第816条の8【債権者の異議】
① 株式交付に際して株式交付子会社の株式及び新株予約権等の譲渡人に対して交付する金銭等(株式交付親会社の株式を除く。)が株式交付親会社の株式に準ずるものとして法務省令で定めるもののみである場合以外の場合には、株式交付親会社の債権者は、株式交付親会社に対し、株式交付について異議を述べることができる。
② 前項の規定により株式交付親会社の債権者が異議を述べることができる場合には、株式交付親会社は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第4号の期間は、1か月を下ることができない。
一 株式交付をする旨
二 株式交付子会社の商号及び住所
三 株式交付親会社及び株式交付子会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
四 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
③ 前項の規定にかかわらず、株式交付親会社が同項の規定による公告を、官報のほか、第939条第1項の規定による定款の定めに従い、同項第2号又は第3号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告は、することを要しない。
④ 債権者が第2項第4号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該株式交付について承認をしたものとみなす。
⑤ 債権者が第2項第4号の期間内に異議を述べたときは、株式交付親会社は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該株式交付をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。
解釈
1.株式交換と同様に、株式交付についても、原則として債権者保護手続を経る必要はない。株式交付の対価として株式交付親会社の株式以外の財産を交付する場合(株式交付親会社の財産が流出する場合)に、株式交付親会社の債権者に対する債権者保護手続が必要となる。
2.一方、株式交付については、株式交付親会社が株式交付子会社の新株予約権付社債に係る債務を承継することはないため(会774条の3第1項7号、774条の11第1項参照)、株式交換と異なり、当該場合についての債権者保護手続の規定(会799条1項3号、768条1項4号ハ参照)は存在しない。