し、当該共有物を共有者のうち特定の者に取得させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するときは、裁判分割の方法として、全面的価格賠償の方法によることが許容される(最判平8.10.31)。
 (3) 共有物又は共有者が多数の場合
  ① 分割の対象となる共有物が多数の不動産である場合、これらの不動産が外形上一団と見られるときだけでなく、数か所に分かれて存在するときであっても、当該不動産を一括して分割の対象とし、分割後のそれぞれの部分を各共有者の単独所有とすることも許される(最判昭62.4.22)。
  ② 多数の共有者のうちの一人が分割請求をした場合、直ちにその全部の共有関係が解消されるものと解すべきではなく、当該請求者に対してのみ持分の限度で現物分割し、その余は他の者の共有として残すことも許される(最判昭62.4.22)。

【問題】

A、B及びCが甲土地を共有している場合において、A、B及びCの間で甲土地についての共有物分割の協議が調わず、Aが裁判所に甲土地の分割を請求したときは、裁判所は、Aが甲土地の全部を取得し、B及びCがそれぞれの持分の価格の賠償を受ける方法による分割を命ずることはできない

【平27-10-エ改:×】

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