第191条【占有者による損害賠償】
占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。
目次
【超訳】
占有者の帰責事由(故意・過失)によって占有物を滅失・損傷した場合は、悪意の占有者及び他主占有者は、その損害の全部を賠償する義務を負う。しかし、自己の所有物と誤信している占有者に全損害を賠償させるのは酷なので、所有の意思のある善意の占有者は、その行為により現に利益を受ける限度でのみ賠償すれば足りる。
【解釈・判例】
1.本条の「占有者」とは、契約の無効・取消しの場合の賃借人・盗人など、回復者との関係で占有についての法律関係を有さない者をいう。占有者と回復者との間に、賃貸借のような何らかの法律関係のある場合には、その法律によって規律される。
2.本条の「滅失し、又は損傷した」とは、単に物理的な滅失・損傷に限らず、紛失や第三者に売却されて返還が不能になった場合も含む(大判大11.9.19)。