第188条【占有物について行使する権利の適法の推定】
占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。
目次
【超訳】
物に対する支配を保護しようとする占有制度の趣旨と、占有して本権を行使する者は多くの場合適法な本権を有するという蓋然性に鑑み、占有者は占有すべき正当な本権を有すると推定される。
【解釈・判例】
1.推定の範囲
(1) 本条により推定される「権利」は所有権などの物権に限らず、占有を正当化するすべての権利を含む(賃借権等)。
(2) 本条の推定は、権利の存在や帰属について適用されるものであって、所有権の取得や賃借権の設定などの権利の取得・変動については及ばない (最判昭35.3.1)。
(3) 自己が占有を取得した前主との関係では、推定を援用できない(最判昭38.10.15)。
2.推定の効果
(1) 占有者は本条の推定により、登記申請をしたり、自己の占有が正当な権原に基づくことの証明に代えることはできない(大判明39.12.24)。
(2) 本条の推定は、占有者の不利益にも適用される。
(3) 本条の推定の効果は占有者だけではなく、第三者も援用することができる。